福岡ソフトバンクホークス株式会社 顧客データを活用したファンエンゲージメント戦略で再来場率を大幅に向上!

  

〜導入から4ヶ月で運用スタート!驚きの成果を挙げた実証実験とは〜

福岡ソフトバンクホークス株式会社 事例

日本屈指のプロ野球球団を運営する福岡ソフトバンクホークス株式会社。ホームである福岡PayPayドーム球場の熱量が非常に高いことでも知られ、選手の一挙手一投足を後押しするファンの声援が、この12年で7回の日本一を手繰り寄せてきました。しかし2020年以降コロナ禍の影響は大きく、高い集客力にも制約をかけざるを得ませんでした。

そのような状況下で、福岡ソフトバンクホークスがより注力したのはお客様一人ひとりに対しての1to1コミュニケーションです。ファンのエンゲージメントを高めるために福岡ソフトバンクホークスはどのように取り組んだのか、そしてインキュデータの支援内容について、マーケティング戦略部の石井英之氏、野田佳邦氏、佐藤翔馬氏にお聞きします。

    Contents

    1.  ホークスを支えるマーケティング戦略部とは
    2.  ID統合後もシステム間のデータ連携に課題があった
    3.  Treasure Data CDP導入から運用開始まで4ヶ月!
    4.  300を超えるシナリオを構築、運用
    5.  PoC:ファンクラブの継続率向上
    6.  PoC:コアファンに対する商品のご提案
    7.  総合エンタテインメント企業を支える顧客データ基盤

    ホークスを支えるマーケティング戦略部とは

    ―事業の概略を教えてください。

    石井氏:
    私たちは、「福岡ソフトバンクホークス」(ホークス)の球団と、ホームスタジアムの「福岡PayPayドーム」、さらに球場に隣接するエンタテインメント施設「BOSS E・ZO FUKUOKA(ボス イーゾ フクオカ)」を所有、運営しています。売上は、コンサートなど球場の使用料、ビルの賃料などもありますが、軸は野球興行からの収入です。
    野球興行の収入の約半分近くがいわゆるファンの方々、お客様を対象とした、いわゆるBtoCのビジネスです。具体的にはチケット、グッズ、球場での飲食など、ホームゲーム開催時のマッチデー収入ですね。残りは、スポンサーからの協賛金や選手の肖像権などのライセンス料、テレビ中継の放映権といったBtoBです。

    福岡ソフトバンクホークス株式会社 石井英之 氏

    ―マーケティング戦略部はどのような業務を担っていますか?

    石井氏:
    BtoCの市場調査・分析、戦略立案、CRM、チケット販売、販促活動などをミッションとする部門です。現在はチケットもグッズも、ECサイトでの販売がメインになりました。戦略企画課とチケットセールス課という2つの課がマーケティング戦略部内にあります。戦略企画課では、市場調査や会員の方へのアンケート調査など、エビデンスに基づいたマーケティング戦略や施策立案を行い、多角的、多面的に組織の課題解決に取り組んでいます。Treasure Data CDPを導入、活用しているのも戦略企画課です。なお、チケットセールス課はチケット販売の責任部門です。ふたつの課は密に連携しています。

    佐藤氏:
    マーケティングの戦略として、もちろん全国のお客様に私たちの球場まで足を運んでいただきたいと考えています。
    一方私たちが調査したところ、福岡県民の6割が、ホークスに興味を持っていただいているということがわかっています。しかし当然ですが、その全ての方に試合を見に来ていただいているわけではありません。500万人の福岡県民で、球場にいらっしゃったことがない方が、まだたくさんいらっしゃるはず。興味はあるけれど、何かの障壁があって球場まで来られていないと推定される福岡商圏のお客様に向けての戦略を、現状では優先して考えています。

    ID統合後もシステム間のデータ連携に課題があった

    ―ホークス球団は日本一を何度も獲得し、福岡PayPayドームの盛り上がりも有名ですよね。その中で、どのような課題をお持ちでしたか?

    石井氏:
    お客様のことがわからなかった、という課題がありました。2015年頃は、チケット販売やグッズのECサイトとファンクラブ会員の管理、球場での物販、飲食POSなど、顧客データベースは部門をまたいでバラバラに保有されていて、球場にいらっしゃったお客様がファンクラブ会員かどうかもわからない状態でした。
    これらサイロ化したお客様に関わるデータを1つのIDに統合するプロジェクトをCRM推進室として着手、運用しはじめたのが2017年のことです。

    福岡ソフトバンクホークス株式会社 野田佳邦 氏

    ―IDを統合してお客様のことを理解できる土台ができたということですね。

    石井氏:
    統合できるデータの範囲でCRMの取り組みは進んでいて、メールを一斉配信するよりも、行動や属性に基づいてセグメントを設定し、メールの出し分けを行ったほうが、開封率が高く、反応も良いことが実証できていました。例えば、チケット購入者に限定して、試合前日にご案内のメールを配信すると開封率は上がる、といったことです。ただ、基幹となるデータベースシステムは拡張性が乏しく、ほかのデータ基盤やツールと連携させることができませんでした。例えばNPS調査のデータを同じ基盤で管理できず、自社Webサイトの行動データと会員IDも連動して識別できない、などの課題は残っていました。

    お客様一人ひとりの行動履歴に合わせて最適なタイミングで情報を提供するなど、この段階では優れた顧客体験を提供することには至っていませんでした。ならば、一層お客様の行動に即した、パーソナライズしたコミュニケーションを進めていきたいと思いましたが、現状のデータ基盤だけでは限界がある状態でした。

    Treasure Data CDP導入から運用開始まで4ヶ月!

    ―そこでCDPを導入に至ったわけですね。

    石井氏:
    収集、格納したデータを、必要に応じてすぐに取り出せたり、他のシステムに柔軟に連携できなければ、十分に活用できません。CRMの範疇を超えた、マーケティングに活用できる拡張性のある顧客データ基盤ということで検討を開始し、2021年10月にTreasure Data CDPを導入しました。
    Treasure Data CDPに期待したのは、まさにお客様に関するデータの基盤、ハブとして、それぞれのツールで活用できるデータをよりリッチにし、パーソナライズしたコミュニケーションを可能とする位置付けです。既存のメール配信ツール、CRMシステムに加え、新規にWeb接客ツールも導入しましたが、それぞれとの接続、連携も容易でした。 導入から4ヶ月後には実際の運用をスタートすることができました。

    福岡ソフトバンクホークス株式会社 佐藤翔馬

    ―かなり短期間で構築されていますね。

    石井氏:
    プロ野球のシーズンがスタートする3月が運用スタートのターゲットでした。はじめから全てを整えるのではなく、段階的に、スモールスタートで取り掛かりました。とはいえCDPの知見がないところからのスタートですので、インキュデータの支援がなければリリースは難しかったですね。当社チームも佐藤を筆頭に、ギリギリのところで頑張ってくれました。
    とりわけ、インキュデータの担当者はスケジュールが迫るなか、大変親身になり、高い熱量でプロジェクトに関与してもらったと感じています。こちらの疑問や課題に対するケアやレスポンスの速さに非常に助けられました。

    佐藤氏:
    私自身、プロジェクト開始当初はシステムの知見が豊富ではなかったため、実際の開発と構築はインキュデータのチームに担当してもらいました。私は必要なデータの定義とチェックに集中することができたこと、納期を優先したプロジェクト進行にフォーカスしたことにより、まずできるところから取り掛かっていったのが、短期間での導入を可能にした鍵だったと思います。

    ―スモールスタートということでしたが、具体的にはどのようなデータから着手しましたか?

    佐藤氏:
    まずはファンクラブの顧客データをはじめ、お客様が過去に球場に来られた回数など、チケット販売に活用できると想定されるデータを絞って、Treasure Data CDPに格納していきました。

    300を超えるシナリオを構築、運用

    ―構築からまもなく、3月にはプロ野球のシーズンが始まるということで、並行して戦略企画も進めていかれたのでしょうか。

    野田氏:
    そうですね。私はプロジェクト途中からの参加でしたが、改めてインキュデータよりプロジェクトやシステム構成の全体感や、Treasure Data CDPを中心に据えたマーケティング、お客様へのアプローチなどのレクチャーを受けることで、理解と状況のキャッチアップをスムーズに行えたと思います。
    私たちが重要と考えているのが、チケット購入に至るまでのカスタマージャーニーです。Treasure Data CDPに格納した顧客データを分析し、お客様のセグメンテーションや、ターゲットごとに訴求するメッセージを検討しながら、Web接客ツールの運用を進めていきました。

    石井氏:
    運用のスピードが求められる中で、特に初期段階では小さな成功実績を作っていくことが肝要です。はじめからツールを最大限に利活用することはできないという前提で、まず着手できるところから始めて、施策を実行して効果を計測しながら、アプローチのシナリオを追加していきました。

    野田氏:
    はじめのうちは暗中模索の状態でしたが、施策実行と成果をチームで展開、共有していきながら、少しずつできることを伸ばしていったというイメージでした。
    お客様の反応を見ながら施策の改善を続けていくと、そのプロセスがだんだんと社内へ浸透していきました。新卒の社員からもアイデアが出て、大量のテストケースを作ってA/Bテストを回すようになりました。

    佐藤氏:
    アイデア出しから、カスタマージャーニーに則ったコミュニケーションのパターンを作成するのですが、シナリオの数は300ほどになりました。

    石井氏:
    シナリオの数がどんどん増えていくことに私も驚きましたが、インキュデータの知見あっての結果だと考えています。Web接客ツールでもデータは収集できますが、保持できるデータには限りや制約がありますので、私たちが求めるパーソナライズされたコミュニケーションを行うためにはTreasure Data CDPに格納しているデータを連携させることが不可欠でした。

    図:システム構成概要
    図:システム構成概要

    ―Treasure Data CDPの運用によってどのような変化がありましたか?

    石井氏:
    現状では、有料のファンクラブ会員が15万人、無料のタカポイント会員が35万人くらいですので、トータルで50万人のリストを持っています。増えたのは、IDと紐づいた行動データですね。この行動データから顧客データをよりリッチにすることで、より深くお客様を理解したコミュニケーションができていると思います。

    佐藤氏:
    加えて、ID化されない状態のお客様における、Web上での行動データを収集、格納することができるようになったのは大きな変化と言えます。いわゆる個人情報に紐付かない「アノニマス」の時点から、一人ひとりの行動を追跡し、アプローチすることができます。
    あらゆるタッチポイントでどんな施策がどんなセグメントの層に刺さったのかといったデータが、Treasure Data CDPにどんどん溜まってきています。有料会員の増加は求められますが、そのためには顧客基盤の裾野を広げていかなければなりませんので、集まったデータを分析し、活用していきたいと思っています。

    PoC:ファンクラブの継続率向上

    ―Treasure Data CDPを活用した具体例を教えていただけますか?

    佐藤氏:
    ひとつは、「クラブホークス会員継続の確度判定」です。クラブホークスを退会しそうな会員をスコア化して検知し、事前に抑止する取り組みを進めてきました。9月から10月末にかけてスコア化を行い、プロ野球シーズンが終わった11月に、実証実験として継続率向上の施策を打ちました。
    スコア化ではまず、私たちが仮説を立て、退会に関連すると考えられる項目を洗い出しました。加えてインキュデータの知見を加味した別の観点も含めて検討、退会に影響する説明変数を設定し、Treasure Data CDPの機械学習(Predictive Scoring)にかけました。

    ―感触はいかがでしたか?

    佐藤氏:
    私としては、予想以上に精度が高いという感覚を持ちました。スコアが高い人ほど、実際の退会率も高いことが、実績から見えてきたからです。
    続いて、スコアが高かったお客様に絞って、メールやWeb接客といったテスト施策を行ったところ、こちらも一定の効果が見られました。例年、ホークスが優勝を逃した際には、退会率が上がる傾向にあるのですが、2022 年の会員維持率は過去最高に近い数値を達成できました。

    石井氏:
    退会しそうな会員の方のIDを特定できるというのが、Treasure Data CDPを導入、活用することの大きなメリットだと感じています。従来のCRMによる施策では、「たとえば2年目の会員の方は退会しやすい傾向にあるから、2年目の会員全員に対策を実施する」といったような、大雑把なアプローチしかできませんでした。ピンポイントな施策がスピーディに、かつパーソナライズしてできるようになり、とても驚いています。

    福岡PayPayドーム

    PoC:コアファンに対する商品のご提案

    佐藤氏:
    もうひとつ行った実証実験は、「セレクトシート購入意向の濃度判断」です。セレクトシートとは、複数試合のシートをパッケージにして販売する商品のことです。金額が約6,000円からと比較的高単価ですし、複数回の来場が前提とされ、ある程度コアなファン向けの内容と言えます。ファンクラブ会員の全員に発信するというより、ターゲットを絞って訴求するべき商品です。
    プロセスとしては「クラブホークス会員継続の確度判定」と同様で、こちらはコアなファンを抽出し、広告のセグメンテーションに利用しました。 これまでは、限られた軸でしか絞り込みできていませんでしたが、Treasure Data CDPのデータと機械学習でスコアをつけることで、複数の変数から、かなり正確なターゲティングができるようになりました。

    野田氏:
    購買意欲の高い方を抽出して効率的に訴求することに加え、まだそこまでエンゲージメントが高くないライトなファンに対しては、Web上で広告を表示したりすることなどで顧客体験を妨げたりしないようにコントロールできるのは大きいです。
    スコアの精度は非常に高く出ていて、広告の獲得単価などにポジティブな効果が出ています。さらに精度を高められるよう、今後のチューニングを社内でも検討しています。

    総合エンタテインメント企業を支える顧客データ基盤

    ―データ活用を進めるにあたっての波及効果はありましたか?

    石井氏:
    はじめはチケット購入に関する顧客体験の向上という観点に集中していました。その成果やプロセスを全社的に共有すると、さまざまな部署から手伝ってほしい、という相談が集まるようになりました。
    例えば、サブスクリプションの動画サービス「ホークスTV」の会員獲得等が挙げられます。Treasure Data CDP導入からほんの数カ月で、データ活用の考え方が社内に広がった感触があります。

    野田氏:
    他部署への展開については、私たちから意識的に広げていったところもあります。特にWebサイトを運用している部門、ホークスTVやBOSS E・ZO FUKUOKAとは、顧客の獲得やチケット販売の基本的な戦略を共有できます。部署を横断して共に考えながら、マーケティング施策を実施していきました。

    福岡ソフトバンクホークス株式会社 グループ写真

    佐藤氏:
    一部のプロジェクトでは部門間のデータ連携もはじめています。ホークスのチケット購入者の行動データなど、Treasure Data CDPに格納している顧客データから、適切なお客様に対してBOSS E・ZO FUKUOKAのエンタテインメントをご案内するような取り組みです。

    野田氏:
    指向しているのは、福岡PayPayドームの集客だけでなく、関連施設を含めた「総合エンタテインメント企業」として、お客様に訴求できる状態です。そのために、今は球場にもう一度足を運んで頂くための施策に軸足をおきつつも、さまざまな部門の課題を解決していくステージだと考えています。

    石井氏:
    昔からホークスを応援していただいているファンの皆様が大切、という大前提は変化していません。その上で、今後はTreasure Data CDPを活用して、ホークスを知り興味を持っていただいたばかりの、いわばライト層の方々に、気軽に球場に足を運んで、一緒に選手を応援していただけるような関係性の構築と、球場だけではない、広がりのあるエンタテインメントの提供ができればよいと思っています。そのためにも、より優れた顧客体験を生み出していかなければなりません。Treasure Data CDPと顧客データ活用をより積極的に進めていきます。

    •  インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです
    •  会社情報は取材当時のものです
    •  記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です