INCUDATA Magazine_000208_SNS分析の実践手法 - 生活者や顧客の声に耳を傾ける

SNS分析の実践手法 - 生活者や顧客の声に耳を傾ける -

目次

SNS分析は、SNS上での生活者の対話や発言から、一般的なアンケート調査などでは得ることのできない生活者や顧客のニーズを割り出す手法です。本稿では、SNS分析の手法と、SNS分析の活用法についてご紹介いたします。

SNS分析が必要とされる理由

企業が、自社の製品・サービスに対する生活者の評価を把握する方法はいくつかあります。一つは自社の製品・サービスの売上実績です。実績が芳しくなければ、当該製品・サービスに対する生活者の評価が低いと判断できます。ただし、それだけではなぜ評価が低いかの理由はつかめず、製品・サービスの改革・改善の計画は立てられません。

その問題を解決するための方法の一つとして、リサーチ会社の市場調査データを入手し、自社の製品・サービスと同ジャンルの製品・サービスに対する市場ニーズを調べるという方法があります。これにより、市場ニーズと自社の製品・サービスの乖離を確認することが可能になります。

リサーチ会社の調査データはあくまでもマクロ的な市場のニーズを把握するためのもので、自社の製品・サービスに特化したデータではありません。市場調査データだけでは自社の製品・サービスを生活者がどのように評価しているかの細部を突き止めるのは困難です。

そこで必要とされるのが生活者に対するアンケート調査です。これによって自社の製品・サービスを生活者がどう評価し、どこに不満を抱いているかを細かく調べることができます。ところが、この手法にも課題があります。一つは、調査対象の母数が限定的になることです。また、アンケート項目に製品・サービスを提供する企業のバイアスがかかる点も問題です。

例えば、製品・サービスへの不満を尋ねる選択肢は「この点に不満を抱いているはずだ」という企業の想定に基づいてつくられるのが一般的ですが、生活者の不満が企業の想定とは異なる場合が間々あります。同様に自社の製品・サービスへの生活者の評価と想定とが異なるケースもあるほか、回答者が常に本音で答えるとは限らないという問題もあります。

SNS分析は、上述したような従来手法の足りない部分を補い、より正確で細かな生活者理解を促進するためのものです(図1

1SNS分析による生活者理解のイメージ

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SNS分析を行うことで、SNS上での生活者の包み隠さない発言・対話から、広範にわたる自社や自社の製品・サービスへの生活者の評価・要望を、リアルタイムに近いスピードで吸い上げることが可能になります。これにより、企業が想定していなかった新たな気づきが得られる可能性が広がるほか、自社の製品・サービスにかかわる市場のトレンドもつかめるようになり、かつ、生活者の本音を捉えたり、潜在顧客のニーズを捉えたりたりすることも容易になります。結果として、生活者に対するマーケティング施策の精度や的確性を増すことができます。

SNS分析の手法:テキストマイニング

SNS分析の一般的な手法としてかねてから使われてきたのはテキストマイニングです。

テキストマイニングとは、自然文で書かれたテキストの言語解析を行い、メタデータを生成して、人の発言を集計・検索・分析が可能なデータ(活用が可能なデータ)へと転換するというものです。形態素解析では、単語を品詞に分解して文法上の特徴を分析して単語間の係り受けを特定します。

例えば、SNS上でPCメーカー、A社(仮称)のタブレット「ZZ(仮称)」に対して以下のような発言があるとします。

14インチ画面とキーボードが気に入ったのでZZが欲しいと思う。ボディの頑丈さは大丈夫か?」

これらの文に対して、テキストマイニングを自動化するSNS分析ツールで形態素解析にかけると「ZZ」「キーボード」「気に入った」「欲しい」などの各文のワードが適切に関係づけられてメタデータが自動生成され、図2のようなかたちでデータが整理されます。

2SNS分析ツールによる形態要素解析のイメージ

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こうしたデータ処理により、A社は「ZZ」に関するSNS上でのさまざまな発言から、ZZに対する評価・疑問・要望などを構成部品のレベルにまで細分化してとらえることが可能になります。また、SNS分析用のツールを使用することで、キーワードの時系列分析、評価分析(ポジ・ネガ)など、さまざまなデータ分析が比較的簡単に行えるようになります。そして可視化された各特徴における原文(生活者の発言・対話)を分析者が読み込むことにより、内容を把握します。

SNS分析を効率化する話題の選び方

分析ツールの活用でSNS分析の効率性を高められますが、SNS分析における分析対象は広範です。そのため、目的に応じて分析対象を絞り込むことが重要となります。

例えば、SNS分析の目的を自社の製品の売上向上に向けた施策の模索とするならば、自社と競合他社に関する話題を軸にデータを取得して、製品・広告・キャンペーン・ブランドに関する生活者の気持ちを把握するようにするのが効率的といえます。

その際の絞り込みのイメージは、キーワードをもとにSNS上で展開されている全ての話題の中から自社や競合他社に関連する話題へと絞り込みをかけ、その枠内において、分析対象のデータをさらに絞っていくというものです(図3)。

図3:自社と競合他社に関する話題を軸にデータの収集・分析対象を絞り込む

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ここで仮に前出のA社がタブレット「ZZ」の売り上げ不振に悩まされていて打開策を練るためにSNS分析をしようとしているとしましょう。その際に、分析対象を「モバイルデバイス」の話題に絞り、競合メーカーと自社の製品・広告・キャンペーン・ブランドに対する生活者の声を収集して分析をかけるということです(図4)。ここで分析対象をタブレットだけではなく、タブレットの競合デバイスとなりうるノートPCについても発言を集めておくと「ZZ」の売り上げ不振の理由が多角的にとらえられる可能性が高まります。

図4:SNS分析におけるデータ取得対象範囲の例(PCメーカー、A社の場合)

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SNS分析のアプローチ

SNS分析は目的に応じてアプローチが異なり、適切に使い分けることも大切です。

例えば、テキストマイニングによるSNS分析の場合、大きく「仮説検証型」と「データドリブン型」の二つのアプローチがあり、それぞれの違いは表1に示すとおりです。この表にあるとおり、二つのアプローチには一長一短があり、それぞれの特性を理解した上で使い分けていくことが大切です。

1:「仮説検証型分析」と「データドリブン型分析」

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SNS分析の結果をマーケティング施策につなげたい場合にはまず、見込み客の購買プロセスを製品の機能・スペックという「モノ」を中心に訴求すべきフェーズと、価値体験という「コト」を訴求すべきフェーズとに区分けします。その上で「コト軸」のSNS分析と「モノ軸」のSNS分析を行い、特徴的な表現を探索して各フェーズにおける課題をみつけだすことが有効です(図5)。

図5:SNS分析の分析軸

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SNS分析の結果はさまざまな施策に生かすことができます。図6は、テキストマイニングによるSNS分析の結果(データ)を活用した施策の例です。

6SNS分析を活用した施策例

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この図のうち自社製品に対する評価を施策へつなげることが、前述した「モノ軸」での分析結果を施策につなげることになります。

例えば、前出のA社がタブレット「ZZ」に対する生活者の声を分析した結果、ボディの頑丈さを不安視する声が多くあることを突き止めたとします。その場合には、顧客接点対応の改善へと動き、自社のWebサイトを通じてボディの頑丈さを示す耐衝撃試験の結果や動画を掲出するなどの施策につなげることが有効といえます。

さらに、SNS分析で得られた顧客のデータと自社内に日々蓄積されていく製品・サービスの顧客データや顧客の購買行動データ、自社のWebサイト上での行動データなどを統合し、それぞれの相関を分析することで顧客への理解を一層深めることもできます。このとき、顧客データを統合するための基盤として、CDP Customer Data Platform)を採用することで、顧客の興味・関心やペルソナに合わせたコンテンツやメッセージの出し分けなどの施策をスピーディに展開することが可能になります。加えて、自社のWebサイトやWebサービスへの会員登録にソーシャルログインを適用することで顧客のSNSデータを収集するプロセスも効率化されます。

SNS分析は生活者や顧客に対する理解を深める有効な手法ですが、深めた理解を自社のブランドや製品・サービスに対するロイヤリティの向上や満足度の向上、ひいては売上向上に速やかに結びつけるにはSNSデータの収集から分析、活用に至るプロセスの全てが効率化されていることも大切です。今日では、そのためのツールの整備が進み、SNS上の生活者・顧客の声を施策の改革・改善につなげるための道具立ては整っています。SNS分析・活用やそのための仕組みづくりのノウハウや知識についても、足りていない部分は社外のリソースを活用することで補完することができます。

変化の時代の中で生活者や顧客の声を傾聴し、市場における自社の競争優位を確立する。

そのための一手としてあらためてSNS分析の始動を検討すべきタイミングにさしかかっているといえるのではないでしょうか。

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