株式会社TOAI ジャンカラ・UTAOで体現する 「顧客第一主義」のデータドリブン経営
〜「カラオケ体験価値10倍」を目指しデータ活用を加速〜
西日本を中心にカラオケチェーン「ジャンカラ」、オンラインではカラオケアプリ「UTAO」も手がける株式会社TOAI。
同社は「カラオケ体験価値を10倍にする」という理念のもと、2027年に向けて「意思決定の高速化」「LTV最大化」「新たな価値の創出」を目指しています。インキュデータのコンサルティング支援のもと、ジャンカラ公式アプリのUI/UX改善から始まった取り組みは、データ基盤構築、分析環境の整備、マーケティングオートメーション(以降、MA)導入まで拡大し、予約率向上や組織全体のデータ活用風土改革という成果を生み出しています。さらにはデジタルスキル向上の伴走支援により、これらの施策を自走していく体制にまで進化を遂げています。
プロジェクトの目的
- 「顧客第一」を実現する、顧客体験価値の最大化
- データドリブン経営体制構築に向けた顧客データ統合・活用
- 社内デジタルスキル高度化と施策精度・実行スピード向上
実施効果
- 予約のコンバージョン率と収益率の向上
- データに基づく解像度の高い施策の実施
- さらなるデータ活用に向けた基盤の整備
- ツール活用などデータ利活用の内製化の促進
カラオケとオンライン事業の融合でさらなる体験価値向上へ

株式会社TOAI デジタル戦略部 シニアマネージャー
渡邉 啓介氏
TOAIは1986年の創業からカラオケ事業を展開し、現在は190店舗以上で安価で身近なカラオケ体験を提供しています。しかし近年、業界全体で同質化が進んでいるという問題意識について、デジタル戦略部 シニアマネージャーの渡邉啓介氏は語ります。
「どこの会社も企業努力をしているため、どこに行っても安くカラオケが利用でき、同じ機種があるという時代になってきています。そんな中、TOAIは自社ブランド「ジャンカラ」を利用いただくことで『カラオケ体験を10倍にする』ことを掲げ、よりハイレベルな顧客体験を追求しています」
同社は2015年の社長交代を機にデジタル施策に本腰を入れ、「ジャンカラ」のスマートフォンアプリを開発。機能を徐々に拡充して、現在はカラオケの予約から入室、フード注文、決済まで、人と接触せずに完結できる仕組みを構築し、他社にはない独自の価値を提供しています。
「コロナ後から過去最高の売り上げと利益を維持し続けている一番の要因は、このアプリによるものです。予約の手間が大きく削減されたことで、現在は6割が事前予約でお越しいただけるようになっています」とデジタル戦略部 デジタル戦略課 開発・運用チーム リーダーの清水浩介氏は語ります。
さらに2023年からカラオケ配信アプリ「UTAO」も提供し、リアル店舗とオンラインコミュニティの連携といった新たな領域に挑戦しています。このように複数チャネルを横断した体験設計を行う際に欠かせないのが、顧客データの活用です。「最終的には、データを活用した新たなサービスの開発や既存事業以外の収益獲得、さらには他社へのデータ提供による業界全体の価値向上まで構想しています」(渡邉氏)
しかし、同社のデータ活用も初めからスムーズだったわけではありませんでした。取得したデータを施策に活用するイメージが曖昧で、データのサイロ化が発生してしまうほか、正しくデータを集めて分析し、価値に変えていく活動自体が機能していなかったといいます。POSシステム、会員データ、ジャンカラアプリ、UTAOアプリなど、各システムが単体で機能している状態で、会員コードで紐付けられていても、実際の顧客行動を正しく捉えられていなかったためです。
一方、同社はカラオケ特有のユニークなデータに着目。歌唱データなどを活用すれば、「この曲をお楽しみのお客さまはよくビールを頼むので注文前におすすめしよう」といったマーケティング的な使い方や、新しい価値を提供するビジネスの可能性が広がると考えました。そして、2027年に向けて意思決定の高速化、LTV最大化、新たな価値創出を目指し、データドリブン経営の基盤構築に着手しました。(図1)
事業を深く理解するビジネスパートナーとして
インキュデータを選定
TOAIはデータ基盤構築を速やかに実現するため、外部パートナーの選定に着手しました。最終的にインキュデータをパートナーに選んだ決め手は、技術力だけでない「事業理解の深さ」にあったと渡邉氏は語ります。
「当社の事業を理解して、ビジネスの視点からデータ活用の仕組みを考えるという点を高く評価しました。当時はデジタル施策に関してTOAI社内で正しい答えを持ち合わせているわけではなかったため、一緒に議論しながらアウトプットを考えていけるということが、インキュデータの最大の強みだと考えています」
インキュデータとの協業は、ジャンカラアプリのUI/UX改善から始まりました。当時、店長経験を経てアプリを担当していた清水氏は、専門的なアプローチに課題を抱えていたと振り返ります。「現場のことはよく知っていて店舗のオペレーションも理解していたのですが、デザインとしてどうなのか、こういうUXだと離脱が増えてしまうといった、分析結果を踏まえたUIを考えることはできていませんでした」

株式会社TOAI デジタル戦略部 デジタル戦略課 開発・運用チーム リーダー
清水 浩介氏
そこでインキュデータは、アプリログ解析とヒューリスティック評価を実施し、データに基づいてユーザの利用実態を把握。分析により、よく閲覧されている画面や、満室で予約できずに離脱するユーザが一定数存在することなどが明らかになりました。定量・定性の両面からの分析をもとに具体的なUIのアップデートを重ね、データに基づいた改善サイクルを構築していきました。(図2)
スキルトランスファーを経て解像度の高い施策を実施

株式会社TOAI デジタル戦略部 デジタル戦略課 エキスパート
中田 優作氏
データ基盤構築については、「カラオケ業界全体の新しい価値を生むようなものに変えて、業界が盛り上がるようなことをやれたら」と渡邉氏が語るように、TOAIが持つユニークなカラオケデータを活用したデータ販売や他社との協業、さらにはITデジタルの面でリードしている部分を他社にも活用してもらう構想が背景にありました。
このようなTOAIの構想を踏まえ、データ基盤サービスに選定したのが「Snowflake」です。「インキュデータが強みを持つCDPツールもあるなかで、当社の構想に合った最適解を議論した結果、Snowflakeを推奨していただきました。このような姿勢も、信頼できるパートナーである理由の一つです」(渡邉氏)
さらにMAツールの「Braze」も導入したことで、顧客ごとのシナリオ設計〜実装のスピードは格段に向上。さらには位置情報を活用したパーソナライズコミュニケーションまで構想しています。マスマーケティングからの脱却を図り、価値あるコンテンツを適切な顧客に届けることを目指しています。今後は、アドホック分析を実現する環境構築や、可視化できていないデータの可視化を目的としたBIツール導入も計画中で、より高度なデータ活用体制を目指しています。(図3)
各種ツールの導入だけでなく、TOAIが重視したのは社内へのデジタル・データ活用スキルの定着です。MAなどは「ジャンカラ」アプリのチームメンバーも経験がなかったため、インキュデータにスキルトランスファーを依頼しました。
インキュデータは、初期の施策設計2本を主導したうえで、それ以降はTOAIメンバーが主体となって取り組み、分からないところをフォローする段階的なサポートを実施しました。清水氏は次のように評価します。「気軽に問い合わせられる環境を整えていただいたのは非常に大きいです。マーケティングにおけるターゲットや施策の意図といった基本的な発想があまりなかった頃は『このキャンペーンを皆さまに届ける』だったものから、『こういう属性のお客さまにはこういう内容を伝える』のように、解像度の高い施策を展開できるようになりました。
一方で、インキュデータ コーポレートエグゼクティブ兼マネージングディレクターの鈴木一志は、パートナーの尽力だけではこの成功には辿り着かなかったと話します。「TOAIさま社内で『施策を自分ごと化する』という土台作りを行ってくださったことが大きいです。チームメンバーの皆さまそれぞれに豊富な現場の経験があるため、そこにインキュデータの専門性をどう活かすかを考えていただき、それがうまくマッチしました」
顧客を最も理解しているのはあくまで事業会社であり、社内の方々が主体的にアイデアを出せる環境づくり、風土づくりを支援するのがパートナーの醍醐味であると言えるでしょう。その一例として、インキュデータはBrazeでのシナリオを策定するにあたっての対象者ボリュームゾーンの仮説設計と優先度の提案を実施。TOAIがMA利用を自走できる形への地盤固めを行いました。(図4)
データ活用率を高め施策の精度を向上
プロジェクト開始後すぐに結果が表れ、「ジャンカラ」アプリでは予約のコンバージョン率が1ポイント向上し、年間で5万組の予約増加を実現。ユーザの設定した条件で予約が取れなかったときに別の選択肢を提示する改善や、飲み放題メニューの視認性向上などにより、収益率も高まっています。 また、アプリのデータ分析を進めると店舗の「お気に入り」機能が実は多く使われていることが判明したため、トップ画面への配置変更なども実施しました。「利用料金も正しく表示していれば離脱にはつながらないなど、新たな発見がありました」(清水氏)
また、オンラインカラオケアプリ「UTAO」は、MIXI社から事業継承した「KARASTA」と統合し、2025年2月にリニューアルしました。同アプリを担当するデジタル戦略部 デジタル戦略課 エキスパートの中田優作氏は、従来のデータが分析に適した状態ではなかったと語ります。「新しい事業で、社内全体でプロダクト成長の方向性から模索する必要があったことから、施策を打つときには共通言語として数字で語る必要があると考えました」

インキュデータ株式会社 コーポレートエグゼクティブ兼マネージングディレクター
鈴木 一志
そこでインキュデータにデータ整理と分析環境の見直し、KPIの再構築を依頼。これにより、いままで取れていなかった広告経由のユーザの収益貢献度などが把握できるようになりました。
「今後は『ジャンカラ』と『UTAO』の相互送客を本格化させる構想があります。アプリと店舗のカラオケは競合ではなく相互に促進し合う関係にあると位置づけており、店舗で歌った後に練習のフィードバックが届いたり、家で歌った楽曲について店舗での披露を促すクーポンが送られたりといった連携を想定しています」(中田氏)(図5)
さらに、中核となる2つのアプリの体験価値向上に加え、組織面でも大きな変化が生まれていると渡邉氏は明かします。「マーケティングチームとデジタル部門の連携がより密になっています。各部署の営業企画部でCRMの施策を打っていますが、チームメンバーが非常に積極的です。やれることが目に見えて増え、アイデアも活発化し、細かい議論もできるようになってきています。施策実行までのスピードも従来よりさらに向上しました」
顧客第一主義とスピード感をもって業界の変革に取り組む

インキュデータ株式会社 マネージングディレクター
及木 翔平
TOAIの経営メンバーは毎日課題をシェアしており、数億円の案件も朝の時点で決定すれば午後から実行できるほどのスピード感があります。このような迅速な意思決定スタイルにも、インキュデータは柔軟な対応力で貢献しました。インキュデータ マネージングディレクターの及木翔平は「TOAIさまにインキュデータのメンバーをチームの一員として扱っていただきながら、我々のスキルをうまく活用していただいたことで、非常にバランス良くプロジェクトを進めることができました」と振り返ります。
そして渡邉氏は、データ・デジタル変革への展望を次のように語っています。「一番重視しているのは、やはり体験価値の向上です。店舗とオンラインの取り組みから新しい価値を生むものを創造し、業界を盛り上げたいです。日本においてカラオケはもはや一つの文化ですが、世界ではまだまだ浸透していない国もあり、グローバルも含めカラオケの可能性はまだまだあります。今後もより多くのデータを集めて活用し、お客さまに価値を提供していきたいと思っています」
一貫した「顧客第一主義」を体現するTOAIと、その歩みをデジタルの側面から支援するインキュデータとの協業には、ますます期待が高まっています。
- インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです