INCUDATA Magazine_000187_新規顧客獲得のためのデータ活用術 - データで効率化する見込み客の絞り込みとアプローチ

新規顧客獲得のためのデータ活用術 - データで効率化する見込み客の絞り込みとアプローチ -

新規顧客の獲得効率をアップさせることは、マーケティングと営業双方にとっての恒久的なテーマです。本稿では、B2Bマーケティングにフォーカスを絞り、データを活用して新規顧客獲得のアプローチを効率的かつ科学的に行う方法についてご紹介いたします。

新規顧客獲得における旧来手法の課題

B2B領域における新規顧客獲得の手法はかつて、営業部門のフィールドセールスが自社の商品・サービスが売れそうな企業を一社ずつ訪問して営業をかけるという「人海戦術」に近いアプローチがメインでした。

この手法の問題点は、効率が良いとはいえない上に、どうすれば新規顧客獲得の成功確率が上げられるかを科学的に分析できないことです。

新規顧客獲得におけるテーマは「どういった企業の、どのような人に対して、どうアプローチするのが適切か」と表現できます。このうち「どうアプローチするのが適切か」の営業ノウハウは人海戦術をメインにした旧来手法でもデータ化(形式知化)でき、再現性の確保(=法則化)が可能だったといえます。

ただし、前段の「どういった企業の、どのような人に対して(アプローチをかけるのが適切か)」の部分がデータに基づいて割り出されたものでないと、新規顧客獲得の成功確率を高めるための法則は突き止められません。結果として、同じアプローチを繰り返すだけでは成功確率が上げられないことになります。

日本では、働き手の絶対数が減少傾向にあり、フィールドセールスの人海戦術を展開すること自体が困難になりつつあります。加えて、コロナ禍の影響からテレワークが活発化し人と人との接触が制約を受けたことで「飛び込み営業的」なアプローチが困難になっているはずです。コロナの終息後に、この傾向にストップがかかり、コロナ以前の状態に戻るのであれば問題は少ないかもしれません。しかしながら、多くの企業におけるコロナ後の働き方はオフィスワーク中心型からテレワーク中心もしくは併用型へとシフトするとされています。

仮にそうなるとすれば、飛び込み営業的なアプローチを巡る状況が、コロナ以前に戻ることはないでしょう。ゆえに、新規顧客獲得に向けて、少なくともフィールドセールスがアプローチする相手をデータに基づいて科学的に絞り込み、営業の効率性や成功確率を高めていく取り組みが必要になります。

変化する企業の購買プロセス

インターネットが広く普及し、ありとあらゆる情報がインターネット上に集中し始めたことで、企業における購買プロセスにも大きな変化が見られます。個々の企業がインターネット上のさまざまなメディア・チャネルを通じて自社の課題を解決するための情報を能動的に収集し、導入する製品・サービスの調査や検討を済ませてしまう傾向が強まっているのです。

この傾向はコロナ禍によって人と人との接触が制限される中でより強くなっているはずで、マーケティング部門が有望な見込み客を探し当ててフィールドセールスがアプローチをかける頃には、ターゲット企業は導入するソリューションをすでに決めてしまっているケースが増えていくことが予想されます。

このような状況の中では、見込み客を発見し、それぞれが抱える課題の解決に自社の製品・サービスが有効であると認識させるスピードを増し、見込み客が全てを決めてしまう前に、彼らの検討のプロセスに自社のソリューションをのせることが大切になります。

ただし、マーケティングの人的・金銭的なリソースには限りがあり、自社のソリューションを導入する可能性がある全ての見込み客に対して均一にマーケティングアプローチをかけていくのは難しいといえます。そこで必要になるのが「 Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング、以下ABM)」と呼ばれるマーケティング戦略です。

ABMの基本戦略

ABMとは、既存顧客のデータと見込み客のデータを統合して、マーケティングと営業が連携しながら、ターゲットアカウントからの売り上げの最大化を目指すという戦略です(図1)。

図1:ABMのフレームワーク

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新規顧客の獲得という視点からいえば、自社により多くの収入をもたらす可能性(=ポテンシャル)の高い見込み客をメインのターゲットに据え、その顧客化にマーケティングリソースを集中的に投下することがABMのアプローチとなります。この手法に則ったマーケティングの取り組みによって、営業部門のフィールドセールスも、ポテンシャルの高い見込み客に重点的に、かつ的確にアプローチをかけることが可能になります。

図1で言えば、売上高が「100億円以上」でインサイドセールスの結果として「アポの見込み」が立っている企業がフィードセールスにとって重点的に対応すべき見込み客(ホットリード)ということになります。

ABMに基づく新規顧客獲得のデータ活用術

図1では、企業の売上規模(見込み客が勤めている企業の売上規模)によって見込み客をセグメント分けしていますが、実際には、見込み客のポテンシャルを測る指標は一つではありません。見込み客の部署や役職、従業員数・拠点数などによってもポテンシャルは異なります。ゆえに、ポテンシャルを基準に見込み客のセグメント分けを行う際には、既存の顧客データを活用しながら自社にとって「ポテンシャルの高い見込み客とはどういう人物か」をしっかりと定義しておくことが大切です。現有の顧客データを使って顧客の所属部署・役職・勤め先の業種・売上規模・従業員数・拠点数などと、顧客から得られる売り上げとの相関関係を分析し、その結果を見込み客のセグメント分けに活用する必要があるということです。

このようにしてポテンシャルに基づく見込み客のセグメント分けを行ったのちには、ポテンシャルの高い見込み客に対して重点的にマーケティングのアプローチをかけていくことになります。このときに重要になるのが見込み客に対する理解を深化させることです。

そのためにまず必要になるのが、ターゲットとなる見込み客が自社の製品・サービスに対してどういった意識の状態にあるかを知ることです。具体的には、ポテンシャルの高い見込み客に関して、以下のような事柄をデータで把握すること、あるいは、把握できるようにしておくことが大切です。

①自社の製品・サービスをどの程度認知しているのか
②どのような課題感を持ち、自社の製品・サービスにどの程度の興味を示しているのか
③自社の製品・サービスの購入検討のフェーズにおいて、どのような点で迷っているのか
④最終的に購入した決め手は何か、あるいは購入しなかった要因は何か

もっとも、マーケティングの観点からいえば、上記のデータだけでは適切なマーケティングプランを立てることはできません。というのも、例えば、見込み客が自社の製品にあまり興味がないことが分かっても、どうして興味がないかの理由や興味が喚起される要因とは何かが分からなければ、どのようなマーケティング施策を打つべきかの判断が下せないからです。

したがって重要になるのは、上記①~④のような状態が見込み客のどのような体験によってもたらされたのかを知ることです。つまり、見込み客が自社の製品に興味を抱いて導入の検討をし始めたとするならば、それが何をきっかけにした行動なのかを知る必要があるということです。

こうした顧客(見込み客)行動への理解を深めるためには、オンラインメディアへの広告出稿に始まり、オンラインイベントへの誘導、販促メールの送付、販促資料への誘導、インサイドセールスによるアプローチなど、さまざまなマーケティング施策を打ち、それに対する見込み客の反応をデータで取得・収集することが必要になります。

また、そうして集めたデータを分析して施策の改善を繰り返していくことで、ポテンシャルの高い見込み客の購買意欲を高めることが可能になり、それが、フィールドセールスによる新規顧客獲得の効率性や成功確率を高めることにつながっていきます(図2)。


図2:見込み客の購買意欲を高める施策改善のサイクル

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なお、このように顧客理解のためのデータを蓄積していくと、AI(人工知能)による分析によって特定の属性を持った見込み客に対するマーケティング施策の精度を高めたり、新規顧客の獲得成功の道筋をパターン化し、それと一致する行動を取っている見込み客を早期に発見したりすることも可能になります。

新規顧客の獲得を人の力だけに頼って行う時代はすでに終わりを迎えつつあります。今日の企業に必要とされているのはデータを活用して新規顧客獲得のプロセスを徹底的に効率化・合理化することです。またそれは、B2Bビジネスにおける潜在顧客たちが望んでいることでもあるのです。

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