住友重機械工業株式会社 DX推進に向けた組織づくりの一環でアイデアソンを実施
〜社員同士の「距離」と「マインド」の変革を実現〜
総合機械メーカとしてメカトロニクス、インダストリアル マシナリー、ロジスティックス&コンストラクション、エネルギー&ライフラインの4セグメントで事業を展開する住友重機械工業株式会社(以下、SHI)。同社のICT本部はDX推進に向けた組織づくりの第一歩として、楽しくアイデアを共創しながら社内の人脈づくりにつなげる研修プログラムを企画。インキュデータの支援を受けて実施したアイデアソンの詳細とその成果について、事務局メンバーの方々にお聞きしました。
プロジェクトの目的
- DX推進に向け「多様な人材が共創し、絶えずイノベーションを起こしていく組織」に向けたプログラムの実施
実施効果
- 参加者の93%が新しい人脈を2人以上形成
- 課題の共有による一体感の醸成と解決への前進
- 社外支援を活用した、組織の活性化や別角度からの再検討
多様な人材が共創し、絶えずイノベーションを起こしていく組織へ

住友重機械工業株式会社 ICT本部 DX推進部 ものづくりプロセスグループ 主任技師
山口 久美子 氏
1888年の創業以来、社会と産業の発展とともに歩んできたSHI。一流の商品とサービスを世界に提供し続けるため、一般産業機械から最先端の精密機械、建設機械、船舶、環境・プラント機器まで幅広い領域をカバーしています。
時代の変化をとらえ、社会に求められる商品とサービスを持続的に提供していくには人材の活用が欠かせません。そこで同社は人事戦略の中核に「組織開発」を位置づけ、社員が主体的に行動する風土を醸成する「PRIDE PJ(プライドプロジェクト)」と名付けた組織開発活動を2021年度から推進。2022年度にはDX推進や事業部門の情報システム開発などを担うICT 本部でも推進事務局を設置しました。
事務局が初年度に若手社員向けキャリアビジョン研修を実施した後、2023年度のテーマとして掲げたのが、DXを推進する組織づくりです。「多様な人材が共創し、絶えずイノベーションを起こしていく組織」を目指す中で、社内のつながりが弱いという課題があったと、事務局でリーダーを務める山口久美子氏は振り返ります。
「当社のDXミッション“オモイをつなげる”を、ICT本部が主導していく立場でありながら、私たち自身がつながっていないことが一番の問題でした。中途入社が多く、40歳未満のうち76%が2019年以降の入社で、顔と名前が一致しない人も少なくありません。コロナ禍で働き方が変化して心理的な距離が広がったことに加え、事業所も首都圏のほか大府、倉敷、新居浜、西条などに点在し、物理的な距離もあります。また、共創すべき相手とは“請負マインド”のコミュニケーションに陥りがちとも感じていました」
“Have Fun!”をテーマに、楽しみながら学ぶ
そこでICT本部は「距離とマインドのリセット」を第一歩と定めて事務局のメンバー5名で議論し、生成AIをテーマとしたアイデアソンの実施を企画。アイデアソンとは、決められた時間内でグループごとにアイデアを出し合い、その結果をフィードバックする共創イベントです。
「ICT本部のメンバーは、コミュニケーションが得意な人ばかりではありませんが、技術に対しては熱い思いを持っています。ホットな技術である生成AIがテーマなら、議論が活発になると考えました」と山口氏は語ります。事務局メンバーの近藤卓氏も「初めから実現化を前提とすると、自由な発想を妨げることにもなりかねないため、まずはどんなアイデアも出せる環境づくりにフォーカスしたアイデアソンを目指すことにしました」と語ります。
一方で実施に際しては、事務局内にノウハウがなくマンパワーも不足していたことから外部パートナーの協力を求め、複数社の中からインキュデータが提案したワークショップ形式のプログラムを採用しました。

住友重機械工業株式会社 ICT本部 ビジネスIT推進部 田無グループ 主事
近藤 卓 氏
インキュデータは提案段階で、一般的な事業開発・ビジネスデザイン向けのプログラムと、Have Fun!をテーマとしたプログラムの2 種類を用意しました。今回、後者を採用した理由について山口氏は「参加者が主体的に関わるためには、楽しさが欠かせないと考えていたため、勉強形式ではなく、楽しみながら学べるインキュデータの提案は際立っていました」と語ります。近藤氏も「Have Fun!のメッセージが明確ですし、事務局としても参加者がワクワクしながら学んでいるイメージが自然と湧いてきました」と付け加えます。
提案を行ったインキュデータのシニアビジネスデザイナー、川添太郎は「経験上、Have Fun!によって短時間のプログラムでもメンバー間に絆が生まれたり、目つきや意識が変わったりする場面を見てきましたので、ワークショップはチームを組んで、一つの目標を達成できるように設計しました。特に今回は、成果発表にロールプレイを採用し、全員の前で寸劇を披露していただきました。場が盛り上がると普段ではできないような勢いが生まれますので、今回参加された皆さまも素晴らしい演出や演技を見せてくださいました」と語ります。
ロールプレイングでアイデアを発信・共有する楽しさを体感

住友重機械工業株式会社 ICT本部 ビジネスIT推進部 千葉グループ 主事
小笠原 雅輝 氏
アイデアソンは全国のICT本部に所属する44歳以下の社員を対象に、2回に分けて2日間のプログラムで実施されました。参加者に課したゴールは、目的を人脈形成とすること、目標として研修後も続く新しい人脈を2人作ることです。参加時には常にコミュニケーションを取ってともに課題に取り組むこと、所属が違っても悩みを共有し自発的にアイデアを発信し合うことも伝えました。
1日目はアイスブレイクや相互理解などチーム感の醸成、2日目はコラボレーションや成果発表など、アイデアづくりや発信の楽しさを体感できるプログラムで構成されました。ポイントは、アイスブレイク、アイデアづくり、アイデアの発信・共有の3点です。
ファシリテーションを行ったインキュデータのシニアコンサルタント、古谷梢は次のように語ります。「普段交流のない部門の方同士でチームを編成し、アイスブレイクでは参加者同士のインタビューや他己紹介などでチームの一体感を醸成しました。アイデアづくりのステップでは、カードやアイデア発想法のフレームワークを使うなど、アイデアを作ることの楽しさを体験いただけるようにしました。最後のロールプレイは一番の山場で、心理的安全性を感じられる場で、“やればできる”ことを体感していただけるようにしました。アイデアを人に伝えるロールプレイを通して、課題や背景を認識したうえでプロジェクトを成功に導くためのプロセスを体験していただきました」
標準的なプログラムでなく、企業が抱える課題に沿った形で伴走するインキュデータの支援を、事務局メンバーの小笠原雅輝氏は次のように評価します。「私たちがイメージする研修をうまく言語化することは難しかったのですが、私たちの思いを汲み取って進めていただきました。インキュデータさんにお願いして良かったと実感しています」
開催時には、事務局メンバーも2回のアイデアソンのいずれかに参加し、想像以上の盛り上がりを体感したといいます。事務局メンバーの髙野光浩氏は「提案をいただいた当初、即興での寸劇は難しいのではないかと思っていました。しかし、実際に体験するとこの人はこんなに訴求力をもったコミュニケーションができるのか、こんな面もあるのかという多くの発見がありました」と振り返ります。
今回のテーマとなった生成AIについては、インキュデータが同社のエンジニアをアサインし、事前にインプットセミナーを開催して基本的な知識や発展性など、ワークに取り組むために必要な情報提供を行ったほか、ファシリテーターとして議論をサポート。「難易度の高さに懸念もありましたが、会場でも各チームの状況を見て、議論が停滞しているチームには新たな切り口や思考の幅を拡げるアドバイスをするなどの支援があったおかげで大きな停滞もなく、活発に議論が進みました」(近藤氏)

住友重機械工業株式会社 ICT本部 DX推進部 グランドデザイン統括グループ 技師
髙野 光浩 氏
93%の参加者が「新しい人脈が2人以上できた」と回答

住友建機株式会社 管理本部 情報システム部 第2情報システムグループ
原田 一樹 氏
実施後のアンケートでは、93%の参加者が研修後に続く新しい人脈が2人以上できたと答えたほか、平均5人以上の新たな人脈を構築できたと答えています。メンバー同士でアイデアづくりやコラボレーションの楽しさを体感するHave Fun!についても、86.2%の参加者が5段階中4以上の評価を付けています。
通常業務に戻ってからも、仲間意識の高まりやコミュニケーションの活発化など、研修の成果が現れています。事務局メンバーの原田一樹氏は「アイデアソンを通して以前は交流のなかった人と話せたり、普段どんな仕事をしているかわからない人とコミュニケーションが取れたりする中で多くの気づきが得られました」と語ります。DXリテラシー教育にも関わる髙野氏は「今まで全社で取り組んで来たDXの研修や人材育成活動ともリンクすることができ、事業の活動に貢献する糸口をつかむことができました」と評価しています。
ICT本部ではアイデアソンの成果として、コミュニケーションコストが下がり、業務スピードや業務効率の向上、心理的安全性の向上を実現しました。また、メンバー各々が共創マインドを持っていること、アイデアづくりを楽しめる風土があることもあらためて実感したといいます。そして、アイデアソンに同席した管理職が、参加者が現状に対してそれぞれ意見や危機感を持っていることに気づいた点も大きな一歩となっています。「全国から集まったメンバーが同じような悩みを抱えていることが明らかになり、管理職からは解決に乗り出したいといったコメントも聞かれ、実際に動き出した部門も現れています」(山口氏)
イノベーティブな風土を持続・拡張させる活動を継続
今後ICT本部は、アイデアソンで見えてきた社員の不満や現場の課題をクリアすることに取り組んでいく予定です。具体的には、人脈形成をさらに進めながら、組織への帰属意識を高めつつ、イノベーティブな風土を持続・拡張させる活動を進めていくといいます。また、アイデアソンで出てきた生成AIに関するアイデアについても、ランキング上位のものは深掘りしながら実際のサービスやソリューションにつながる活動を継続する方針です。「今回明らかになった課題をもとに第二歩へと歩みを進め、将来的には多様な人材が共創し、絶えずイノベーションを起こしていく組織を目指していきます。他のプロジェクトでも、インキュデータの継続的な協力に期待しています」(山口氏)
一方、今回の取り組みは他の事業部でも横展開が可能であることから、ICT本部と事業部門を兼務する近藤氏は「事業部においても組織間の壁を感じることもありますので、今回の取り組みを新たな活動にもつなげていけたらと思います」と展望を語っています。

インキュデータ株式会社 ビジネスソリューション部 シニアコンサルタント
古谷 梢
- インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです