INCUDATA Magazine_000515_DXレポートとは?これまでの変遷と最新版の概要をわかりやすく解説!
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DXレポートとは?これまでの変遷と最新版の概要をわかりやすく解説! -

目次

DXレポートとは、経済産業省が公開するDX(デジタルトランスフォーメーション)に関するレポートです。このレポートの目的は、日本の経済におけるDXの現状や動向などを詳細に分析し政策提言として公開することで、デジタル変革の推進や地域経済の発展を図ることだとされています。

公開された4つのレポートは以下の通りです。2018年に初版が公開されてから、これまでに4つのレポートが公開されています。最新版は2022年7月に公開された「DXレポート2.2」です。

 また、DXについてはデジタルガバナンス・コード3.0」という形でDX推進に関する指標が示されています。2024年9月の改訂を経て、2026年現在のビジネス環境において経営者が負うべき法的・倫理的責任の重みを反映した内容にアップデートしています。

表1:DXレポートの変遷と最新動向(2026年更新版)

レポート・指針名(時期) テーマと経営者の役割
1. DXレポート
(2018年9月)
ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開 レガシーシステムのブラックボックス化解消を提唱。システムの維持管理コストを削減し、攻めのIT投資へ転換する必要性を提示した。
2. DXレポート2
(2020年12月)
レガシー企業文化からの脱却と本質的なDXの推進 コロナ禍でのデジタル格差を教訓に、単なるIT導入ではなく、変化に迅速に対応できる「アジャイルな組織文化」への変革を経営者に求めた。
3. DXレポート2.1
(2021年8月)
デジタル産業の姿と新たな共創関係の構築 ユーザーとベンダーの「受発注関係」を超えた共創を提言。個社に閉じず、社会課題を解決する「デジタル産業」への移行期であることを示した。
4. DXレポート2.2
(2022年7月)
デジタル産業への変革に向けた具体的なアクション ITをコスト削減ではなく「収益向上」に活用。経営者自らが「デジタル産業宣言」を行い、価値観を外部へ発信して同志を集める行動を促した。
5. デジタルガバナンス・コード
(2025年-2026年)
デジタルガバナンス・コード3.0と経営者の新たな責務 2024年9月の改訂を経て、2026年現在のDX推進における最重要指針。生成AIの適正利用やサイバーセキュリティ対策が経営者の「直接的な責務」として明文化され、法的・倫理的観点からのガバナンス構築が不可欠となった。

これまでのDXレポートの変遷

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1.DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜(2018年9月7日公開)

シリーズの初版であるDXレポートは、2018年9月に経産省より公開されました。

DXレポートの要点は、「2025年の崖」に示されている通り日本企業はデジタル変革に乗り遅れることで大きな経済損失を被ってしまうと予測されており、現状抱えている課題に対して策を講じる必要性があるという点です。そして2030年の日本において実質GDPが130兆円以上の押上げを実現することを目標とし、そこまでのDXの方向性を示しています。

ここで、用語について解説します。

2025年の崖

過剰にブラックボックス化された既存システムの問題を解決し、業務自体の見直しを実行できるかが課題となっており、これを克服できない場合2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を、2025年の崖といいます。

システムのブラックボックス化

システムの複雑化や風化によって内部構造や動作原理を遡って解明できなくなることを指します。新しいシステムを構築しようにも外部ベンダへの過度な依存により構造を理解できず手をつけられないなど、DXを推進する上での障壁となります。

DXレポートで示された課題は、既存システムの課題と情報サービスの産業構造における課題に大別されます。既存システムについてはブラックボックス化をはじめとするデジタル負債の解消にリソースを要し、未だ技術的刷新に手をつけられていない点が課題とされています。

また、現状の産業構造においてはユーザ企業においてIT人材が不足していることや、それに付随しユーザ企業がベンダ企業に依存してしまうため十分に協調が取れない点が問題であるとされています。これは企業が解決すべき課題に対し、DX推進の足かせとなっています。

これらの課題を解消し2025年の崖を乗り越えるため、経済産業省は「DXシステムガイドライン」として対策案を定めました。また、デジタル負債の解消を実現するため、ユーザ企業自身がシステムを把握できるように「見える化」指標と診断スキームの構築を対応策として定めました。そして各企業が確実にDXを推進していくことを目指していきます。

2.DXレポート2 中間とりまとめ(2020年12月28日公開)

DXレポート2は、新型コロナの世界的流行など企業を取り巻く環境の不確実性が高まる中で、「2025年の崖」を乗り越えるため、その中間報告として2020年に公開されました。

2018年に初版が公開されてから経産省は日本のDXを加速していくため、企業内面への働きかけと市場環境整備による企業外面からの働きかけの両面から政策を展開してきました。しかし、2020年10月時点で9割以上の日本企業がDXに全く取り組めていない、あるいは散発的な実施に留まっているという状況が明らかになります。

コロナ禍においては、リモートワークの推進など環境の変化に対し迅速に対応できた企業とそうでない企業の間で明確にデジタル格差がつきました。DXレポート2では、2018年版において主張されていた「デジタル負債の解消」というテーマに加え、政策の方向性として「レガシー企業文化からの脱却」を提起し、急速な技術変化に対する対応力の重要性が説かれました。

その上で、企業が変化に対応しDXを加速させるための施策として、DX推進体制の整備やデジタルプラットフォームの形成、産業変革の加速など、企業が取り組むべき対応策を短期から中長期というスパンで定めて公開しました。

3.DXレポート2.1(2021年8月31日公開)

技術変化への対応力を重要視したDXレポート2が公開された翌年、DXレポート2.1が公開されました。

前回のDXレポート2においては、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿や、その中での企業の姿がどういったものであるかという点までは議論が進められていませんでした。その反省を踏まえて今回のレポートでは、目指すデジタル社会の姿やデジタル産業の姿を示し、施策の検討状況を公開しました。加えて、現状の日本が抱えている「ユーザ企業とベンダ企業の変革に向けたジレンマ」という問題について提起されました。

既存産業の業界構造では、ユーザ企業は委託による「コストの削減」を、ベンダ企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」という関係がなされています。一見win-winの関係ですが、多くの場合両者はデジタル時代において必要な能力を獲得できず、デジタル競争の敗者となる低位関係となってしまいます。デジタル変革を加速するためにはこの両者の関係を脱却することが必要とされます。

 

そして、新たに日本が目指すべきデジタル社会の姿を以下のように定義しています。

    • 社会課題の解決や新たな価値・顧客体験の提供が迅速になされる
    • グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
    • 資本の大小や中央・地方の区別なく価値創出に参画できる

この目指すべき姿に向け、施策の検討をさらに推進していき、その状況をまとめた続編として最新版のDXレポート2.2へとつながります。

 

INCUDATA Magazine_000515_DXレポートとは_DXレポートの変遷

4.DXレポート2.2(2022年7月13日公開)

DX レポート2.1の公開から約1年が経った2022年7月に、続編としてデジタル変革の施策の検討状況をまとめたDXレポート2.2が公開されました。次章にてさらに詳しく紹介していきます。

DXレポート2.2の概要と要点について

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2018年に最初のレポートが発行されてから4年の年月が経ち、「DX」という言葉が浸透した日本国内においても、DXの真の価値を理解した上でDX推進に取り組んでいる企業は決して多くはありません。

DXレポート2.2でも、企業が自社のDX進捗を申告した結果をみると、自己診断に取り組む企業は着実に増えており、かつ、先行企業(成熟度レベル 3 以上)の割合も増加し続けているものの、デジタル投資の内訳は依然として既存ビジネスの効率化に8割が充てられており、DX 推進に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていないと危惧しています。

 

図1:ユーザー企業におけるデジタル投資の割合

INCUDATA Magazine_000515_DXレポートとは_DXレポート2.2 ユーザー企業におけるデジタル投資の割合

(DXレポート2.2 概要版より抜粋)

 

そこでDXレポート2.2では、これまでのレポートで示された「目指すべきデジタル産業・企業の姿」の実現に向けた具体的な方向性やアクションが提示されました。

具体的なアクションは以下の3つです。

1.デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきである

DXに期待することは単なる業務改善ではなく、これまでにない新しいビジネスモデルの創造にあります。IT技術を駆使しビジネスに新たな付加価値を生み出し、変革を起こすことが企業に求められるアクションです。

 

2.DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示す

DXを進めるにあたって人材育成が重要であるという声がある一方、人材に対して具体的な学習機会が十分に担保されていないという現状があります。今後企業においては人材を評価・発掘するとともに、社内外のサービス・コンテンツ利用も含めて、活躍するチャンスを人材に付与していく取組みが求められます。

3.個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同士を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築する

DXをいち企業だけで成功させることは困難です。経営者は、DXに関する自らの価値観を外部に発信し、仲間を増やし、互いのダイナミックな変革につながる新しい関係を構築していくことが求められています。

 

そして、上述の3つのアクションを実現するための仕掛けとして「デジタル産業宣言」を策定しました。

 

図2:デジタル産業宣言

 

INCUDATA Magazine_000515_DXレポートとは_デジタル産業宣言

出典:DXレポート2.2 (概要) 経済産業省 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/covid-19_dgc/pdf/002_05_00.pdf

 
経営者はこのデジタル産業宣言を自らの宣言へと練り上げるべきだとしています。これは、意識を社内そして社会へと浸透させ、デジタル変革の実行へと向かっていくための行動指針にしていくために重要です。宣言の各項目は、 DX 推進の規範的企業に対する調査を元に5項目に集約されています。

また、経産省はこの宣言の実効性を向上させるため、「デジタルガバナンス・コード2.0」を取りまとめました。デジタルガバナンス・コード2.0では、企業のDXに関する自主的取り組みを促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった企業価値向上のために実践すべき事柄や経営者に求められる役割が示されています。

企業は最新のデジタルガバナンス・コードに定められる認定基準を満たすかどうか、IPA(情報処理推進機構)にチェックシートを申請することでDXを推進している事業者と認められる「DX認定」を取得することができます。こうした施策により、真の意味でのDXを後押ししているのです。

5. DXレポート最新動向〜「2025年の崖」の現在地と生成AIの衝撃〜(2025年〜2026年)

2018年の初版公開から数えて、いよいよ「2025年」の節目を迎えました。現在のDXは、単なる既存システムの刷新から、生成AIを前提とした「ビジネスモデルの再定義」へとフェーズが移行しています。

「2025年の崖」の現在地

当初予測された「最大12兆円の経済損失」というリスクに対し、多くの企業がクラウド移行やモダン化を果たしました。しかし、2026年現在では「システムを新しくしただけ」の企業と、「データを活用して収益化できた企業」の間で、二極化が加速しています。

生成AIによるDXの加速(AI-Readyな組織へ)

2023年以降の生成AI(Generative AI)の急速な普及により、DXレポート2.2で示された「収益向上への活用」が現実のものとなりました。最新の指針では、AIを安全かつ効果的に使いこなすための「AIガバナンス」の構築と、AIによる自動化を前提とした業務プロセスの再設計が求められています。

 

経済産業省は2025年から2026年にかけて、「デジタルガバナンス・コード3.0」への改訂や、生成AI時代のIT人材育成指標を強化しています。これからの企業に求められるのは、古いシステムを捨てる(守る)だけでなく、AIという強力なエンジンを搭載して自律的に変化し続ける「アジャイルな組織文化」の定着です。

また、レガシーシステムからの脱却においても、AIを活用したコード解析や自動移行ツールが登場したことで、ブラックボックス化の解消スピードが劇的に向上しています。かつての「2025年の崖」という恐怖は、AIを使いこなすことで「デジタル成長への跳躍台」へと変貌を遂げているのです。

まとめ

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DXレポートの初版より謳われてきた「2025年の崖」という期限を越え、日本企業は今、大きな変革期に立っています。

現状、多くの企業が「レガシー文化の脱却」を終え、生成AIという新たな武器を手に入れました。これからの「

真のDX」とは、単なるデジタル技術の導入ではなく、AIと人間が共生し、刻々と変わる市場環境に合わせて「自らを作り変え続ける能力」を持つことに他なりません。

 

DXレポートは、私たちが進むべき方向を示す羅針盤から、激変する世界で生き残るための「実行バイブル」へと進化しています。最新の動向を取り入れ、AI時代に即した具体的なアクションを実践することで、持続的な企業価値の向上へとつなげていきましょう。

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