INCUDATA Magazine_000367_DX推進指標とは?指標の意味や自己診断結果の活用方法などを分かりやすく解説

DX推進指標とは?指標の意味や自己診断結果の活用方法などを分かりやすく解説 -

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更新日:2023年4月3日

 

DXがあらゆるシーンで求められていますが、多くの企業ではなかなか進められていないのが現状です。

DX推進には、自社の現状と課題を全社的に把握することが求められます。そこで役立つのが、経済産業省が作成した「DX推進指標」です。DX推進指標を活用することで、DXの取り組み状況を自己診断できるはずです。

そこでこの記事では、DX推進指標の意味や指標の内容を解説した上で、自己診断時の注意点についても詳しく解説します。

DX推進指標とは

INCUDATA Magazine_000367_DX推進指標とは?指標の意味や自己診断結果の活用方法などを分かりやすく解説_DX推進指標とは?

ここでは、DX推進指標の基礎知識として、以下の2つを解説します。

    • 「DX 推進指標」とそのガイダンス
    • DX推進指標が作られた背景

それでは、1つずつ解説します。

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「DX 推進指標」とそのガイダンス

DX推進指標とは、経済産業省作成の「企業がDXに対する取り組み状況を自己診断するガイドライン」で定められた、DXへの取り組みを自己診断するための指標です。現場レベルでの診断を経営層が確認するのではなく、経営トップが回答(診断)することに主眼が置かれています。経営者が中心となって回答することにより、DXは自らが主体的に関わる全社的な課題であることを再認識してもらう狙いがあります。

DX推進指標が作られた背景

DX推進指標が作られた背景には、世界的に見ると日本企業のDX推進が遅れていることがあります。DXの推進には、ITシステムとビジネスの両方を理解し、企業全体でDXに取り組んでいく必要があります。しかし、レガシーシステムやビジネスモデルの変革に対する抵抗感により、DXの推進が進んでいない企業も少なくありません。また、経営者とステークホルダーが十分にDXへの認識を共有できておらず、DX推進の支障になっている事例もあります。

さらに、2021年の情報通信白書では約6割の企業が「DXは未実施で実施予定もなし」と回答しました。この状況に経済産業省は危機感を強め、経営トップにDXへの意識を向上してもらうように、自己診断できる「DX推進指標」を作成したのです。

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DX推進指標を構成する指標について解説

MZ_000367_01.jpgここでは、DX推進指標を構成する指標について、以下の4つを解説します。

    • 定性指標と定量指標
    • 「DX推進のための経営のあり方、仕組み」
    • 「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」
    • 先行企業やDX認定企業の特徴

それでは、1つずつ解説します。

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定性指標と定量指標

DX推進指標では、診断対象が以下の2つに大別されます。

    • DX推進のための経営のあり方・仕組み
    • DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

また、両者を診断する指標には、定性指標と定量指標が存在します。内容はそれぞれ以下の表に示すとおりです。

 

定性指標
  • 成熟度を六段階で評価
  • 議論を通じて認識共有を図るべく、関係者の合議で回答
  • 関係者が事前に自己診断し、それを元に関係者が議論することも有効
定量指標
  • 成熟度を数値データで評価
  • 自社のDX推進において、ベンチマーク指標を独自に選定

「DX推進のための経営のあり方、仕組み」

定性指標は、大きく分けて4つに分類されます。

 

定性指標 内容
ビジョン 経営リーダーシップの在り様を診断
経営トップのコミットメント
仕組み 組織体制の整備状況を診断
事業への落とし込み 事業レベルでの推進状況を診断

 

また、定量目標は大きく分けて2つに分類されます。

 

定量指標 内容
DXによる競争力強化の到達度合い DXによる経営上の変化を診断
DXの取組状況 DXの浸透度合いを診断

なお、以下では定性指標のうち、「経営者が自ら回答することが望ましい」とされている項目について、診断する際のチェックポイントを紹介しますので、参考にしてください。

 

指標 診断する際のチェックポイント
ビジョンの共有 DXにより顧客視点でどのような価値創出をするかというビジョンを社内外で共有している
危機感とビジョン実現の必要性の共有 デジタル化による破壊的なイノベーションに対する危機感および対応策としてのビジョン実現の必要性を共有している
経営トップのコミットメント ビジョンの実現に向け、組織体制・リソースの配分・人事評価などの仕組みを経営トップ主導で明確化し、実践している
マインドセット、企業文化 失敗から学び挑戦を繰り返すプロセスをスピーディーに実行し、継続する仕組みを構築している
推進・サポート体制 DX推進をミッションとする部署や人員・役割が明確になっており、必要な権限が与えられている

人材育成・確保
DX推進に必要な人材の育成・確保のための取り組みを行っている
事業への落とし込み ビジネスモデルや企業文化の変革に対して、経営者自らがリーダーシップを発揮して取り組んでいる

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「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」

定性指標は、大きくわけると下表の中分類で分けられます。チェックポイント例は、そのうち「経営者が自ら回答することが望ましい」とされている項目のチェックポイントです。定量指標は、主にDX実現に係るITシステム対応状況を数値的に診断する指標です。

 

指標 診断する際のチェックポイント・留意点など

ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築 DX実現に向けたITシステムの対応状況
(チェックポイント例)
ビジョン実現に必要な既存システムの見直し内容を認識し、対応策を講じている
ガバナンス・体制 DX実現に必要な組織体制の整備状況(チェックポイント例)
ビジョンの実現に向けて、価値創出につながる領域への資金・人材の重点配分を行っている

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先行企業やDX認定企業の特徴

IPAのDX推進指標自己診断結果分析レポートでは、すでに全指標の平均値がレベル3で、「DXを全社的取り組みとして行っている」企業(先行企業)の特徴を解説しています。また、国の「DX認定制度」で認定された企業(DX認定企業)についても、特徴を解説しています。それらの企業と自社を比較すると、より自社のDXに関わる課題が明確になるのではないでしょうか。

同レポートでは、先行企業と非先行企業、DX認定企業とで現在値(現時点での成熟度レベル)を比較しています。それによると、先行企業やDX認定企業では、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築(定性)」より、「DX推進のための経営のあり方・仕組み(定性)」の値が高い結果になりました。一方非先行企業では、その反対の傾向が見られました。ここから、先行企業やDX認定企業では、ITシステム以上に経営視点での取り組みを重視していると考えられます。

 

先行企業 DX認定企業 非先行企業
DX推進のための経営のあり方・仕組み(定性) 3.51 2.66 1.56
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築(定性) 3.46 2.61 1.68

DX推進指標で自己診断する際の注目点

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ここでは、DX推進指標で自己診断する際の注目すべき点として、以下の2つを解説します。

    • 定性指標
    • 定量指標

それでは、1つずつ解説します。

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定性指標

定性指標を用いて判断する際には、バラつきを抑えるために判断した根拠とそのエビデンスを示すことが望ましいとされています。外部のDX推進診断サービスを用いる際にも、過去の判断基準がわかれば診断の連続性を担保できるでしょう。エビデンスとしては、経営指標や予算・人員配分の推移、新旧の組織図などを活用できます。

定量指標

定量指標は、「DX推進の取組状況」や「ITシステム構築の取組状況」を把握するため、DXの目的や状況に応じ企業が独自に選択するものです。基本的には、DXによりどのような経営上の変革を目指すか考え、それに関連するものを選びましょう。また、1年後、3年後、5年後など、将来の目標値を設定し、継続的に進捗管理を行っていくことや、適宜必要なアクションにつなげることも大切です。

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DX推進指標の自己診断結果はどう活用する?

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ここでは、DX推進指標の自己診断結果の活用方法について、以下の2つを解説します。

    • ベンチマークと比較
    • 自社の課題を抽出

それでは、1つずつ解説します。

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ベンチマークと比較

IPAのDX推進指標自己診断結果分析レポートで示されている値を、DX推進に係るベンチマークとして活用しましょう。これにより、自社のDX推進状況を客観的に確認できます。なお、2021年版の同レポートによると、非先行企業と先行企業、DX認定企業とで、すべての指標の平均値について現在値と目標値はそれぞれ以下のとおりです。これらの値も、自社のデータと比較してみてはいかがでしょうか。

 

先行企業 DX認定企業 非先行企業
現在値(現時点における成熟度レベル) 3.49 2.64 1.62
目標値(3年後に達成を目指す成熟度レベル) 4.53 4.09 3.42

自社の課題を抽出

ベンチマークとの比較により、自社のどの部分が立ち遅れているのかわかるため、重点的に取り組むべき課題と解決策が見えてきます。日本ではDXの先行事例自体が少ないため、他社の事例に囚われすぎず立ち遅れの原因をきちんと分析することで、自社に必要な改善策を考えてDXを推進できるでしょう。

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まとめ

日本ではDXへの取り組みが遅れているため、経営層にDXへの意識を高めてもらうべく、経済産業省によりDX推進指標が作成されました。

診断項目は「DX推進のための経営のあり方・仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」に分けられ、両者はさらに「定性指標」と「定量指標」に分けられます。ベンチマークとしてIPAの「定性指標に関する分析レポート」で示されている値と、自社の自己診断結果を比較し、自社の課題を抽出して、DX推進に役立てましょう。

なお、インキュデータは、お客さまが目指すべき姿の検討から、実現に至るまでのロードマップ策定、現状ある課題の整理・分析まで幅広くご支援します。経営視点でDXをとらえ、ビジネスデザインから見直したいとお考えの場合もぜひご相談ください。

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