日産自動車株式会社 リアルとオンラインを融合した 最高の顧客体験の提供へ

  

〜CDPを導入してデータ活用の自走化を目指す日産自動車〜

日産自動車株式会社 事例

「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」をコーポレートパーパスに掲げ、先駆的な自動車やサービスを提供する日産自動車株式会社。同社はリアルとオンラインを融合した最高の顧客体験の提供を目指してCDP(Customer Data Platform 顧客データ基盤)を導入しました。ビジネス部門としても主体的にデータ品質を維持して「自走化」できるよう、インキュデータのコンサルティング支援のもと最適なデータ活用環境を実現。CDPに集約された顧客データは現在、さまざまな販売・マーケティング施策に活用されています。

    プロジェクトの目的

    • リアルとオンラインを融合した最高の顧客体験の提供に向けたデータの統合と活用

    実施効果

    • データ品質の管理・向上とデータ活用環境の内製化
    • リアルとオンラインの情報を統合し、顧客行動を可視化
    • データに基づく効率的なマーケティング施策の実施

    最高の顧客体験の提供を目指し
    部門横断で活用できる統合顧客基盤を導入

    日産自動車株式会社 北原寛樹 氏
    日産自動車株式会社 Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部 主任
    北原 寛樹 氏

    2023年12月で創立90年を迎えた日産自動車。長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」のもと、新型車の投入、電動化の推進、開発・生産方式の革新、新技術の採用や戦略的パートナーシップなどに取り組んでいます。

    同社のJapan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部(以下、DX部)は、リアル(販売店)とオンラインが融合したお客さまごとに最高の顧客体験の提供を、マーケティングDXによって支援しています。DX部 主任の北原寛樹氏は「近年はオンラインと販売店を行き来しながら購入を検討されるお客さまが増えています。そこで購買行動の変化を意識しながら、データに基づくサービスを提供していくことが私たちのミッションです」と語ります。

    DX部は2020 年、顧客の属性データや行動データなどを統合管理するTreasure Data CDPの導入を決定。導入の背景について、DX部の南夕貴氏は次のように振り返ります。

    「以前は顧客情報、成約情報、車両情報、マスター情報、Webのアクセスログ、SNS、メールなどさまざまなデータが、複数のデータベースに散在していました。そのため、マーケティング施策を実施する際に各種データの抽出に手間と時間を要することになり、お客さまを理解した一貫性のある施策の実施や、どの施策がどれくらい成約に結びついたのかなどの効果検証を緻密に実施することが難しい状況でした。そこでCDPを活用し、データ抽出の工数削減と高速PDCAサイクルの実現を目指したいと考えました」

    しかし導入を決定した時点では、データ基盤やCDPに関する知識が乏しく、運用の体制づくりやデータ品質の維持・管理に不安がありました。そこで導入と運用をサポートするコンサルティングパートナーが不可欠と考え、インキュデータに支援を要請しました。

    「決め手はCDPの豊富な構築実績に加えて、導入と運用、両方のフェーズに対応いただけることでした。私たちチームが目指す姿に寄り添いながら、既存のエンジニアリング体制を考慮した体制作りと、将来的に私たちチームが目指す『自走化』に向けて、伴走支援という形で協力いただきました」(南氏)

    CDPの基礎知識を習得しながら適切な運用フローを設計

    日産自動車におけるCDPの導入時、インキュデータはコンサルタント(プロジェクトマネージャー / PM)、エンジニア、マーケターの複数体制のもと、主にTreasure Data CDPに関する基礎知識のレクチャーと運用フロー設計を支援しました。

    基礎知識のレクチャーでは、Treasure Data CDPの機能説明、技術的な質問に対する回答、施策設計時のポイントや他の顧客事例の紹介などを実施。PMを担当したインキュデータの末留辰也は次のように語ります。

    「ビジネス部門として、エンジニアリングチームに対して、技術的に考慮すべきこと、例えばデータの取り込みや加工などに関して、コードの書き方まで含めて細かくお話しました。質問対応については、チームの方々から気軽にお問い合わせいただける環境を作りました」

    日産自動車株式会社  南 夕貴 氏
    日産自動車株式会社 Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部
    南 夕貴 氏

    運用フローの設計では、運用フローの作成、ファシリテーターとしての議論のリード、ベンダーコントロールの後方支援などを行っています。

    「CDPを使ったマーケティング施策について現場からリクエストがあった際、ビジネス部門内で誰が実装の可否を判断するかなど、意思決定フローの作成をお手伝いしました。また、エンジアリングを担当している外部パートナーにCDPの構築案件を委託する際、ビジネス部門が依頼する作業内容やタイミング、どのようなコンセンサスを取りながらコントロールするかといったフローも考えました」(末留)

    事務局の体制構築をリードした南氏は、これらの支援を次のように評価しています。

    「CDPに関する知見がない中でタイムリーに相談できたため、日々発生する課題や疑問を短いスパンで解決しながら、前に進むことができました。構築を主導したシステム部門とのコミュニケーションにおいても、ビジネス側の目的・背景を理解したアドバイスのおかげで、データ選定の優先度や取り込み頻度など、細かい仕様のジャッジがスムーズにできました」

    図1:Treasure Data CDPでのセグメントを活用した施策
    図1:Treasure Data CDPでのセグメントを活用した施策

    データカタログの作成とともにデータ品質の維持・向上を継続

    運用フェーズでは、データ品質の管理・向上と内製化をコンサルタントの末留が1名で支援しました。データ品質の管理・向上に向けては、メタデータを管理するドキュメントの例示と調査、簡易的なデータカタログの作成、データ品質課題の取りまとめとアプローチ検討支援などを行いました。

    「データ基盤を正しく運用するには、中にどのようなデータが入っているか、利用者がわかるようにデータカタログを作成する必要があります。まず、あるべきドキュメントの姿を例示し、日産自動車様のCDP 内のデータを示すドキュメント類の所在や作成状況を調査し、まとめました。データカタログはデータ品質の担保にも、内製化に向けても重要になるため、現在も改善を続けています。また、ビジネス部門が分析や施策にCDPを活用する際、『想定していたデータ品質ではなかった』といった事象が発生した際、どうすればCDPを管理するシステム部門との会話がスムーズに進むのか、どう対応すると解決できるのかなど、具体的なアクションプランに落とし込んでいきました」(末留)

    図2:プロジェクト推進時に発生した課題とインキュデータの支援内容
    図2:プロジェクト推進時に発生した課題とインキュデータの支援内容

    内製化支援では、ビジネス部門内で対応できる領域を拡大するため、週次のPMO定例会によるフィードバックやナレッジのシェア、各種資料テンプレートの作成と提供を行っています。

    運用支援に対して、DX部の岩下和史氏は次のように評価しています。

    「データカタログは、CDPを活用するマーケターとシステムエンジニアで求める要素が異なる中、それぞれの目的、具体的なユースケースを理解しながら利用しやすい形で作成していただきました。運用フェーズでは、データ連携が正しく行われていない、欠損や差分が発生する、仕様の問題で使いたいデータが使えないといったことが起こります。こうした際も当社の環境を理解したうえで解決策や判断材料を提示いただけるので、方向性を見誤ることなく前に進んでいけます」

    CDPに関するスキルが向上し円滑な
    チームコミュニケーションが実現

    日産自動車株式会社 岩下和史 氏
    日産自動車株式会社 Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部
    岩下 和史 氏

    CDPは、2023 年2月より本格運用を開始。運用開始から2年弱が経った現在、ビジネス部門のスキルは飛躍的に向上しました。南氏と岩下氏も、確かな手応えを感じています。

    「日産自動車の目指す姿・背景を理解したインキュデータのサポートや、最新事例の提供に助けられました。難易度の高いプロジェクトに対応できたことで、自分自身の成長も実感しています」(南氏)

    「多様なメンバー構成の中、立場や性格などを踏まえた柔軟なコミュニケーションとサポートで、抜け落ちを確実に防ぐプロジェクト管理能力の高さに助けられました」(岩下氏)

    組織としてコミュニケーションをスムーズに進めるうえでもインキュデータの支援が貢献していると北原氏は評価します。

    「システム部門、外部ベンダーなど、さまざまな関係者が連携するプロジェクトにおいて、コミュニケーションの壁があると課題解決までに時間を要してしまいます。インキュデータのコンサルタントには、当社の実情を理解したうえで柔軟に対応していただいています」

    メール配信や販売店向けの情報提供、顧客動向の可視化などの施策を強化

    現在、日産自動車ではデータを活用したマーケティング施策を積極的に推進しています。例えば、顧客へのメール配信においては、一律のメッセージを一斉配信する形から、顧客の関心にあわせてターゲットを抽出し、メッセージの内容を変えて開封率・クリック率を高める施策へとシフトしています。

    「これまでメール1通あたり約2.5時間かかっていたターゲットリストの抽出時間が約1時間に短縮され、施策の計画から実行、振り返りまでのスピードが加速されました。これによりメールごとに配信条件を調整するハードルが下がり、お客さまの興味関心を踏まえたメール配信を行うことが可能になり、マーケティング活動全体が進化しました」(南氏)

    もう1つは「ヒントカード」と呼ぶ販売店向けの情報提供です。顧客の基本情報に加え、Webの閲覧情報、Web見積りの内容など、オンライン上の行動や、推奨のアクションもあわせて販売店に提供することで、店頭での提案が効率化されています。

    インキュデータ株式会社 末留 辰也
    インキュデータ株式会社 ソリューション本部 データプラットフォーム部
    プリンシパルコンサルタント 末留 辰也

    「CDPに蓄積した大量のデータを機械学習で分析しながら、お客さまの購入意向をスコアリングして提供することで、販売店での優先順位付けや戦略検討などにも使ってもらっています」(南氏)

    その他、従来はExcelで行っていた集計業務をBIツールとCDPを連携させてダッシュボードを作成し、提供する取り組みを進めています。さらに、CDPに蓄積されている情報から顧客の行動を可視化する「CXダッシュボード」を作成し、社内の分析・マーケティング活動に活用しています。

    「オンラインとオフラインの情報を統合できるCDPのメリットを活かして、お客さまの一連の行動を可視化することで、これまでできなかった提案アプローチを実行し、マーケティングPDCAの高速化に活用しています」(岩下氏)

    AIなど最新テクノロジーを活用し質の高い顧客体験を提供

    日産自動車では、今後もCDPに蓄積されていく膨大なデータを活用し、AIなどの最新テクノロジーと組み合わせながら質の高い顧客体験を提供していく計画です。具体的には、顧客のニーズを先取りして生産計画に反映することや、車の故障情報、走行距離、部品の劣化状況をタイムリーに検知して、部品の適切な交換時期を通知することなどが検討されています。

    これらの施策を実施するためには、継続的にCDP 環境のデータ品質を維持していくことが必要で、インキュデータにはさらなる期待を寄せています。

    「本格的な自走化に向けて、実現したい施策と技術的なフィジビリティをイメージできる状態になることが理想です。インキュデータには引き続き、私たちが目指すゴールに向けてさまざまな提案を期待しています」(北原氏)

    •  インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです