INCUDATA Magazine_000224_データプライバシー用語集(後編) - アドテクノロジー編

データプライバシー用語集(後編) - アドテクノロジー編 -

目次

近年、Webサイトやアプリ利用者のプライバシー保護の機運が高まり、法規制強化やプラットフォーマーによるトラッキング防止といった措置が相次いで導入されています。デジタルマーケティングにおいては、Cookie情報の使用制限強化など、個人のプライバシーに関する法令や動向を正しく理解しておく必要性が高まっています。そこで、当該問題におけるキーワードを2回に分けてご紹介いたします。

本記事は20216月現在の内容です

データプライバシー用語集(前編) - 法令編を読む

データプライバシー用語集(後編) - アドテクノロジー編

ITP(Intelligent Tracking Prevention)

AppleがMacOSおよびiOSに搭載しているトラッキングを防止する機能。

トラッキングとは、コンバージョンの測定やリターゲティング広告の表示を行うことなどを目的に、Cookieなどによって人の行動やシステムの挙動、データの推移などを継続的に追跡して特定のログを収集することを指す。

ITPは、こうした行為に対して「プライバシーの侵害」とするユーザの反発の高まりに対応した措置とされ、Cookieの使用を制限するもの。

国内のスマートフォンブラウザとして、Safariのシェアは60.1%を占めており(20211月時点[1])、防止されることの広告業界に対するインパクトは大きい。

ITPは2017年9月にバージョン1.0がスタートし、2020年3月に3rdパーティCookieを完全ブロックするバージョンが導入されている。一方、 Google は、2022年までに3rdパーティCookieの使用の廃止を宣言している。今後、ゼロパーティデータやデータクリーンルーム、広告IDといった代替手段へのシフトが想定される。

1stパーティCookie

ユーザがアクセスしたWebサイトのドメインから直接発行されるCookieのこと。これに対して、異なるドメインから発行されるCookieは「3rdパーティCookie」と呼ばれる。

Cookieには、クライアント側=ブラウザ側でJavaScriptで発行される「クライアントサイドCookie」と、サーバ側で発行される「サーバサイドCookie」=「セッション」の2種類がある。
CookieはWebサイトにアクセスした端末(PCやスマートフォン)に保存されるWebサイトへのアクセス情報であり、ログイン作業の省略やECサイトでの買い物カゴへの保存など、サービスの提供や操作性向上のために利用されたり、広告のコンバージョン計測や、リターゲティングに利用されている。
しかし昨今各ブラウザではCookieを用いたトラッキングの規制が強化されており、AppleMacOS及びiOSに搭載しているトラッキング防止機能ITPでは、ITP2.0より1stパーティCookieの規制が開始され、ITP2.3では1stパーティCookieのうち、クライアントサイドCookieの有効期限が最大1日に制限されている。

3rdパーティCookie

ユーザがアクセスしたWebサイトのドメイン以外が発行するCookieのこと。これに対して、アクセスしたWebサイトのドメインが発行するCookieを「1stパーティCookie」と呼ぶ。3rdパーティCookieは、例えばWebページ上に表示されているバナー広告など、他のドメインから読み込まれている画像などが表示された際に発行される。ドメインを横断してユーザをトラッキングしさまざまなデータを紐づけることにより、ユーザの興味関心や属性を捉えたオーディエンスターゲティング広告の配信などに活用されている。近年はプライバシー保護のため、AppleITPのように3rdパーティCookieの利用制限が行われるようになった。Google Chromeにおいても、3rdパーティCookie は2022年までに使用を廃止すると発表されている。

ゼロパーティデータ

ユーザが自ら広告主などに提供する情報のこと。ユーザがクーポンやプレゼントなどの対価を得るために提供される場合が多く、「ユーザの同意を得た1stパーティデータ」ともいわれる。GDPRCCPAなどによる個人情報保護の高まりや、ITPなどによって3rdパーティCookieの利用が制限され、広告主のユーザ情報の収集が困難になる中、収入や購買履歴、趣味嗜好といったより詳細かつ有効な情報を収集できる手段として注目されている。ユーザにとっても、レコメンドなど自身にカスタマイズされたサービスを受けられるようになるといったメリットもある。

データクリーンルーム

FacebookやAmazon Google などのプラットフォーマーが、ウォールド・ガーデン(Walled gardenとして固有のユーザIDに紐づく情報を広告主に提供する仕組みのこと。ウォールド・ガーデンとは壁に囲まれた庭の意味で、限定されたユーザにそのプラットフォーム内で活動してもらうように囲い込むクローズド・プラットフォームの仕組みや戦略を指す。

データクリーンルームでは、ウォールド・ガーデンが提供する匿名化・統計化されたオーディエンスのデータと、ユーザ自身が収集した1stパーティデータ、アトリビューション(メディアごとのコンバージョン貢献度の測定)データなどを連携させることで、より高精度のターゲティング広告を配信することができる。

IDFA & ADID

Apple Google などのプラットフォーム事業者から提供されるスマートフォンやタブレット端末などのアプリで利用される広告ID(広告識別子)のことで、iOSではIDFA(Identifier For Advertising)、AndroidOSではADID(Google Advertising ID、"GAID""AAID"も同義)と呼ばれている。
ユーザが端末の設定画面にてリセットしたり端末の初期化をしない限り変更はされず、ユーザ自身がオプトアウトしない限り永続的に利用できる識別子であり、ブラウザ単位に発行されるCookieとは異なり端末単位で付与されること、アプリ間で共通のIDであるため事業者が異なっても同一のIDが取得でき、同一ユーザであることがより正確に把握できること、第三者によって変更・削除されることがないことなどから、広告IDをキーに複数のアプリベンダーなどが持つオーディエンスデータを紐づけ、当該IDの情報量を増やし、高精度なターゲティング広告配信などに活用されている。
ITPなどによるCookieの利用規制が強まる中で、広告IDのニーズは高まっていたが、これまでオプトアウト方式がとられていた広告IDも、iOS14.5よりIDFAがオプトイン方式に変更されることになり、これまでのように取得することが困難になると想定されている。そのため、オプトインユーザ比率を高めるための施策検討が進められている。

リターゲティング & リマーケティング

自社サイトへの訪問や自社アプリをダウンロードした利用者に対して広告を配信し、再訪問・再利用を促進すること。「リターゲティング」「リマーケティング」のどちらも同様の意味であるが、 Google はリマーケティング、Facebookはリターゲティングといったようにメディアによって使い分けられている(Yahoo! Japan は「サイトリターゲティング」)。

メリットとしては、サイト訪問やアプリダウンロードは興味関心の表れとして、再訪問・再利用の可能性が高くコンバージョンにつながりやすいことが挙げられる。半面「しつこく追跡されている」と感じさせるデメリットもある。また、すでにサイト訪問の目的を果たし、再利用の可能性がない利用者にも配信し続ける無駄も指摘されている。

3rdパーティCookieの規制強化に伴い、「リターゲティング」「リマーケティング」広告でターゲットに対し最適な内容を表示させることがより難化するため、ほかの広告施策との併用や移行を検討する必要がある。

 

データプライバシー用語集(前編) - 法令編を読む

 


[1] TECH+ https://news.mynavi.jp/article/20210203-1685778/

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