INCUDATA Magazine_000926_WebマーケティングKPI完全解説:専門家が語る設計・運用・改善の全体像
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WebマーケティングKPI完全解説:専門家が語る設計・運用・改善の全体像 -

目次

Webマーケティング KPIを追っているのに、売上やLTVの改善に繋がらないと悩む担当者は多く、指標設計の迷いが施策全体のブレーキになる場合があります。

広告・ウェブサイト・SNS・メールなどチャネルが増えるほど、どの数字を優先しどの順番で改善すべきかを判断することが難しくなります。

本記事では、KGIとKSFから逆算してKPIを設計する考え方を軸に、集客・リード獲得・商談化・顧客維持といったプロセスごとの指標例や、ダッシュボードやレポーティングの実務ポイントを整理します。

現場でそのまま使える設計ステップと事例を通じて、数字を「追いかけるためのもの」から「成果を生み出すためのもの」へと変えるヒントを具体的に学べます。

WebマーケティングにおけるKPIの基本知識

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Webマーケティングの施策は成果が日々変動するため、明確な指標がなければ改善点を特定できないまま手探りの運用に陥ります。

特に現代のデジタル領域では、広告配信やウェブサイト、SNSなど複数のチャネルが並行して動くことが多く、それぞれの成果を俯瞰して管理する仕組みが欠かせません。

KPIは施策の方向性を可視化し、成果を裏付けながら改善へとつなげるための基準として機能します。指標を持たずに施策を進める状態は、コンパスを持たないで航海するようなものです。限られたリソースを有効活用するためにもKPIを定めることが重要です。

こうした基本的な役割を理解した上で、次にKPIがどのような概念に基づいて構築されるべきかを整理していきます。

KPI vs KGI vs KSF の理解



KPIを実践的に活用するためには、KGIとKSFとの関係を正しく理解することが重要になります。

用語 役割 内容
KGI (Key Goal Indicator) 最終ゴール 事業やプロジェクトの最終成果を示す指標。経営に直結する数値目標。 売上◯億円/契約数◯件/LTV◯円
KSF(Key Success Factor) 成果を生む要因 KGI達成のために満たすべき成功要因。成果につながる条件を定義。 リードの質向上/商談化率アップ/継続率の改善
KPI(Key Performance Indicator) 改善の判断軸 KSFを日々の業務に落とし込んだプロセス指標。進捗確認と改善判断の基準。 流入数/CVR/商談化率/継続率/UU数

この三つを階層構造としてとらえると、例えば、KGIは北極星のように最終地点を示し、KSFがそこへ到達するための戦略的なポイントを指し示し、KPIが日々の行動を管理する役割を果たします。

指標がこの構造に沿って設計されていると、施策の関連性が明確になり、数字を追いかける行為そのものに意味が生まれます。

次に、「KPIがうまく機能しない典型的なパターン」を説明します。

KPIが機能しない典型パターン

KPIが十分に活かされないケースには、いくつかの共通点があります。まず、指標が多すぎて優先順位が曖昧になり、関係者が状況を把握しきれなくなる場合です。

また、設定したKPIと目的やKGIとの関連性が弱い場合は、数値が改善しても事業成果に反映されにくく、効果測定が形骸化します。数値の変動だけを追いかけ、具体的な改善アクションに落とし込めない状態が続くこともよく見られます。

さらに、部門間でKPIの意図が共有されていない場合には、施策が部分最適に陥り、全体としての成果が得られなくなります。

これらの問題は、KGIやKSFを十分に言語化しないままKPI設定だけを進めた場合に発生しやすく、設計の初期段階で戦略と指標の整合性を確認することが重要です。

KPIが単なる数字の羅列にならないためには、目的、要因、行動の一貫性を常に保つ姿勢が求められます。

WebマーケティングのためのKPI設計ステップ

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KPIの設計は、思いついた指標を並べるのではなく、事業ゴールから順番に落とし込む構造的なプロセスとして考える必要があります。

Webマーケティングが具体的な成果につながる企業の多くは、この逆算型の考え方を徹底し、指標同士の因果関係を明確にしています。ここでは、その基本となるステップを順を追って整理します。

ステップ1:KGIを明確にする

最初のステップでは、事業やマーケティング全体の最終的な成果を数値として定義します。

売上、契約数、LTVといったKGIを明確にすると、マーケティング活動を評価する指標が明確になります。このステップが曖昧だと、チーム内で認識齟齬が生まれ、別々の方向へ進む施策が同時に存在してしまい、どれだけ個別の指標を追っても成果に結びつきにくくなります。

したがって、経営層や営業部など各部門と目標をすり合わせ、全員が同じ目的に向かえる状態を整えることが欠かせません。

KGIが定まると、その達成のために重要な要因を検討するステップへ進みます。

ステップ2:KSF(重要成功要因)を洗い出す

次のステップでは、KGIをどのように達成するかを考えるために、目標に影響する要因を丁寧に検討していきます。

顧客流入数、見込み顧客の質、商談化率、既存顧客の継続率など、成果に影響を与える要素をKGIごとに抽出して成功要因を整理します。この作業を行うことで、施策の改善ポイントが明確になりマーケティング施策を効率的に行うことができます。

KSFが設定できたら、いよいよそれを日々の運用に落とし込むための具体的な指標設計へと進みます。

ステップ3:KPIをチャネルごとに設定する

KSFで整理した成功要因をもとに、改善すべきプロセスをKPIとして数値化します。

顧客流入数、CVR、商談化率、顧客維持率など、施策が影響を及ぼす指標を特定し、それぞれに対して達成したい目標値を定めます。

さらに、KPIを広告、SEO、SNS、メールなどチャネル別に設定すると、各施策の役割が明確になり、マーケティングチーム全体で共通した判断軸を持つことができます。

KPIをKGI、KSFと階層的に設計することで、数値の改善がどのようにKGIへつながるのかを関連付けて理解することができます。

施策別・目的別で見るWebマーケティングのKPI設計例

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マーケティング施策はフェーズごとに役割が異なるため、どの段階を強化したいのかによって追うべき指標も変化します。集客、リード獲得、顧客維持といった一連のフェーズを切り分けて個別に施策を考えることで、施策の評価と改善が進めやすくなります。

ここではフェーズごとに目的とKPIを整理しながら、数値をどのように読み解くべきかを解説します。

集客・認知フェーズのKPI

このフェーズでは、どれだけ多くの見込み顧客に接触できているかが成果を左右します。

検索順位や自然検索からの流入数が増えると、関連キーワードにおける想起が高まり、サイト全体のセッション数やユニークユーザ数の増加につながります。

流入数が増加し、セッション数やユニークユーザ数が増加すると、後続のフェーズに送られる見込み顧客の母数も増加します。

また、施策ごとの顧客流入数を分析することで、各チャネル、施策のいずれにリソースを振り分けるべきかが明確になります。

リード/商談化フェーズのKPI

ユーザがサイトに訪れた後、どのような行動に移ったかを評価する代表的な指標は、CV数やCVRです。

資料請求や問合せの件数が増えると、見込み顧客の関心度が高まっていると考えられます。

また、MQLからSQLへの転換率を確認すると、どのリードが営業活動に適しているかが把握しやすくなり、マーケティングと営業の連携がスムーズになります。質の高いリードを増やす取り組みが強化されると、商談化までのプロセスが効率的に進むようになります。

リード獲得が軌道に乗ったあとは、獲得した顧客とどのように関係を築くかが事業成長に直結します。

*MQL (Marketing Qualified Lead):マーケティング活動を通じて、将来的に顧客になる可能性が高いと判断された見込み顧客のこと。

*SQL (Sales Qualified Lead):MQLの中から、営業部門が「すぐに商談に進める」と判断し、受け入れられた見込み顧客のこと。

顧客維持・拡大フェーズのKPI

顧客との関係を長期的に育てる段階では、リピート率や継続率が重要な指標です。

契約継続率や複数回購入率が増加すると、収益モデルが安定します。また、顧客単価やLTVの変化を追うと、クロスセルやアップセル施策の成果を定量的に判断できます。

既存顧客に対するサービス価値を高める視点を持つことで、マーケティング全体のROIが大幅に改善し、持続的な成長につながります。顧客との関係性維持の取組みを継続することは、顧客基盤の拡大にも貢献します。

関連記事:顧客満足度を高めるKPI設計ガイド|CX改善とLTV向上に直結する実践法

関連記事:LTVを最大化させるには? - おさえるべき四つの変数と成功のポイントを解説

KPI運用・モニタリング・改善における実践ポイント

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KPIを設定しても、その後の運用が伴わなければ数字は成果と結びつきません。適切なモニタリングと改善の仕組みを構築することで、指標は初めて機能し始めます。ここでは、実務で押さえておくべき運用フェーズの視点を整理し、継続的な成果につなげるためのポイントを解説します。

KPIが形になった後、その数字をどのように活用するかが次の焦点になります。

ダッシュボード構築と可視化設計

施策の全体像をとらえるためには、KPIツリーを基盤にしたダッシュボードを整備し、関係者が同じ情報をリアルタイムで把握できる環境をつくることが不可欠です。

この可視化によって、マーケティングや営業、プロダクトなど複数部門の動きが一つのストーリーとして理解できるようになり、施策の連動性が高まります。

さらに、ダッシュボードの構造が整理されていると、異常値の発見や改善機会の特定が速くなり、判断のスピードが事業成果に大きな影響を与えます。可視化の質が高まるほど、チームの意思決定が強くサポートされ、改善サイクルの速度も高まります。

可視化によって状況が共有できるようになると、次に必要なのはその数値を行動につなげる運用フローです。

レポーティングとアクション設計

レポートが数字の羅列で終わると、KPIの持つ意味が薄れてしまいます。実務で求められるのは、数値の変動に至った背景を分析し、次に何をすべきかを明確にする報告設計です。

例えばCVRが低下した場合には、トラフィックの質なのか、導線設計なのか、フォームの離脱なのかといった要因を深掘りし、関係者が適切なアクションをすぐに理解できる状態をつくることが重要です。

数字の変化と改善行動のつながりが整理されると、組織としての再現性が高まり、長期的に安定した改善が続けられるようになります。

レポートが行動につながる設計が整うと、次はその取り組みをどのタイミングで見直し、どの程度の頻度で改善を繰り返すかを検討する段階へ進みます。

継続改善(PDCA)とKPIの見直しタイミング

KPIは、市場環境や組織の戦略が変化するのに合わせて柔軟に見直す必要があります。

施策の効果が鈍化している時期や、新しいチャネルを追加したタイミングは特に再評価が求められます。現状の指標が事業の成長ステージと合っていない場合、KPIがチームの行動を正しく導けなくなり、改善の方向性がずれてしまいます。

定期的にPDCAを回しながら指標を再定義すると、常に事業に適したKPIへ最適化され、運用の精度が向上します。

こうした継続改善の仕組みが根付くと、KPIが組織の意思決定を支える強力な基盤になります。

KPI設計の実践事例を紹介

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ここからは実際の企業支援の事例を示し、KPI設計がビジネス成果にどのような影響を与えたかを紹介します。

TOAIの事例(データ活用によるジャンカラ/UTAOのカラオケ体験の強化)

インキュデータはTOAIに対してデータ整理・分析環境の刷新とKPIの再構築を支援し、広告経由ユーザの収益貢献度を可視化しました。これにより投資判断の精度が向上し、マーケティング全体の効率が大きく改善しました。

取り組みについて具体的に説明します。

カラオケ体験価値10倍を掲げるTOAIの挑戦

TOAIはカラオケ店舗「ジャンカラ」およびオンラインアプリ「UTAO」を展開する企業です。カラオケ体験の価値を10倍にするというビジョンのもと、アプリを中心としたオンライン型の顧客体験を強化しています。

その結果、予約の6割がアプリ経由になるなどオンライン経由の事業成長が進む一方で、膨大なオンラインデータを含む顧客データのサイロ化や分析環境の不足がデータ活用の課題となっていました。

データ統合とKPI再設計によるデータの可視化

インキュデータはまずアプリのログ解析とUI/UX改善を実施し、予約導線やメニュー表示の最適化によってコンバージョン率を向上させました。

続いてSnowflakeを中心としたデータ統合基盤を構築し、POSデータ、会員情報、アクセスログ、広告データ、歌唱データなどを統合、さらにMAツール「Braze」を導入し、顧客行動に応じたコミュニケーション運用を可能にしました。

これらデータ統合基盤の整備と並行してKPIツリーを再設計し、広告やアプリ施策の収益貢献度を定量的に判断できる状態を整えています。

スキルトランスファーによる自走体制の確立

MA運用やデータ分析についてもインキュデータが段階的にスキルトランスファーを行い、TOAIが自走できる体制を構築しました。

これにより、ターゲットに応じた施策の精度が向上し、ジャンカラアプリでは年間約5万組の予約増加という具体的な成果を実現しています。部門間の連携も強化され、スピード感ある意思決定が定着しつつあります。

SBI証券の事例(データ活用によるマーケティング変革)

インキュデータはSBI証券に対して、顧客データの統合と分析環境の整備、そしてマーケティングKPIの再設計を支援しました。これにより顧客行動の理解が深まり、PDCAサイクルによる施策改善の精度とスピードが向上しました。

特に、新規口座開設後の取引開始率は従来の約8倍へと改善しました。取り組みについて具体的に説明します。

顧客中心主義を支えるデータ活用への転換

国内株式個人取引シェアでトップクラスのSBI証券では、若年層や投資初心者の増加により、顧客ごとに最適な投資体験を提供する必要性が高まっていました。

そのためには、顧客の様々なデータを分析することで顧客理解を強化することが必要です。このような背景から、同社はデータドリブンなマーケティング体制の構築に本格的に着手しました。

データ統合とKPI再設計による可視化の向上

インキュデータは、Treasure Data CDPを基盤としたデータ統合を支援し、Web行動データと取引データを統合して可視化できる環境を構築しました。

データ統合基盤を構築することで顧客の行動を精度高く可視化できるようになり、セグメントごとの反応や改善ポイントが明確になりました。また、施策の評価軸となるKPI体系を再設計し、マーケティングのPDCAを継続的に回せる仕組みを整備しました。

自走型マーケティング体制の構築と成果

若手メンバーで構成された「SWATチーム」は、インキュデータの伴走支援を受けながらセグメント設計や施策実行のプロセスを習得し、社内でデータ活用マーケティングを自走できる体制を整えました。

その結果、行動データと顧客属性をもとに施策を展開した新規口座層では、取引開始率が従来の約8倍に向上し、ほかの商品訴求施策では10倍の成果が生まれています。

現在も顧客中心のOne to Oneマーケティングの高度化が進んでおり、データを基盤とした事業成長に取り組み続けています。

まとめ

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WebマーケティングのKPIは、事業ゴールから逆算し、施策の全体整合性を確保するための中心的な指標です。KGI、KSF、KPIの関係性を理解し、チャネルや目的に応じた適切な指標を設定することで、施策の実行・分析・改善のサイクルを効率的に回すことができます。

今後はマルチチャネル環境がさらに複雑化する中で、データ統合を前提としたKPI設計の重要性が一層高まります。加えて、生成AIによる分析の高度化が進むことで、KPIは単なる進捗管理指標から、戦略判断を支える中核的な意思決定基盤へと進化していくでしょう。

インキュデータは近年のマーケティング環境の変化に対応するため、データ基盤構築からKPI設計までを一貫して支援しています。AIを活用することでマーケティングの高度化を目指したい企業は、ぜひインキュデータへお気軽にご相談ください。

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