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デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例に学ぶ - 推進するメリットや成功のコツ

DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術により人々の生活が豊かになるように変革することを指します。日本国内では、2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を発表したことにより取り組みが広がりました。

本記事では、日本国内や海外におけるデジタルトランスフォーメーション(以下DX)の推進事例や推進するメリット、七つのステップを紹介します。

企業がDXを求められる背景

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企業がDXの推進を求められる背景には、消費者行動や市場の変化があります。変化に対応するには古いシステムから脱却し、競争力を強化しなければなりません。ここでは、DXに取り組むべき三つの理由について詳しく解説します。

消費者行動の変化への対応

スマートフォンの普及や新型コロナウイルス感染症の影響で、消費者行動は大きく変化しました。ネットショップや動画配信といったEC市場の利用者は年々増加傾向で、消費者がデジタルに求める価値や期待は高まっています。また、消費者の志向が多様化し、これまでの一律的な広告やサービスではなく一人一人に寄り添ったものが求められるようになりました。

企業としてもデジタル技術を活用して顧客と向き合う必要性が増していると言えるでしょう。DXを推進することで、データをマーケティングや製品開発に生かし、多様化するニーズに対してより効率的なアプローチが可能になります。

競争力の強化

昨今のデジタル技術の進歩によってさまざまなビジネスが登場しています。また、いち早くDXに取り組む企業に市場を独占されることも考えられるでしょう。今後さらに新規参入が見込まれる市場で優位に立つには、今以上の競争力が求められます。

競争力を強化するには、組織の変革が必要です。慣れ親しんだビジネスモデルや評価制度に固執することなく、経営者のリーダーシップのもと、DXに取り組まなければなりません。

老朽化するシステムからの脱却

DX実現のアプローチには、老朽化したシステムの刷新や業務の効率化といった「守りのDX」と顧客データを活用し顧客満足度を向上する「攻めのDX」があります。

既存事業の効率化は比較的取り組みやすく、実際に推進している企業もあるでしょう。その際に導入したデジタル技術を駆使して収集したデータは、顧客理解を深め、新たな価値を創出する材料になります。守りにとどまらず、攻めに転じることで競争優位性がさらに向上するでしょう。

【日本国内】DXの推進事例

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多くの企業がデジタル変革の動向に注目する中、日本国内でDXに取り組む企業の推進事例を紹介します。

農業分野のデータ活用から取り組み始めた「クボタ」

株式会社クボタでは、農機具メーカーとして「食料・水・環境」の課題に対してデジタル技術を生かした製品やサービスを提供してきました。しかし、温暖化や人口増加といった問題が加速するにつれて、課題はさらに高度で複雑になっています。

そのような課題に対応するため、事業本部ごとのIT部門を統合した「G-ICT本部」の設置とマイクロソフトとの戦略的提携により、AIを活用した生産性向上を目指しています。戦略の一つとして挙げられるのが、クラウドサービス「Microsoft Azure」への移行です。将来的には、農機や建機の稼働情報、収穫した作物データをクラウドに集約して、課題を解決する製品開発を目標としています。

また、マイクロソフトとともに「AI Machine Learning Labプロジェクト」を立ち上げて、さらなるAI活用に取り組んでいます。堺製造所で実施されている、AIを使用した画像診断プログラムもその一つです。具体的には、修理依頼の内容を解析して、品質向上に役立つ情報をAIが短時間で提供するといった取り組みにつながります。

LINEアプリでマンション探しができる「長谷工コーポレーション」

株式会社長谷工コーポレーションは、最新のデジタル技術を駆使し今まで以上に高度な設計・建設手法を習得することを目指して、2020年4月に「DX推進室」を設置しました。

オープンラボ「HDTL(Haseko Digital Technology Lab)」では、他社と協業してデジタル技術を駆使した高度な設計・建設手法の研究に取り組んでいます。自社のマンション設計に関する知見や過去のデータにAI技術を組み合わせることで自動設計やAI設計を実現し、マンション設計業務の更なる効率化を図ることが可能になります。

顧客の新築分譲マンション探しをサポートするLINEアプリ「マンションFit(フィット)」もDXを推進するポイントの一つです。入力した居住地・勤務地・家族構成といった情報と過去の購入者データをもとにAIが分析し、ニーズに合ったマンションを紹介します。気になるマンションはそのまま自分の都合に合わせて見学予約が出来るなど、ストレスの少ないUIやCX提供にも力を入れています。ユーザが認識しきれていなかったニーズを提案し、その後の手続きまで最適化を図るという、ユーザにとってメリットを感じやすい顧客体験をデジタルの力で提供した好事例といえるでしょう。

DXを生かした商品開発を進める「ブリヂストン」

DX銘柄2021に2年連続で選定された株式会社ブリヂストンは、DXを推進する企業の代表と言えるでしょう。これまで進めてきたDXによって得たデータをフィードバックし、商品開発に生かしているのが強みです。

具体的な事例として、タイヤにセンサーを取り付けることで得たデータを分析し、路面状況や空気圧、摩擦といった情報を付加価値として提供しています。また、経営トップの直轄組織としてDXとソリューション事業戦略を担うBridgestone T&DPaaS戦略部門を設置したり、データサイエンティスト育成研修制度を開設したりといった積極的な組織体質変革への取り組みも高く評価されています。

また、鉱山車両用タイヤ「MasterCore」はデジタル技術によるシミュレーションにより顧客ごとに最適化したオペレーションが可能です。実際に使用したときのデータを収集することで、予測技術を確立し、効率や安全だけでなく環境にも配慮した製品が提供できます。

業務システムの8割以上を削減した「日清食品」

守りのDXから攻めのDXに転じた事例が日清食品ホールディングス株式会社です。以前から進めていた「レガシーシステム終了プロジェクト」により、費用や工数が膨大になっていた業務システムの8割以上を削減しました。

その後、業務の効率化を目指す取り組みとして力を入れたのが、紙の業務フローのデジタル化です。開発開始から半年でおよそ70件の紙業務を電子化した背景には、開発の内製化があります。情報システム部門の社員が自ら開発し、当事者である事業部門が開発に参加する環境を構築したことで実現しました。

システム開発をITベンダーに外注せずに内製化すれば、コストや時間を削減できるだけでなく、変化し続けるビジネス環境にスピーディーに対応できます。内製化が進んだ理由として挙げられるのは、ノーコード・ローコード開発のツールが使いやすくなった点です。自分たちでいち早くリプレースしたいと考える業務を内製化する後押しとなりました。

また、事業部門を開発に巻き込むことで、仕事の効率化に興味を持った社員が積極的にDX推進に参加するようになったのも大きなメリットです。開発したシステムの効果があれば評価されるため、さらに別の業務改革を進めるモチベーションにつながるというプラスの効果を生みました。

【海外】DXの推進事例

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日本貿易振興機構(JETRO)が2020年9月に発表した「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」によると、「DX戦略を既に推進中である」または「DX戦略の策定中である」と回答した企業が全体の7割に上ります。ここでは、日本国内よりもDXの推進が進んでいる海外の推進事例を紹介します。

電子決済サービスを提供している「Apple」

MacやiPhoneを代表するデジタル機器で有名なAppleは、自社が持つブランド力や技術力を生かして電子決済サービス「Apple Pay」を活用した金融分野への取り組みを推進しています。さらに、2019年にアメリカでサービスを開始した「Apple Card」は、クレジットカード業界に大きなデジタル変革をもたらしました。

これらは金融分野へのビジネス拡大を目指すだけの取り組みではありません。アメリカでは電子決済への不信感が強いことから、クレジットカードに対する不安を払拭し、Apple Payの普及をこれまで以上に加速させる狙いがあります。また、Appleが推進するプライバシー保護の立場を明らかにする対外的ツールとも言えるでしょう。

一般的なクレジットカードと異なりカード情報が記載されておらず、カード番号や有効期限が他者に分からないセキュアな仕様です。また、専用アプリとの連携が可能で、カード番号の確認や取引の追跡、支払いといった操作ができます。

DVDレンタルの常識を変えた「Netflix」

Netflixはインターネットと動画配信サービスを掛け合わせることにより、ビデオオンデマンド(VOD)を確立し、従来のDVDレンタル業界に大きなデジタル変革を起こしました。

特に、4度目のDXと言われているコンテンツ配信の分野では、見たいものを見たいときに見るというVODの価値を魅力的なものに作り変えました。コンテンツ制作に関しては、自社のビッグデータを活用した精密な視聴データ分析に基づいてテーマや監督、出演者を割り出し、新たなコンテンツ制作を企画します。これにより、制作陣の勘やスポンサーの要望に頼ることなく、視聴者が見たいと思えるコンテンツの配信が可能になりました。

また、1シーズン分13話を同時に配信するといった手法を用いるのもNetflixの特徴です。同時に配信することで「一気に見たい」「時間のあるときに少しずつ見たい」といったユーザごとに異なる志向に応えました。

DXを推進できている企業とは?

経済産業省が2020年12月に発表した「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」によると、9割以上の企業が「DXに全く取り組んでいない」「取り組み始めた段階」と答えています。

日本国内の多くの企業がDXを推進できていない理由の一つは、DXとはツールやクラウドによりデジタル化やIT化を目指すことを指すという誤解です。DXとはデータやデジタル技術を活用し、ビジネスにデジタル変革をもたらすことで、最初にDXによって成し遂げたい目標や世界観を示し、社内の体制や環境変化への対応が済んでいなければ推進できているとは言えません。

DXを進める7ステップ

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DXを推進するには、必要なプロセスを一つずつ着実にクリアすることがポイントです。ここでは、具体的な七つのステップを紹介します。

1.ビジョンの共有

DXの目標は、顧客視点で新たなビジネス価値を創出することです。データやデジタル技術を駆使して業務改善や効率化を目指すだけでは不十分と言えるでしょう。DXを推進する際には「顧客にどのような価値を提供したいのか」といったビジョンを明確にして、社内外で共有することが大切です。

DXならではのリアルタイム性やデータのオープンな流通といった価値創出の要素を、自社のユーザが求めているものや課題解決に生かすビジョンを描いていきます。

2. 危機感とビジョン実現の必要性の共有

DXの推進に変革は不可欠です。ビジネスモデルや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化といった長年慣れ親しんできたものを変革するため、抵抗されることも十分に考えられます。そのような中でDXを実現するには、DXの必要性を経営者自らが発信し、意識の変革を図る必要があるでしょう。

特に「なぜDXが必要なのか」「変革しないと何が起こるのか」といった具体的な危機感を経営層や現場が共有することで、当事者意識を持って行動することを目指します。

3.経営トップのコミットメント

ビジョンを実現するには、経営者は指示をすればよいわけではありません。リーダーシップを発揮して、さまざまな「仕組み」を明確化し実践する必要があります。

具体的な仕組みとして、組織整備や権限の委譲、人材や予算の配分、プロジェクトや人事の評価方法の見直しが必要です。これらを実践することで、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の変革が全社に定着するでしょう。また、自社が最優先すべきことを選択して優先順位を付けるのも経営者の役割です。

4. マインドセット・企業文化

DXが創出する価値は事前に想定できるとは限らないため、「仮説設定→実行→検証→仮説修正」のプロセスを短いスパンで繰り返すことが重要です。そのためには、失敗を恐れずに実行する文化を根付かせ、仕事のスピードに対応できる体制を作らなければなりません。例えば、適切な権限委譲によりスピーディーに仕事を回すといった事柄です。

また、DXの取り組みはすぐに結果が出るとは限らず、仕事の仕方が変わることで失敗が増えると、従来の制度では評価されないケースも出てくるかもしれません。このような意識の変化に対応した評価制度や意思決定、予算配分の仕組みがなければ、取り組みは長続きしないでしょう。

5. 推進・サポート体制

DXの推進には、事業部門やIT 部門といった各部門のノウハウを活用しながら、協力体制を構築することが重要です。専門組織を設置すると、短期で得られる成果のみを求めて、長期的なチャレンジをしない恐れがあります。社長直轄のDX推進部署では、それぞれの役割を明確にし、必要な権限や人員を与えましょう。

また、自社の人材やスキルだけでは足りない場合、外部と連携することでそれぞれが付加価値を得られるエコシステムを構築できます。例えば、DX推進プロジェクトに参画し推進を支援してきた経験が豊富な外部企業とパートナーシップを結ぶのもその一つです。

6. 人材育成・確保

DXの推進を担う人材の育成や確保も大切です。育成や採用を目指す人材のプロファイルや数値目標を明確にすることで、人材のミスマッチを防げます。必要な人材は「業務に精通した人材」と「技術に精通した人材」です。

特に、顧客や市場、業務内容をよく知る事業部門の社員を、DXを担う人材として育成する取り組みは重要といえるでしょう。また、業務と技術、それぞれに精通した人材が連携できる仕組みや体制を構築することも重要です。

7. 事業への落とし込み

DXは経営者がリーダーシップを取って進める取り組みです。現場を説得してDXの必要性を浸透させるだけでなく、現場レベルの業務プロセスや働き方に関する戦略やロードマップを明確にする必要があります。また、マーケティングや営業部門だけでなく、社内外のバリューチェーン全体を見渡すことも重要です。

改革の途中で成果が出ないときは、経営者自らが「なぜ今なのか」「改革にはどのような価値があるのか」「現状、何を得られたのか」を説明することでDXを推進する力になるでしょう。

企業の変革にDXが肝となる

日本国内だけでなく世界的にも推進が進んでいるDXは、これからの時代を生き抜く上で欠かせない変革と言えます。ここで紹介したさまざまな企業の事例からも見て取れるでしょう。

市場のニーズが流動的に変化する中、競合他社との競争力を獲得して企業を成長させるには、レガシー企業文化からの脱却を目指し、DXを推進して新たな価値をユーザに提供し続けていくことが肝心です。

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