DXを成功へと導く組織と技術の戦略 - 成功のカギはチェンジ・マネジメントにあり

DX推進の要素

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、顧客データとデジタルテクノロジーによって事業そのものを変革し、市場での競争優位を確保する取り組みです。DXの推進には、企業が一丸となって取り組むことが必要とされます。

事業の変革はそう簡単に成しえることではありません。特に、歴史があり、多くの成功体験を持つ企業の組織にとって変化を受け入れるのは難しいことです。例えば、DXを推進する過程では、顧客への理解を起点に商品の作り方や商品そのものを変えたり、売り方、顧客へのアプローチの仕方を変えたりしなければならないことがあります。ゆえに、たとえトップダウンでDXを推し進めようとしても、現場が変化に対応できず、DXの取り組みがなかなか前に進まないケースも珍しくありません。

また、DXは企業にとって誰も経験したことのない取り組みですので、明確な戦略・ビジョンを打ち出し、全社がそれに沿って統一感のあるDXの施策を展開することが必要とされます。しかし、会社の規模が大きくなると、組織ごとにDX戦略・ビジョンに対する理解にズレが生じ、それぞれが異なる方向を向いて施策を展開しようとするケースも多くあります。

そこで本稿では、DXを成功に導く推進例を一つご紹介します(図1)。これは、DX推進の正攻法ともいえるもので、以下の要素から構成されています。

 ①チェンジ・マネジメントの遂行

 ②顧客体験(CX)/従業員体験(EX)の設計・構築

 ③データ統合基盤の構築

 ④人材の育成

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1DX推進の参考例

以下、これらの要素について一つずつご紹介していきます。

①チェンジ・マネジメントの遂行

チェンジ・マネジメントとは、組織的な変革をマネージすることを指しています。

DXの取り組みでは、このチェンジ・マネジメントを上手く行えるかどうか──つまりは、組織的な変革を上手く推進できるかどうかが成否を分ける重要なポイントになりますが、それに失敗することがよくあります。

失敗の要因として多く見られるのは、DXの推進チームを既存の組織内に設置してしまい、各事業部間での横の連携がないままに、それぞれのDX施策を推し進めようとするケースです。この場合、施策の対象範囲(スコープ)に漏れや重複があっても、各事業部が構わず施策を遂行し始めます。結果として、全ての施策が個別最適型のDXで終わることになります。

また、情報システム部門におけるDX施策(=DXを支えるシステム施策)についても、本来は、各事業部の施策の状況を勘案しながら、事業部横断的なDX施策を展開しなければなりませんが、事業部間の横の連携が確立されていないと、情報システム部門も独自の判断で“ビジネス要件不在”のシステム施策を展開しがちになります。

さらに、DX施策に関して事業部間の連携が確立されていない場合、経営陣と各事業部の縦の連携も上手くいかなくなり、DXに対する経営陣の方針やビジョン、意識が各事業部になかなか浸透しないといった問題や、各事業部からのDX施策に関する報告が、“交通整理”がないままに頻繁に経営陣に上げられ、結果として、全社的なDXの推進スピードが鈍化してしまうといった問題が発生することが多くあります。

このような状況に陥らないようにする秘訣は、既存の組織から切り離された“出島式のDX推進チーム”を組織し、ターゲット顧客ごとのテーマプロジェクトを立ち上げ、小さく始めて成功を重ねながら、徐々に各事業部との連携を深めていくチェンジ・マネジメントを遂行することです。

②顧客体験(CX)/従業員体験(EX)の設計・構築

次に、DX推進の正攻法である、CX(顧客体験)& EX(従業員体験)の設計・構築についてご紹介いたします。

CXの設計・構築

CXの設計・構築とは、主に顧客データの分析によって顧客に対する理解を深めたり、自社の店舗やブランド、あるいは、自社の商品に対するロイヤルティを高めたり、購買意欲を喚起するための体験などを設計・構築する取り組みを指しています。

また、B2Bビジネスを展開している会社の場合は、顧客データを使ってB2Bマーケティングを高度化させる取り組みや、営業のプロセスを見える化して営業改革に役立てる取り組みも、CXの設計・構築に類する活動といえます。

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例えば、顧客データによってB2Bマーケティングを高度化する取り組みについて考えてみましょう。この取り組みは、一般に、リード創出(リードジェネレーション)、リード育成(リードナーチャリング)と呼ばれるものです。

法人顧客が、特定企業(仮にA社とする)の商品(仮にB商品とする)の購入を検討するまでには、B商品が解決する課題を、自分(ないしは、自社)が抱えている課題であると認識し、課題解決のためにB商品を導入するのが良さそうだと気づき、欲しいと考えるようになるといった意識の変化があります。

この意識の状態に合わせて、適切なマーケティング施策を打ち、自社の商品に対するニーズを醸成する手法がリード育成と呼ばれます。また、リード創出とは、インターネット上の広告や検索によって、リード育成の施策を仕掛ける相手を自社のWebサイトやセミナーなどに誘導することを指しています。

こうしたリード創出・育成の施策を展開する上では、顧客の行動データを収集・分析して意識の変化をしっかりと捉えることが大切ですし、顧客に何を読ませたり、視聴させたりすると、意識の状態を次の段階へと変化させられるのかも把握しておかなければなりません。

一方、先に触れた営業プロセスの見える化による営業改革とは、営業担当者がどういった顧客に対してどのようなアプローチをかけているか、あるいは、各顧客との商談ステージがどのような段階にあるかを可視化し、営業プロセスの効率化ポイントをはじめ、営業目標達成のためのポイント(キードライバ)、顧客の脱落・滞留ポイントといったクリティカルポイントを把握する取り組みです。これにより、データに基づいて営業の改革・改善が図ることが可能になり、商談成立の確率を上げるために何をどうすべきかも分析できるようになります。

EXの設計・構築

EXの設計・構築は、顧客満足度の向上につながる業務効率化のDX施策を特定し、それを優先的に実施してEXCXを良質化・高度化していくことを指しています。

例えば、顧客のWeb行動や商談履歴をもとに“顧客カルテ”をダッシュボード化することで、営業担当者やコールセンターのスタッフは、商談の際や問い合わせ対応時に、当該顧客の状況を即座に把握することが可能になります。これにより、EXCXがともに良質化されることになります。

③データ統合基盤の構築

上述したCXEXの設計・構築など、DXの取り組みを推進するうえで欠かせないのが、顧客に関するさまざまなデータを管理・活用するためのデータ統合基盤です。

日では多くの企業が実店舗やイベント、Webサイト、メール、SNSなど、さまざまなタッチポイントを通じて顧客にアプローチしようとしています。また、社内システムにおいても事業部ごと、業務ごとにさまざまなクラウドサービスが使われ始めています。そして、各タッチポイントやクラウドサービスで収集ないしは管理されているデータは往々にして各所に分散し、バラバラの状態にあります。

顧客に関係するデータがバラバラの状態にあると、例えば、自社のどの製品・サービス、マーケティング施策に対し、どの顧客が、どのような行動を取っているのか、また取ろうとしているかは捉えられません。それが捉えられなければ、自社が提供する特定の製品やサービスについて、「なぜ、その顧客はそれを購入したのか」も見えず、収益増につながるようなCXEXを適切に設計することは困難になります。

また仮に、CXEXの良質化を目的に何らかの施策を展開したとしても、それに顧客がどう反応したかをデータで総合的に捉えることができなければ、施策の成否の理由をデータで正しく掴むことができず、次にどのような施策を展開するのが正解かの判断がつかなくなります。

ゆえに、CXEXの設計・構築には、顧客に関連するデータを収集し、顧客ごとに統合化して管理するための基盤──つまりは、データ統合基盤の構築が不可欠と言えるのです。

こうしたデータ統合基盤をCDPCustomer Data Platform)を使って構築したイメージは図2です。いうまでもなく、この基盤の構築は、“出島式のDX推進チームが担います。

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2CDPを使ったデータ統合基盤のイメージ

④人材の育成

DXを推進する際に、多くの企業で突き当たる大きな課題の一つは、社内にDXの施策をリードできる人材が足りないないしは、いないことです。

DXの施策をリードするには、ビジネスとマーケティング、そしてテクノロジー(データ分析)の全てに関して相応の知識を持っていなければなりません。

例えば、自社のビジネスやマーケティングに関する知見・知識がなければ、データ統合基盤の構築プロジェクトはリードできません。というのも、DXのビジョン・戦略に沿って、顧客の何を知るべきか、何を可視化すべきかは、ビジネス、マーケティングの知見・知識がなければ決められず、それが決められなければ、CDPにどのようなデータを収集・集約し、いかなるデータ統合基盤を築くべきかも決まらないからです。

また、自社の顧客が自社の商品を購入するトリガを突き止める際に、どのデータとどのデータを突き合わせて分析するのが有効かの仮説も、自社のビジネスやマーケティングに関する知見・知識がないと立てることは困難です。

一方で、CDPやアドテクノロジーなど、テクノロジーに関する知見・知識もDXの推進には不可欠です。テクノロジーに関する知見・知識がなければ、DXのビジョン・戦略を支えるデータ統合基盤をどのように設計・構築するのが適切なのか、何をどうすれば思い描いた分析が可能になるかがわからないからです。また、講じたいマーケティング施策にどのテクノロジーを使うのが適切かの判断も下せません。

ビジネスとマーケティング、そしてテクノロジーの全てに精通する人材を育成するのはそう簡単なことではありません。ですが、それを行うことが、DXの取り組みを社内に定着させることにつながるのです。

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