基本を知る!データ統合の手引き - DXを支えるデータ統合基盤の構築に向けて

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進には、顧客理解の深化が必要であり、そのためにはデータ統合基盤の構築が不可欠です──。こう説かれたときに「そもそもデータ統合とは何なのか」「なぜ、必要なのか」と疑問に思われる方もいらっしゃるはずです。そこで本稿では、データ統合の基礎的な理解を深めていただくための情報をご紹介いたします。

なぜ必要?データ統合

「データ統合」とは、さまざまな情報ソースやシステムにあるデータを、一つのデータベース(プラットフォーム)に集約すること(=まとめ上げること)を指しています。

例えば、POSシステムから取得した、ある店舗の売り上げデータがあるとしましょう。このデータに気象データを加えて、その日の天候や温湿度が店舗の売り上げにどう影響しているかを見てみたいと考えたとします。

POSシステムのデータには通常、気象データは含まれていないため、何らかの情報ソースから取得して売り上げデータに統合する必要が生じます。これをデータ統合といいます。

部門や部署ごと、販売チャネルごと、あるいは業務システムごとに管理されている顧客の属性情報(「氏名」「住所」「生年月日」「性別」など)や顧客の購買履歴を、顧客を軸に一つのプラットフォームにまとめ上げるのも、データ統合です。

ではなぜ、こうしたデータ統合が必要なのでしょうか──。

大きな理由の一つは、データ統合を行わないと、「どの顧客が、自社にとっての上得意なのか」など、顧客理解の基本ともいえるような情報を把握することすら困難になるためです。

eコマースサイトも含めて、多店舗を展開する小売業者のケースを想定してみましょう。例えば、この会社では、顧客情報の管理が店舗ごとに行われているとします。このような場合、本部のマーケティング部門では「自社の店舗でよく買い物をする顧客は誰なのか」「どういった層の顧客なのか」を突き止めるだけでも、店舗ごとに収集した顧客情報と購買履歴を集計した上で分析するという手間が発生します。また、全店舗で展開した販促キャンペーンによって顧客の購買行動がどう変化したかを捉えようとする際にも同じ手間が発生するはずです。

このように、店舗ごとに顧客情報を管理し、eコマースサイトも個別に顧客情報を管理していると、顧客の行動を俯瞰して捉えるのに手間と時間がかかり、顧客理解がなかなか進まずに接客や販促上の無駄や間違いも起こりやすくなります。

これと同様のことは、製品ブランドごとに顧客情報の管理をバラバラに行っているメーカーでも起こりえます。

この場合、ブランドを跨いで自社の製品に対する顧客の購買行動を把握し、どの顧客が自社にとっての優良顧客かを突き止めることが難しくなります。また、ある製品のブランドマネージャーが、他ブランドの製品に対する顧客の動きが全く見えず、クロスセルの機会を逸してしまうことも多くなるはずです。

データ統合がもたらすメリット

上記のように、部門・部署ごと、あるいは、販売チャネルごとに情報が散在して閉じた状態にあると、自社に対する顧客の動静という経営戦略や営業戦略、マーケティング戦略を考える上で非常に大切な事象が把握し難くなります。

そこで必要になるのが、データ統合です。

例えば、顧客を中心にして、部門・部署ごと、あるいは、販売チャネルごとにバラバラに管理されていたデータを一つにまとめていきます。これにより、自社にとっての優良顧客が誰かが即座に把握できるようになり、その顧客に特別なインセンティブを提供して囲い込みを図ることが可能になります。

製品の購買履歴だけではなく、自社のサイト上での行動データや、販促メールの配信といったマーケティング施策への反応データも、顧客のデータとしてまとめて管理することで、顧客が何をきっかけにどの製品を購入したのかが見えやすくなり、それをマーケティング施策の精緻化に役立てていくこともできます。

顧客の行動データを蓄積していくことで、自社のブランドに対する顧客のロイヤリティの変化を捉え、離脱の兆候があれば、離脱回避の一手を早期に講じることも可能になります。

データ統合を巡る課題とは

上記の通り、データ統合はさまざまなメリットを企業にもたらします。ただし、データ統合には相応の難しさもあります。

ここで仮に、販売チャネル(店舗)ごとに顧客情報(属性情報・購買履歴)がバラバラに管理されており、それらの統合化に踏み切ったとします。

このとき、顧客の属性情報・購買履歴を集約するだけであれば、データ統合にはそれほど手間がかからないと考えるのが普通です。ところが、そうではないことが往々にして起こります。

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よくあるケースの一つは、例えば、店舗ごとに顧客情報の入力ルールが統一されておらず、顧客の氏名の振り仮名が「カタカナ」の全角であったり、半角であったり、それらが混在していたりとバラつきがある場合です。

コンピュータは、文字の意味を解釈してそれが同一のデータであるかどうかを判断するわけではありません。そのため、同じ読みのフリガナであっても、全角と半角のカタカナは別々のデータとしてコンピュータに認識されてしまいます。

結果として、データ統合の際に、同一顧客のレコードが複数存在してしまうことが起こりえるのです。また、データを入力した担当者のミスによって、本来は「姓」「名」を別カラムに入力すべきところを、一つのカラムに姓名が入力されていたりすることもあるでしょう。そのような場合も、データ統合の基盤の上で同一顧客のレコードが2つできてしまう結果につながります。

店舗ごとにバラバラに管理されている顧客情報を統合する際には、どの顧客情報が最新かをしっかりと把握しておくことも大切です。

例えば、データ統合の際に、同姓同名でメールアドレスも同じであるにもかかわらず、住所が異なるレコードが2件見つかることがあります。その場合には、データ更新の日付が新しいほうの住所を「正」として、2件のレコードを統合する必要があります。

もっとも、2件のレコードにあるメールアドレスも異なっていたとしたらどうでしょうか。この場合、2件のレコードは、氏名こそ同姓同名ではあるものの、基本的には別人のデータかもしれません。ただし今日では、一人が複数のメールアドレスを持ち、使い分けているケースも想定されるため、慎重にデータ統合を進める必要があります。

顧客情報における購買履歴の持ち方が、部門・部署ごと、あるいは販売チャネル(店舗)ごとに異なるケースもあります。例えば、ある店舗では、顧客の購買履歴として月次の購買集計データだけをデータベースに持たせている一方で、ある店舗では顧客の購買履歴を個品に分けて管理しているといったものです。

データ統合に当たり、どちらのデータの持ち方を採用するかは、データ統合で構築した基盤をどう活用していくかの方針や戦略によりますが、どちらを採用するにせよ、データ統合には相応の手間がかかることになります。

以上のように、店舗や部門・部署といった各所に散在している顧客情報を統合する上では、留意すべきポイントが多くあります。したがって、統合の際には、各所で管理されている顧客情報の内容を吟味したうえで「名寄せ」の処理方針を決めたり、ETL(Extract, Transform, Load:抽出、変換、格納)ツールを適宜使用しながら、データ統合を慎重に行うことが必要になります。

B2B企業特有のデータ統合の課題

法人向けのビジネスを展開する企業(以下、B2B企業と呼ぶ)が、各部門・部署でバラバラに管理されている顧客情報を統合する場合には、顧客の基本情報として管理すべき項目が多くなり、データ統合の工数がより増える可能性があります。

B2Bビジネスを展開する会社にとって、顧客は企業です。したがって、顧客の基本情報として「企業名」「業種」「従業員数(規模)」「売上高」「所在地」などを管理しなければなりません。一方で、マーケティングの施策を打つ相手は、その企業で働く個人ですので、その個人の「所属部署」「役職」「メールアドレス」なども顧客の基本情報として管理することが必要になります。

一般に、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)などで管理されているB2B企業の顧客の基本情報には、企業名と担当者に関する情報はあっても、その企業の従業員数や業種、売上高などのデータがない場合があります。

B2B企業としては、自社の製品/サービスが、どういった業種・規模の企業に主として購入されているかといった情報も重要なデータとなります。そこで、データの統合時にはそれらの情報も他の情報ソースから抽出して入れ込む必要が生じるわけです。

顧客の購買履歴やマーケティング施策に対する反応を、顧客の基本情報とどのように紐づけるのが適切かも検討する必要があります。経営の視点から見れば、購買履歴と会社名が紐づいていれば、それでいいといえます。ところが、現場の事業部門や担当営業にすれば、購買履歴は、顧客企業の事業部門や個人に紐づいていたほうが、データとしての使い勝手は良くなり、分析もしやすくなります。

同様にマーケティング施策への反応データも、個人に紐づけてデータ統合を図ったほうが、のちの使い勝手は良くなると思われます。というのも、企業内個人は部署や職務が変更になることが多く、人の配置転換によってそれまで有効だったマーケティング施策が利かなくなったり、その逆が起こったりする可能性があるからです。B2Bマーケティングにおいても、あくまでも対象は企業内個人であり、個人と施策とを紐づけて管理することが大切というわけです。

B2Bマーケティングの施策を打つ際に、一定の職位(=権限)によってターゲットをセグメント分けしたいというニーズが発生する場合があります。

そこで必要になるのが、名刺情報の役職名から、その人の職位(権限)を割り出して、「経営者・役員」「事業部門長職」「部長職」「課長職」「一般職」といったかたちで区分けしていく作業です。経営者・役員といった役職名にはどの企業にも共通性があるので、区分けは容易といえます。しかし、それ以外の役職名と権限との相関は、企業ごとに異なることがよくあります。そのため、5段階程度の職位によって、企業内個人を切り分けるのは意外と難しいといえます。実際、データ統合によって構築した基盤に、展示会などで集めた名刺情報を統合しようとすると、どういった職名をどの職位にマッピングすればいいかで迷うことがよくあります。

顧客データ統合でCDPがなぜ重宝されるのか

データ統合の基盤には、自社のWebサイトでの顧客の行動履歴を統合したり、SNSでの発言を統合したり、販促メールへの反応を統合したりすることが必要になる場合があり、その効率化が求められることがよくあります。

データ統合の基盤は、データを活用したり、分析したりすることを目的に構築されます。そのため、外部のBI(Business Intelligence)ツールやMA(Marketing Automation)、CRMとのデータ連携を図ることも必要とされます。そうしたニーズを充足するデータ統合の基盤として便利に使われているのが、CDP(Customer Data Platform)です。

CDPは、顧客データの統合化と格納に特化したデータ基盤として開発されたもので、POSデータ(購買履歴データ)やCRMのデータ(顧客情報)、Webサイト上での顧客の行動データ(Webログ)など、顧客に関するさまざまなデータを取り込み、統合化し、管理する機能を標準的に備えています。また、外部のMAツールやCRM、BIツールや、広告配信のDSPなどとの連携ツールを備えているのが一般的です。

このような利便性から、CDPを社内に散在する顧客データを統合するための仕組みとして役立てている企業は多くあります。

例えば、多店舗を展開する、あるアパレル小売では、それまで店舗ごとにバラバラに管理されていた顧客情報を、CDPを使って一つに統合しました。これにより、全ての店舗で会員制度やポイント制度を共通化させたほか、統合化データをMAツールと連携させ、一元管理された顧客データのもとで、メールマガジンやターゲティングメールの配信といったメールマーケティングを展開したり、顧客の購買履歴に基づくアフターフォロー施策を展開したりしています(図1)。

この事例の詳細は、本サイトのダウンロード資料『顧客理解を深める3つのCDP活用術』でご紹介しているので、そちらも併せて参考にしてください。

▼『顧客理解を深める3つのCDP活用術』を読む▼

図1:アパレル小売による顧客情報の統合化イメージ

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DXを支えるデータ統合基盤の実現に向けて

本稿の導入部分でも触れた通り、今日では、DXを推進するためのプラットフォームとして、データ統合基盤が使われ始めています。DXは顧客データを起点に事業そのものを変革し、最終的には新しい顧客価値を創造する取り組みです。その取り組みにおいては、顧客の満足度を高めるために業務のあり方を変えて効率化し、マーケティングを高度化することで、顧客体験を良質化することが重要になります。

こうした取り組みを推進するには、DXに対する企業のビジョンや戦略に沿って、顧客のデータを分析し、活用するための基盤が必要とされます。それが、データ統合基盤であり、その基盤を構築するためのプラットフォームとして、広く使われ始めているのがCDPです(図2)。

上述したように、データ統合には難しさもあり、DXのビジョンや戦略と合致する基盤を適切に設計して構築するには、相応のスキルやノウハウが必要ですし、手間もかかります。CDPを使用すれば、そうした手間を少なく抑えることが可能になります。そして何よりも、データ統合には、かけた労力を大きく上回る効果を手に入れられるという魅力があります。データ統合、ならびにCDPにご興味を抱いた方は、ぜひ、先に示したダウンロード資料をご一読ください。

▼『顧客理解を深める3つのCDP活用術』を読む▼

図2:CDPによるデータ統合基盤のイメージ

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