INCUDATA Magazine_000155_セルフで診断!あなたの会社のDX度 - 三つの視点からチェックするデジタルトランスフォーメーションの進展度

セルフで診断!あなたの会社のDX度 - 三つの視点からチェックするデジタルトランスフォーメーションの進展度 -

目次

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んではいるものの、目に見えた成果がなかなか上げられず、自社におけるDXの進め方や進展度に不安を感じている──。そうした不安を解消していただくために、自社の“DX度”をセルフ診断する方法をご紹介いたします。

再確認!DX推進上の課題とは?

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタルテクノロジーとデータによって、事業そのものを変革していく取り組みです。一過性のプロジェクトとは異なり、恒常的かつ継続的な取り組みですので、仮に、DX推進のあり方に間違いがないとしても、なかなか目に見えた成果が上げられない場合があります。

一方で、DXの進め方に問題があり、DXによる成果が上げられないケースも、もちろんあります。

DXの推進が上手くいかない例をいくつか挙げてみましょう。

  • 推進組織に問題がある

DXは全社的に遂行すべき戦略ですが、だからといって、社内の全ての事業部が、内部にDXの推進チームを組織し、横並びで一斉にDXに取り組む必要はありません。それを行うと、DXの取り組みが各事業部内で閉じたものとなり、全体としての一貫性や戦略性に欠けるDXの施策が乱立し、全ての施策が部分最適のプロジェクトで終わってしまうことになりかねません。

  • 難易度の高い取り組みから着手

DXを推進する際、顧客データを使ったマーケティングの高度化からDXの取り組みを始めると、比較的短期間で効果を手にできる可能性はありますが、その試みの難易度は高く、上手く推進できない場合が珍しくありません。

  • 人材の不足、育成が追い付かない

DXをリードする人材を育成するのも非常に難しい取り組みです。DXをリードするには、ビジネス、マーケティング、テクノロジーの全てについて相応の知識・知見を有していなければなりません。社内にそのような人材がいない場合、外部の協力会社に協力を要請するという手もありますが、先ほど述べたとおり、DXは継続的な取り組みであり、施策の改善もスピーディに行っていなければなりません。そうしたスピード感を手にするには、社内にDXをリードするノウハウや能力を持つのが適切といえますが、そのための人材育成をしっかりと行うのは、なかなか困難なのです。

「組織」「マーケティング」「人材」の視点から自社の課題をセルフ診断

以上の記述からもお分かりいただけるとおり、DXを推進する上で企業が突き当たる課題は、大きく「組織」「マーケティング」「人材」の3点に集約できます。したがって、これら3つのポイントにフォーカスして状況を点検すれば、自社のDX進展度をセルフ診断することが可能になります。以下では、その診断方法についてご紹介いたします。

組織DX度の診断方法

組織的DX度とは、DXを推進する組織の体制が築けているかどうかを指しています。その診断ポイントと診断方法は次のとおりです。

診断ポイント:組織のチェンジマネジメントが機能しているか

診断方法

DXを推進する組織の体制として、組織上のタテとヨコが連携した状態になっているかどうかをチェックします。

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タテとヨコの連携がなく、縦割り型の組織構造の中で、各組織(事業部)がそれぞれ個別にDXを推進していると、上述したとおり、DXの施策が事業部単位で閉じたものとなり、社内の全てのDXの取り組みが、局所的な最適化で終わる結果になります。

課題解決のヒント

従来組織から独立した出島式のDX推進チームを組織し、DX施策を小さく始めます。そして、小さな成功を積み重ねながら、徐々に社内の各事業部を巻き込み、連携を強めていくチェンジマネジメントを行うのが、成功への道筋といえます。詳しくは、本サイト内下記コラム『 DXを成功へと導く組織と技術の戦略』を併せてご参照ください。

▼コラム『 DXを成功へと導く組織と技術の戦略』を読む▼

マーケティング的DX度の診断方法

マーケティング的DX度とは、マーケティングが顧客データを起点に高度化されているかどうかを表しています。

その診断ポイントは複数あり、以下では、ポイントを「①データ統合基盤が構築できているか」「②顧客体験が設計・構築できているか」「③従業員体験が設計・構築できているか」の3つに絞り、それぞれの診断方法をご紹介いたします。

診断ポイント①:データ統合基盤が構築できているか

診断方法

社内のCRM(顧客関係管理)システムやSFA(営業支援)システムなどに蓄積されている顧客データや自店舗のPOSデータ、自社のWebサイトや顧客向けアプリから取得した顧客体験に基づくデータ、さらには社外のパートナーから入手したデータを統合し、管理・活用するための基盤が構築されているかどうかをチェックします。

これらのデータを統合し、分析・活用する基盤がないと、DXの施策を展開することはできません。

課題解決のヒント

CDPCustomer Data Platform)などを用いて、自社におけるDXのビジョン・戦略に沿ってデータを集めて、データ統合基盤を構築します。詳しくは、下記のコラムを併せてご参照ください。

▼コラム『 DXを成功へと導く組織と技術の戦略』を読む▼

▼コラム『失敗しないDXの始め方』を読む▼

診断ポイント②:顧客体験(CX)が設計・構築できているか

診断方法

顧客データの分析による顧客理解に基づき、自社の売上増進につながるようなCXの設計・構築ができているかどうかをチェックします。

以下では、B2Bのマーケティング/営業の高度化という観点から、DX度をチェックする方法をご紹介いたします。

今日のB2Bマーケティングでは、自社のWebサイトやセミナー、メールマガジンなどを通じて、顧客がどのような体験をすると(あるいは、コンテンツを読ませたり、視聴させたりすると)、潜在的なニーズを顕在化させ、自社の製品/サービスの購入意欲を喚起することができるかを分析し、その上で、自社のWebサイトへの流入導線やWebサイト内のコンテンツ導線を設計・構築するという手法が一般化しつつあります(図1)。

図1:顧客の意識の変化に合わせた誘導施策の設計イメージ

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このマーケティング手法はリードナーチャリング(リード育成)と呼ばれ、顧客の意識の変化──例えば、自己のニーズに気づき、ニーズを満たす製品/サービスに興味を抱き、その購入意欲を持つようになる、といった意識の変化に合わせて、読ませるコンテンツや視聴させるコンテンツを変化させ、顧客の購買意欲を喚起していく(=リードを育てる)マーケティング施策です。

マーケティングのDX度を点検するときには、こうした施策がしっかりと展開できているかどうかを点検します。

一方、営業の高度化が実現されているかを点検する際には、営業プロセス全体の可視化が実現されているかどうかや、プロセスを可視化した上で、顧客との商談成立に至る各ステップにおいて、顧客の滞留・脱落が発生するクリティカルポイントがどこにあるのか、滞留・脱落に対して適切な対策が講じられているかどうかを点検します。

例えば、「抱えている企業数や平均滞留日数からボトルネックが割り出されているか」「各期のフォーキャストから目標達成の確度がどの程度かが分析できているか」「商品を購入する意欲が低い顧客ばかりに注力することを回避できているか」といった点をチェックし、それらができていれば、顧客データを使った営業の高度化が実現されていると判定します。

さらに、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使った顧客データの分析により、顧客の意識の変化がリアルタイムにモニタリングできているかどうかや、Webサイト上での顧客の行動データとSFAシステムのデータとの連携により、商談ステージの違いで顧客が閲覧するWebサイト上のページにどのような変化があるかを補足できるかどうかを点検するのも、営業のDX度を測る上で有効です(図2)。

2CDPBIツール連携のイメージ

col-3-zu-2_2320.jpg課題解決のヒント

上の記述からお分かりいただけるかもしれませんが、データを上手く活用しながら、B2Bのマーケティング・営業を高度化するのは、マーケティングと営業に関するに加え、データ分析・活用についての知識・知見が必要とされるため、そう簡単に実現できることではありません。少なくともDXの取り組みを始動させた当初は、自社に足りていないスキルを、協力会社の人材で補うことを考えたほうが無難といえます。

診断ポイント③:従業員体験(EX)が設計・構築できているか

診断方法

EXの設計・構築とは、CXの良質化につながるように、従業員の働きやすさや業務効率を向上させる環境を、デジタルテクノロジーとデータを使って設計・構築することを指しています。

それが実現されているかどうかは、従業員による業務の効率化と顧客体験の良質化の双方を勘案した定常業務プロセスが構築・設計できているかどうかによって判定します。

EXを考える上での課題設定やEXの良質化の施策が“現実味”に欠けたものにならないよう、顧客に最も近い場所で働く店舗のスタッフや営業担当者を巻き込んだワークショップを催し、その結果をEXの設計に反映させているかどうかも点検すべきです。

人材育成のDX度の診断方法

人材育成のDX度とは、DXをリードする人材の育成がどの程度進んでいるかを表すものです。前述した通り、DXをリードするには、ビジネス、マーケティング、テクノロジーの全てについて相応の知見・知識を持つパイ型人材であることが要件となります。それらの知見・知識を持った人材育成の進み具合をチェックします。

診断ポイント:パイ型人材の育成や運用スキルの移管が、どの程度進んでいるか

診断方法

IT企業ではない一般の事業会社の場合、ビジネス、マーケティングに関して知見・知識を有する人材はいても、データの分析・活用について専門的な知見・知識を有する人材があまりいないのが一般的です。

そのため、DXに関する人材育成の進展度を測るうえでは、社内の事業部やマーケティング部の担当者のテクノロジーの習熟度が、どの程度高められているかをチェックするのが良いかもしれません。

課題解決のヒント

DXに関する人材の育成について、最初から全てを社内で解決しようとするのは、やはり無理があるといえるでしょう。したがって、DXの人材育成に関してスキルを持った、外部の企業の力を借りるのは有効な選択肢の一つとなります。

DXの推進において、協力会社にデータ統合基盤の構築と運用を委託しているのであれば、構築・運用のスキルを社内の人材に移管する作業を協力会社に要請しておくことも継続的なDXの推進に必要なプロセスです。

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