INCUDATA Magazine_000367_DX推進指標を使うと何ができるのか

DX推進指標を使うと何ができるのか - 指標の意味や活用法を分かりやすく解説

DXを推進するには、デジタル化をはじめとする業務改善、社内体制やシステムの整備など取り組むべきことが膨大にあります。全社的な進捗状況を把握するのは簡単ではないでしょう。

そこでこの記事では、DXの取り組み状況を把握するガイドラインである「DX推進指標」について詳しく解説します。

DX推進指標とは?

INCUDATA Magazine_000363_DX推進指標_画像02

DX推進指標」は、企業がDXに対する取り組み状況を自己診断するガイドラインとして、経済産業省が作成したものです。ここでは、DX推進指標の概要や目的、指標が作られた背景について解説します。

DX推進レベルを経営トップが自己診断するための指標

DX推進指標の大きな特徴は、現場レベルでの診断を経営層が確認するのではなく、経営トップが中心となって回答(診断)することに主眼を置いて作られていることです。

これは、経営者が中心となって回答することにより、DXは自らが主体的に関わる全社的な課題であることを再認識させ、その後の取り組みを加速する狙いがあるためです。

DX推進指標が作られた背景

DX推進指標」が作成された大きな理由として、世界レベルと比較して日本企業のDX対応は立ち遅れていることが挙げられます。

経済産業省は2018年にまとめた「DXレポート」の中で、「デジタル部門を設置するなどの取り組みが見られるものの、実際のビジネス変革にはつながっていないのが多くの企業の現状である」旨の分析をしています。さらに、企業のDX対応が進まなければ、「2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性」があることも指摘しています。

こうした状況に危機感を強めた経済産業省は、経営トップの意識向上を図る狙いで、自己診断ができる「DX推進指標」を作成したのです。

DX推進指標の構成 

DXとは、デジタル技術とデータ活用をベースにしてビジネスモデルや組織風土の変革を図ることです。このためDX推進指標では診断対象が、「DX推進のための経営のあり方・仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の二つに大きく分かれており、それぞれに成熟度を六段階で評価する「定性指標」と数値に基づく「定量指標」があります。

定性指標については、個人・部門に担当を振り分けるのではなく、関係者の合議により回答することが求められています。これは議論を通じて自社の状況に対する認識を共有し、今後の方向性を明確にしていくことを意図しているためです。そのためには、関係者が独自に自己診断した上で、立場による認識の違いを踏まえて議論するのも有効でしょう。

また、定量指標については、自社のDX推進のベンチマークとなる指標を独自に選定することとされています。

 

表1:DX 推進指標の構成

INCUDATA Magazine_000367_DX推進指標_図01

出典:『DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2020 年版)』|独立行政法人情報処理推進機構(IPA): https://www.ipa.go.jp/files/000091505.pdf

 

INCUDATA Magazine_000363_DX推進指標_画像03

DX推進のための経営のあり方・仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」それぞれについて、経済産業省が作成した「『DX推進指標』とそのガイダンス」に基づいて診断項目の位置付けなどを解説します。自己診断する際のチェックポイントも紹介しますので、参考にしてください。

DX推進のための経営のあり方、仕組み」の指標

定性指標には四つの中分類があり、「ビジョン」と「経営トップのコミットメント」は経営リーダーシップの在り様、「仕組み」は組織体制の整備、「事業への落とし込み」は事業レベルでの推進状況を診断するものといえます。

定量指標は二つに分かれており、「DXによる競争力強化の到達度合い」はDXによる経営上の変化、「DXの取組状況」はDXの浸透度合いを数値により診断するものです。

以下では、定性指標のうち、「経営者が自ら回答することが望ましい」とされている項目について診断する際のチェックポイントを紹介しますので、参考にしてください。

 

表2:DX推進の枠組み(定性指標)

 

指標

診断する際のチェックポイント

1 ビジョンの共有

DXにより顧客視点でどのような価値創出をするかというビジョンを社内外で共有している

2 危機感とビジョン実現の必要性の共有

デジタル化による破壊的なイノベーションに対する危機感および対応策としてのビジョン実現の必要性を共有している

3 経営トップのコミットメント

ビジョンの実現に向け、組織体制・リソースの配分・人事評価などの仕組みを経営トップ主導で明確化し、実践している

4 マインドセット、企業文化

失敗から学び挑戦を繰り返すプロセスをスピーディーに実行し、継続する仕組みを構築している

5 推進・サポート体制

DX推進をミッションとする部署や人員・役割が明確になっており、必要な権限が与えられている

6 人材育成・確保

DX推進に必要な人材の育成・確保のための取り組みを行っている

7 事業への落とし込み

ビジネスモデルや企業文化の変革に対して、経営者自らがリーダーシップを発揮して取り組んでいる

 

DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の指標

定性指標には2つの中分類があり、「ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築」はDX実現に向けたITシステムの対応状況、「ガバナンス・体制」はそのために必要な組織体制が整備されているかを診断するものといえます。

定量指標は、主にDX実現に向けたITシステムの対応状況を数値により客観的に診断するものです。

以下では、定性指標のうち、「経営者が自ら回答することが望ましい」とされている項目について診断する際のチェックポイントを紹介しますので、参考にしてください。

 

図3:ITシステム構築の枠組み (定性指標)

 

指標

診断する際のチェックポイント・留意点など

8 ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築

ビジョン実現に必要な既存システムの見直し内容を認識し、対応策を講じている

9 ガバナンス・体制

ビジョンの実現に向けて、価値創出につながる領域への資金・人材の重点配分を行っている

 

自己診断する際のポイント

INCUDATA Magazine_000363_DX推進指標_画像04

「定性指標」の評価は、個人の主観的な判断になりがちです。基準が共有されていないと議論が前向きに進みません。「定量指標」については、計測しやすさを優先すると本来の目的からずれた指標を選択してしまう可能性があります。ここでは、このような問題が生じないようにするためのポイントを解説します。

定性指標:成熟度レベルの判定

経済産業省は「『DX 推進指標』とそのガイダンス」の中で、「成熟度レベルの基本的な考え方」を示しています。ただし、これを基準にしても判断にバラつきが出ることは避けられません。このため、判断した根拠とそのエビデンスを示すことが望ましいとしています。

根拠やエビデンスを示すことは、人事異動などで担当者が変わったり、外部の診断サービスを利用したりする場合に、過去の判断基準が分かるため診断の連続性が保てるというメリットもあります。

エビデンスの例としては、経営指標や予算・人員配分の推移、新旧の組織図などが挙げられます。

  

図4:DX推進成熟度レベルの基本的な考え方 

INCUDATA Magazine_000367_DX推進指標_図02

 

 

定量指標:用いる指標は自社で選択

定量指標は、「DX推進の取組状況」および「ITシステム構築の取組状況」を把握するために用いるもので、DXの目的や状況に応じて企業が独自に選択します。

DX推進の取組状況」を示す数値はさまざまなものが考えられますが、DXによって目指す経営上の変革に関連するものを選ぶのが基本です。また、「ITシステム構築の取組状況」では、自社のDX実現に必要なシステムの構築状況を示す数値であることを定義付けした上で指標を選択します。

どちらの場合も診断のために単年の数値を計測するのではなく、1年後・3年後・5年後といった形で目標値を設定して、継続的な計測により進捗管理を行い、適宜必要なアクションにつなげることが大切です。

自己診断結果の活用法

INCUDATA Magazine_000363_DX推進指標_画像05

DX推進指標」は共通的な指標のため、自己診断結果を他社と比較・検討することで課題が明確になるでしょう。先行企業の事例などを参考に、課題となった部分を改善すれば自社のDXへの取り組みをペースアップさせることが可能です。

ベンチマークとの比較でDX推進状況を確認する

DX推進指標」の自己診断結果を集約している独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、定性指標に関する分析レポートを公表しています。レポートでは、企業規模別の特徴や経年変化などについて分析しているため、これらをベンチマークとして利用することで、自社のDX推進状況を客観的に確認できます。

ちなみに2020年版のレポートによると、全企業におけるすべての指標の平均値は、現在値(現時点における成熟度レベル)が1.60、目標値(3年後に達成を目指す成熟度レベル)が3.21となっています。現在値がレベル2(一部での戦略的な実施)にも達していないことからは、日本企業の立ち遅れた現状が浮かび上がります。

自社の課題を確認し改策を講じる

ベンチマークとの比較により、自社のどの部分が立ち遅れているのか、三年後を想定した場合にどのように改善していく必要があるのかが具体的に分かります。

改善策を講じるには、先行する企業を参考にするのもひとつの方法ですが、日本では事例そのものがあまりありません。安易に他社の模倣をするのではなく、立ち遅れの原因をきちんと分析し、自社に必要な改善策を考えてDXを推進していくことが、最終的な「競争優位」の獲得にもつながっていきます。

DXを成功に導くポイント

INCUDATA Magazine_000363_DX推進指標_画像06

DXにより達成すべき目標は企業ごとに異なり、そのための方法や道筋もひとつとは限りません。しかし、解決していかなければDX実現の障害となるような課題は、多くの日本企業に共通して存在しています。中でも重要度が高いと考えられるポイントをつ取り上げ解説しますので、参考にしてください。

具体的な目的・ビジョンを策定する

DXとは、社会のデジタル化に伴う市場など環境の劇的な変化や経営・技術のイノベーションを前提に、ビジネスや組織風土をダイナミックに変革していくことです。目の前にある日常的な業務の現状からその姿を見通すのが難しい場合も多く、現場レベルでは業務やワークフローのデジタル化だけを追い求めてしまう可能性があります。

このような問題が発生を防ぐためには、経営トップが主体となって具体的な目標・ビジョンを策定することが必要です。併せて、部署単位などでロードマップを明確にしておけば、現場にも目標・ビジョンをスムーズに浸透させられるでしょう。

老朽化・複雑化したシステムの刷新

日本企業の多くが、老朽化・複雑化した「レガシーシステム」を使い続けています。その大きな理由は、部門単位などでカスタマイズしたシステムを構築しており、簡単には代替できないためです。加えて、全社的にシステムを刷新するのは費用・期間の両面で大きな負担となることも挙げられます。

しかし、レガシーシステムはDXのポイントとなるスムーズなデータ連携が難しい上、動画や画像などの膨大なデータ処理に対応できないことが少なくありません。レガシーシステムを使い続けることのデメリットは明白なため、短期的な負担が大きくなったとしても、経営トップがリーダーシップを発揮してシステムを刷新しなければなりません。

DX推進体制の整備と人材の確保

DXは、全社規模のダイナミックな変革を目標とするため、業務の負担やポジションの問題から、既存部署が中心的な役割を担うのは難しい場合も考えられます。その場合には、役割や権限を明確にした上で、全社の進捗状況を集約し、状況に応じて部門への働きかけができる体制を整えることが必要でしょう。

また、日本ではデジタル技術やそのビジネスへの活用に精通した人材は大きく不足しているのが実情です。中長期的な運用を考えれば社内で育成することも必要ですが、DXへの取り組みをスムーズに進めるためには、新規の人材獲得や外部パートナーとの連携が不可欠です。

DX推進に向けて外部サービスを活用しよう

DX推進指標」による自己診断は、自社の現状を確認する上で有効ですが、健康診断にたとえれば問診票レベルともいえるものです。したがって、精密検査や人間ドックに相当する外部の専門家による診断を受ければ、より正確に現状を把握できます。

DX推進に向けた的確なアクションを取るためには、正確な現状把握が欠かせません。また、実績のある外部サービス事業者は、課題解決に必要なアイデアも豊富に持っています。デジタル人材が不足している企業が多い中、DX推進に向けた有用なパートナーとして外部サービスを活用していきましょう。

CONTACT お問い合わせ

弊社のサービスに関するお問い合わせや、取材・メディア掲載についてはこちら。

弊社のプロダクト・サービスに関する資料、各種調査結果、ホワイトペーパーなどを無料公開。