データ活用を阻害する四つの要因 - データをビジネスに生かせない本当の理由とは?

企業活動を通じて日々蓄積されていくデータ。その有効活用を図ることの大切さは、多くの企業が認めるところです。ただ、データ活用がなかなか前に進められずに悩んでいる企業も散見されるのが現実です。そうした悩みを解消していただくためのヒントとして、データ活用を阻害する四つの要因をご紹介いたします。

データ活用、日本の現在地

データ活用の阻害要因についてお話しする前に、データ活用における日本企業の状況について簡単に確認します。

総務省の「令和2年版(2020年版)情報通信白書」によれば、IT大国の米国はもとより、日本と同じく製造業を基幹産業とするドイツの企業に比べても、日本企業はデータ活用に消極的であるといいます(図1)。

1:データ収集・蓄積・活用(処理)に関する日本と米国・ドイツとの比較

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出典:総務省「令和2年版情報通信白書」

1は、白書の中で紹介されている「データの収集・蓄積・処理(AI適用を含む)に関する各国の導入状況」の調査結果です。ご覧のとおり、日本においては「導入済み」と回答した企業の割合がいずれも2割程度であるのに対し、米国企業・ドイツ企業の場合はデータ収集が5割、データ蓄積が4割、データ処理については3割を超えています。この結果から、米国とドイツ両国の企業のほうが「データの活用に積極的であることが明らかとなった」と総務省では指摘しています。

一方で、同じく総務省の白書によれば、データ活用は日本企業の「経営企画・組織改革」「製品・サービスの企画・開発」「マーケティング」「生産・製造」など、ほぼすべてのビジネス領域に一定の効果をもたしているとしています(図2)。

2:データ活用が日本企業にもたらしている効果

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出典:総務省「令和2年版情報通信白書」

こうしたことから、日本企業はデータ活用に対してより積極的になるべきで、それが国際競争力の強化にもつながると総務省は訴えています。

このような指摘は行政府だけではなく、さまざま識者からもかねてからあり、データ活用の重要性への理解は企業の間で確実に広がっているといえます。それでもデータ活用が米国やドイツといったほかの経済大国と同等のレベルにまで達していない要因はいくつか考えられます。以下、その中から特に大きな要因と思われる四つの点についてお話しします。

データ活用の阻害要因① 「データ分析」と「データ活用」の混同

企業におけるデータ活用を阻害する要因として、まず挙げられるのは「データ分析」と「データ活用」を混同してしまうことです。

データ分析は、データを統計的に分析することで、よりビジネスに活用しやすいデータを得るための手段に過ぎません。ところが、収集したデータを分析しているうちに、いつの間にか分析が目的化してしまうことがよくあります。そのような状態に陥ると、データ分析に適したデータを収集する傾向が強くなるため、ビジネスに役立つデータが得られる可能性が低下していき、結果としてデータ活用が前に進まなくなります。

したがって重要なことは、ビジネス課題を解決するために必要なデータは何か、そうしたデータをどのように役立てるのかといった「データ活用の目的」を明確に定めた上でデータ分析を進めることです。

例えば、自社のサービスの解約率を低下させるというデータ活用のゴールを定めることで、解約者の過去の行動データをさまざまなソースから集め、解約との因果関係の強い因子を探し当てるという分析プロセスを定めます。それによって収集すべきデータが何かも決まっていきます。そして、集めたデータに対して分析をかけていくことで、解約率の改善というゴールを達成する上で意味のあるデータが得られるようになり、それによって初めて有効な「データ活用」が実現します。

このようにデータ分析とデータ活用は手段と目的の関係にあって、両者を混同することはデータ活用の阻害要因になってしまいます。

データ活用の阻害要因② 人材の不在

上述した「データ分析」と「データ活用」の混同は、ビジネス現場にデータ分析のスキルを持った人間が足りない(ないしは、いない)ことによって引き起こされる問題ともいえます。

データ分析は、統計学や統計分析に関する一定の知識・スキルが要求される特殊な作業です。ゆえに、データ活用に取り組もうとした場合、データ分析専門のチームを社内に組織して、その組織に統計分析に関する知識を持った人材を集めるのが一般的なやり方です。また、ビジネスの現場が、データ分析を専門とする企業に分析業務を委託するケースもよく見受けられます。

このとき、データ分析の担当者が自社(ないしは顧客企業)におけるビジネス・業務について十分に理解していないと、ビジネス現場との感覚的なズレが生まれてしまい「分析のための分析」が行われがちになります。

また、データ分析には現場勘が必要とされることも多くあります。

例えば、製品の売り上げが想定を超えて落ち始めている理由をつかむためにデータ分析を行うとします。このような場合、製品の販売やマーケティングに携わった経験がないと、売り上げダウンの理由についてなかなか適切な仮説が立てられません。適切な仮説がなければ、どのデータに対して分析をかけるべきかの判断が下せず、仮説検証も正しく行えないことになります。

このような問題を解決する上で有効な方法は、ビジネス現場での実務経験者、あるいはビジネス現場の担当者が統計分析についての知識を習得してデータ分析にあたることです。もちろん、統計分析の知識の習得には相応の時間を要しますが、今日のデータ分析ツールは統計分析についてそれほど深い知識がなくても使いこなせるようになっています。また、データ分析に着手した当初は、スキルを持った協力会社と密接に連携しながら作業を進めていき、徐々にスキルを獲得していくという手もあります。

いずれにしても、データ活用を前に進めるためには現場勘と分析スキルの融合が重要であり、それに向けて体制を整えていくことが必要であるといえます。

ちなみに、経営の意思決定を支援する目的でデータ分析が行われることがありますが、この分析についても、経営の当事者でないと意思決定に役立つデータがなかなか導き出せないという問題があります。そのため、企業の経営者がデータ分析の手法を独学で学び、自身のデータ活用を成功に導いている例もあります。

データ活用の阻害要因③ 目的不在のデータ収集

先の記述からもお分かりいただけるように、データの収集も最終的なデータの活用目的に沿って行われるべきものです。ビジネス課題を解決するためにどのようなデータをどう使うかの目的がないままにデータを収集しても、そこからビジネス上の課題解決につながるデータが得られる可能性は低いといえます。

例えば、飲食店のチェーンが、会員顧客の嗜好をつかむうえでは全店舗のPOSデータを収集して会員データと掛け合わせることで分析が可能ですが、メニューごとの売上の変動理由をとらえようとした場合には、気象データをはじめ、食に関する市場のトレンド、メニューが顧客に提供されるまでの時間、さらには、提供されるときのメニューの温度といったデータも収集して、POSデータと掛け合わせて分析をかける必要が出てくるはずです。

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このように、データ活用の目的によって収集しなければならないデータはさまざまに変化します。目的がないままにデータを収集するのは“本末転倒”であって、それではデータの活用はままならないと考えるべきでしょう。

データ活用の阻害要因④ データ活用の環境が構築できない

一方、データ活用の明確な目的があり、目的に沿ってどのようなデータを集めて分析をかけるべきかが分かっていても、そのための環境がなかなか構築できないことがあります。

この問題を解決する第一歩は、自社の目的に適合するデータプラットフォームを選ぶことです。選択が終わると、データ活用の目的に沿ってデータプラットフォームの構造を設計したり、収集すべきデータをプラットフォームに取り込んだり、BIツールなどの外部ツールとのデータ連携を実現したりと、技術的なスキルやノウハウが要求される難度の高い作業も待ち受けています。

したがって、この問題を解決する現実解は、外部の専門的な知見・スキルに頼りながらデータ活用のためのプラットフォームの構築を推し進めて自社内にスキルと知見を徐々に蓄積していき、最終的にプラットフォームの構築・運用を自社内の人的リソースだけで完結できるようにすることです。

以上、データ活用を阻害する四つの要因と、その要因を取り除くためのヒントをご紹介いたしました。データ活用の推進は、業務上の数々の課題を解決する上でも、顧客への理解を深めて売上アップにつなげるためにも大切な取り組みです。本稿を参考にしながら、データ活用を前に進めていただければ幸いです。

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