サンスター株式会社 データの集約・分析から顧客理解を深め、新たな顧客体験の提供へ
〜サンスターが取り組む顧客バリューチェーン構築〜
オーラルケア製品で広くその名を知られ、接着剤や金属部品などの工業用品でも大きなシェアを獲得しているサンスターグループ。同社の日本国内の消費財事業をつかさどるサンスター株式会社はオーラルケア製品領域のロイヤルカスタマーを広く獲得するため、自社サイトやオンラインコミュニティのデータを統合的に収集し、分析していくことを目指してCDP(Customer Data Platform 顧客データ基盤)を導入。顧客のライフスタイルや購買傾向を把握して、マーケティングや新たなサービス開発などに活用するという同社の戦略について詳しくお聞きしました。
Contents
1.リピート購入の多いロイヤルカスタマーの拡大へ
2.統合顧客データ基盤構築に向けてインキュデータの提案を採用
3.社内の関係者が一堂に会してデータ利活用の目的を定義
4.CDPのデータとユーザインタビューによってマーケティングを最適化
5.顧客理解を通して既存事業へ貢献し今後のビジネス構想にもつなげていく
リピート購入の多いロイヤルカスタマーの拡大へ

サンスター株式会社
マーケティング統括部 広告コミュニケーション部 デジタル戦略グループ長
浜辺 康平 氏
グループの本社と消費財事業の本部をスイスに、生産財事業の本部をシンガポールに置き、世界22ヵ所に拠点を持ち、約100ヵ国で事業を展開するサンスター。オーラルケアブランド「G・U・M(ガム)」や「Ora2(オーラツー)」などで知られる消費財事業が売上の6割を占める一方、あとの4割は接着剤やバイク・自動車用部品などの生産財事業で構成されています。特に日本では、バイクのスプロケットにおいてシェア1位のポジションを確立。サンスターグループ全体で見ると日本国内の売上は45%で、海外での売上が過半数を占めています。
グローバルに事業を展開しながら人々の健康な生活習慣や環境の構築に貢献するサンスターでは、これらの活動をさらに高度化するためにデジタル技術を活用しています。サンスター株式会社 マーケティング統括部 広告コミュニケーション部 デジタル戦略グループ長の浜辺 康平氏は、日本でのオーラルケア事業に関して、データを活用したマーケティングを実践していると語ります。「顧客理解の鍵となるお客さまとして着目しているのは、いわゆるロイヤルカスタマーと呼ばれる方々です」
オーラルケア製品は、日用品の中でも製品数が非常に多い分野です。例えば、ハブラシというカテゴリーだけでも、大きな店舗になると250種以上が陳列されていることも珍しくありません。そんな中から、サンスターのブランドを購入し続けてくださるお客さまも存在しており、そのような方を「ロイヤルカスタマー」=売上に大きな影響を与える存在として重視しています。そこで同社はロイヤルカスタマーの特徴を明らかにして、マーケティングなどの戦略に生かす方針を掲げました。
統合顧客データ基盤構築に向けてインキュデータの提案を採用
サンスターのような消費財メーカは、主に小売店を通じて製品を提供するため、製品購入者と直接接する機会が少ないことが課題となっていました。そこで同社が取り組んでいるのが、オンライン・デジタル環境を通じて顧客と直接つながるタッチポイントを創出し、得られたデータから顧客をより深く理解していくことです。
同社が運営しているデジタルでの顧客接点の一つが、「Club Sunstar」というオーラルケア中心のコミュニティサイトです。同サイトには生活者向けと医療従事者向けのセクションがあり、主にオーラルケアに関する情報や記事を発信しています。また、「サンスターオンラインショップ」では、健康食品やオーラルケア製品の販売を行っています。さらにスマートフォンアプリの「おくち元気チェック」では、お口の元気度を数値化しセルフチェックすることができるなど、歯や口の健康をサポートする情報を提供しています。以前は、これらのプラットフォームはそれぞれ独立して運用され、担当部門がデータを独自に保有してきたため、顧客の一面は見えていても、統合的なデータ活用に至っていない状況でした。
そこで1ヵ所にデータを統合し、全社を横断するデータ活用を行うため、Treasure Data CDPを導入することにしました。「『Club Sunstar』は、多くのロイヤルカスタマーの方々が見てくださっています。さらに、自社のコミュニティのお客さまがどんなコンテンツをご覧になっているか、当社のEC サイトではどんな製品に興味を持ち、購入されるかなど、購買情報だけではわからない洞察を得られると考えました」(浜辺氏)
サンスターはCDP導入プロジェクト開始にあたって、2021年の夏ごろから複数の企業に声をかけて検討を重ねた結果、インキュデータをパートナーに選定しました。その理由について浜辺氏は次のように語ります。
「私たちは、単なるCDP構築支援というドライな関係よりも、取り組みが始まってからも一緒にさまざまな課題に伴走してくれるパートナーを求めていました。インキュデータを評価したのは、データを分析するだけでなく、新しいビジネスモデルや戦略設計もできるという点です。また、ソフトバンク関連企業とあって、Yahoo!やLINEなどのデータを適切な形で利用できる可能性にも期待しました」
社内の関係者が一堂に会してデータ利活用の目的を定義
サンスターの取り組みに対して、インキュデータが行った支援には大きく二つの側面があります。1つはTreasure Data CDP設計の要件定義(例:どのようなデータを取得し、顧客ごとの情報をどのように集約・名寄せするかなど)の支援と構築です。そして2つ目は下記のような分析と活用支援です。
- CDP活用領域のディスカッション
- 分析設計(特定製品の売上・不調要因を調査するためのオンラインアンケートやインタビューの提案)
- Club Sunstarサイト分析
- ロイヤルカスタマーの特徴をつかむための顧客アンケート(N1アンケート)の設計
このような支援のもと、2022年の7月にCDP導入プロジェクトはスタートしました。CDP活用領域のディスカッションでは、データ集約・分析の結果を最終的にどのように活用するかを検討。データ統合ありきで進めるのではなく、目的を明らかにして、どのようなデータを集め、統合していくかを定義したのです。そこで研究者、製品開発、営業などさまざまな部門の担当者が集まり、どのようにデータ活用ができるかについて話し合い、大きく三つの指針を作りました。
1つ目は製品開発で、製品開発前や販売後の改良などに顧客の声を役立てようという試みです。2つ目は、ブランドコミュニケーションに焦点を当て、デジタル接点におけるパーソナライズ型コミュニケーションモデルの構築や、リアル店舗での売場づくりにデータを活用する戦略です。そして3つ目は、自社ECサイト(サンスターオンラインショップ)の拡大です。オーラルケア製品に加えて、オリジナルの健康食品ブランド「健康道場」の販売促進を視野に入れ、小売店とは異なるアプローチを模索することにしました。
データ活用プロジェクトは、データの収集、統合、分析といったプロセスを経て、具体的な活用に結び付けていきました。先に挙げたコミュニティサイト、オンラインショップ、アプリなどからデータを収集し、そこから基本属性やWeb行動履歴、購買情報などを取得。データ統合の段階では、オーラルケア製品の購買に関する外部データも組み合わせることでデータ基盤をより強固なものにしています。データ分析に際しては、インキュデータのコンサルタントやエンジニアを含む分析チームが、事実を基に仮説を立て、結論を導き出します。これにより、顧客への理解を深め、顧客像の可視化を進めています。
CDPのデータとユーザインタビューによって
マーケティングを最適化
CDP導入後、これまで部門ごとに管理していたデータを統合的に把握することで、ユーザの行動を時系列で分析可能となりました。コミュニティサイトとオンラインショップの両方にユーザ登録している顧客は、購入金額が高く購入期間も長い傾向にあることもわかりました。その後、さらにロイヤルカスタマーの特徴を得るため、特定の顧客の行動分析やインタビューを実施。オンラインショップでの購買に至った要因や人物像の把握に努め、再現性のある施策を模索していきました。
「一例を挙げると、健康に関する不安や疑問を感じているある顧客は、オンラインショップで健康食品を購買する直前に、コミュニティサイトで特定のコンテンツを閲覧していました。コミュニティの長期利用顧客ほど、このような傾向が見られるといいます。このように、以前は見ていなかった歯周病関連コンテンツの閲覧が増えた場合、顧客自身や家族の誰かが歯周病のトラブルに見舞われているのではないかと推測できます。そこから、オンラインショップで展開する最適な製品をポップアップツールやメルマガなどによって提案するといった活動につなげられます。
データ活用の成果は少しずつ現れていると浜辺氏は語ります。「メールマガジンのプロモーション結果では、従来のプロモーションと比較して良い結果を得られました。また、Amazonで自社ブランド製品を販売する際の広告メッセージのテストも行い、従来広告よりも良い結果を得られています。お客さまへのインタビュー結果がブランド戦略に生かせるなど、社内でもポジティブな意見を得られています」
デジタル戦略グループはブランドチームや営業部門と引き続き協力し、データの活用について議論を重ねています。特にデータ活用アイデアの創出のため、仮説検証を積極的に進めています。その活動に伴走するインキュデータについて、浜辺氏は「なかなか明確な答えが出にくい状況の中で、分析チームの方々にはどのような視点でデータを見ていくべきか提案いただいています。毎週のミーティングを通じて試行錯誤しながら進めていますが、結果に対する満足度は高いです」と評価しています。
顧客理解を通して既存事業へ貢献し
今後のビジネス構想にもつなげていく
サンスターは今後、3~5年後を見据えて、現在のデータ活用と新しいデータの取得を組み合わせ、顧客により良い体験を提供するための新たなモデル構築に注力していく方針です。また、データから得られた洞察を顧客に還元できるよう、新たなサービス開発にも取り組んでいます。
「お客さまへの定性インタビューを中心としたアクションをもとに、仮説の構築を引き続き行います。そうした仮説を証明するために必要なデータの定義も進めています。さまざまな接点から得られるデータを活用し、今後のビジネス戦略の発展に資するよう努めていきます」(浜辺氏)
新たなサービスの例が、トータルなオーラルケアの提供です。歯周病に関心を持つ方々が歯科医院に通院し、歯科検診や毎日の歯みがきのアドバイスを受けるといったケースを想定し、セルフケアとプロケアのアドバイスを融合してより良い新たな体験につなげていく構想です。セルフケアのための情報提供、顧客に最適なタイミングで健診の案内、歯科医院で健診を受けた人に対する製品のレコメンドといった、幅広い支援を視野に入れています。
浜辺氏は今後の展望について、「インキュデータには当社の意向や構想を丁寧に整理しながら、具体的な提案をいただいています。今後もこのような協力関係を深め、新しいサービスや体験の設計について、引き続き取り組んでいきたいです」と語っています。
- インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです