
データ収集の方法とは? - データドリブンマーケティングの実現に向けた施策
社会全体のデジタル化や顧客ニーズ・購買行動の変化が進展する中、経験や勘に頼ったマーケティングや、不特定多数の消費者向けのマスマーケティングが通用しなくなっています。これからのマーケティングにはデータ活用が重要と感じ、効果的なデータ収集の方法が知りたい方もいるのではないでしょうか。
データの分類やそれぞれのデータの収集方法、収集したデータの活用方法、データ基盤となるツールについて知ることで、多種多様なデータの総合的な分析と課題解決の方法が理解できます。データ収集について理解を深め、データドリブンマーケティングの実現と顧客それぞれのLTVの最大化を目指しましょう。
この記事では、データの収集方法や活用方法、データ基盤として導入・活用が求められるCDPについてご紹介します。
データ収集とは
データにも多様な種類があり、それぞれの性質や違いを把握することは大切です。また、近年はCookieの規制強化などを背景に、ゼロパーティデータの重要性が高まっています。まずは「データ収集とは何か」を見ていきましょう。
現状把握からゴールにつなげるデータ収集
データ収集とは、さまざまな異なるソースからデータを集め、現状把握することです。社会全体のデジタル化の影響で顧客ニーズや購買行動が多様化する中、デジタルマーケティングの実施においては詳細な顧客理解が不可欠でしょう。データ収集は顧客理解の手段を与えます。
明確なゴールを設定した上で、必要なデータを収集・分析して改善・課題解決のためのマーケティング施策を実施する流れです。データ収集やデータ分析はあくまで手段であり、それ自体は目的ではありません。
プライマリデータとセカンダリデータ
企業が収集するデータにはプライマリデータ(一次データ)とセカンダリデータ(二次データ)の2種類があります。
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- プライマリデータ:自社で行ったアンケートの結果やPOSデータなど、新規に収集する自社由来のデータ
- セカンダリデータ:政府が公開する統計データや企業のIR情報など、世の中にすでに存在するデータ
例えば、プライマリデータは自社が抱える顧客の分析に役立ちますが、購買行動の因果関係を把握したり将来予測をしたりするにはセカンダリデータが必要です。プライマリデータとセカンダリデータは相互補完的な関係にあり、不足する性質のデータを適切なチャネルから収集することが求められます。
定量データと定性データ
マーケティングで利用するデータには定量データ・定性データという分類もあります。
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- 定量データ:商品の市場独占率や売上高など、数値化できる量的データ
- 定性データ:顧客が「なぜその商品を購入するのか」「サービスのどこを気に入っているか」など、数値化できない質的データ
定量データは収集・加工・分析しやすく、「どの商品がどのような顧客層にいつ売れるか」といった情報を得やすいのが特徴です。しかし「なぜ売れているか」は、定性データから顧客の思考や感情を読み解かなければ詳細に把握できません。
顧客理解を深め優れた価値を提供し、競争優位性を向上・維持するには、定量データだけでなく定性データの収集・分析も求められます。
重要性が高まるゼロパーティデータ
企業が直接収集するデータを1stパーティデータ、他社メディアなど第三者から取得・購入したデータを3rdパーティデータと呼びます。
1stパーティデータや3rdパーティデータが「企業側が取得する」データであるのに対し、ゼロパーティデータは「顧客から積極的に提供してもらう」データです。顧客の同意を得て提供してもらう1stパーティデータと言い換えられます。
企業は収集したデータから顧客ニーズや一般消費者の意図などを「推測」しますが、ゼロパーティデータは「顧客の声」です。ゼロパーティデータを提供してもらえれば確証の持てない推測をする必要がなくなります。また、近年はCookieの規制強化でWebログの収集が難しくなっており、同意を得て提供されるデータの重要性が増している状況です。
顧客と良好な関係を築きゼロパーティデータを提供してもらえれば、顧客のプライバシーを守りつつ、より適切な価値提供につながる精緻な顧客データを得られます。
データ収集の方法
プライマリデータとセカンダリデータは収集方法に違いがあり、それぞれのデータ収集に役立つツールも異なります。また、改正個人情報保護法の施行が近付く中、コンセントマネジメントの取り組みが急務といえる状況です。ここでは、データ収集の方法と、それぞれのデータ収集方法を効率化するツールを解説します。
プライマリデータの収集方法
デジタル化の進展に伴い顧客接点は多様化しており、企業は実店舗、ECサイト、チャット、セミナー、Web広告など、さまざまなチャネルから顧客情報を収集できます。企業が収集する顧客情報の例は以下の通りです。
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- 実店舗のPOSデータ
- ECサイトの購買履歴
- 会員制サービスの登録情報
- Webサイト上の行動傾向
- Web広告のクリック傾向
- カスタマーサポートの問い合わせ履歴
- SNSやチャット、セミナーにおける質疑応答内容
アクセス解析ツールやAIチャットボットの導入、SNSの運営やWeb会議ツールによるウェビナー開催なども組み合わせることで、さまざまなチャネルから多様なプライマリデータが収集できます。
収集したプライマリデータの一元管理
プライマリデータは担当部署ごとにサイロ化しやすく、企業全体で統一された目的のもとに収集・整理されていないケースも珍しくありません。そこでCDP(Customer Data Platform 顧客情報基盤)の導入が効果的です。
CDPは顧客情報を収集・蓄積・統合でき、さまざまなチャネルから収集したプライマリデータを一元管理できます。これにより顧客理解の深化や効果的なone to oneマーケティングが可能です。
セカンダリデータの収集方法
プライマリデータはあくまで内部データであり、市場動向や競合の調査、不特定多数の消費者の分析にはセカンダリデータの収集が不可欠です。政府やシンクタンクが公開する統計情報は、無料のPDFファイルやExcelファイルとしてダウンロードできるケースも珍しくありません。
さらに、データ販売会社が構築するパブリックDMPからも有用なセカンダリデータが収集できます。パブリックDMPはクラウド型のデータプラットフォームとして提供されるものが多く、不特定多数のデモグラフィックデータやWebサイト上の行動履歴など、外部のオーディエンスデータの収集に効果的です。
Web APIによるセカンダリデータ収集の効率化
Web上で公開されている機能やデータを、アプリケーションソフトから利用できる仕組みをWeb APIと呼びます。政府の統計情報などのオープンデータは有用ですが、データ量があまりに膨大で、手作業の検索は非効率であることがネックです。
そこでWeb APIを利用すると、任意のデータを自動的に収集でき、検索効率・データ収集効率を大幅に向上できます。さらにオープンデータの更新に合わせて収集データの自動更新も可能です。
収集するデータのコンセントマネジメントは急務
ユーザからの同意情報はWebサイト、アプリ、メール、電話、紙など、さまざまなチャネルから集まります。例えば、Webサイトやアプリを通じたメルマガ配信やモバイル通知、Cookieの許可、あるいはサービス利用開始時の契約書による同意などです。これらのデータを管理すること、つまりどのデータが何の目的で収集されているか、ユーザごとに管理することをコンセントマネジメントと呼びます。
企業が収集する顧客関連のデータはあくまで顧客のもので、企業はプライベートなデータを預からせてもらっている立場です。データを預けてもらうためには相応の価値提供をする必要があり、その取り組みの中で顧客との良好な関係を築きます。
また、2022年4月に施行される改正個人情報保護法の定めにより、企業はユーザからの開示請求や削除請求に迅速に対応することが必要です。この意味でもコンセントマネジメントの取り組みは急務となっています。
CMPによるコンセントマネジメントの効率化
Web上のコンセントマネジメントは、CMP(同意管理プラットフォーム)によって効率化できます。CMPはWebサイトやアプリを利用するユーザに対し、データの利用目的などを明示し、同意情報を取得・管理するシステムです。主な機能には以下のようなものが挙げられます。
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- Webサイト訪問時に表示されるCookie許可のダイアログを実装
- 同意情報に基づくCookieの発行
- 同意状況の可視化・管理・分析
- マーケティングツールと連携し、収集した同意情報の活用
収集したデータの活用方法
データ収集は手段であり、価値あるデータも活用されなければ単なる文字列に過ぎません。収集したデータは以下のように活用できます。
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- データドリブンな経営やマーケティングの実現
- アップセルやクロスセルのためのアプローチ
- CX向上とLTVの最大化
ここでは、それぞれの活用方法を解説します。
データドリブンな経営やマーケティングの実現
社会全体におけるデジタル化や顧客ニーズ・購買行動の多様化が進展する中、経験や勘に依存する判断やマスマーケティングが効果を発揮しなくなっています。そこで重要なのがデータドリブンで行うマーケティングの実現です。
経営判断やマーケティング活動をデータに基づいて決定するビジネススタイルをデータドリブンと呼びます。さまざまなチャネルから収集したデータを蓄積・統合・可視化することで、合理的な経営判断とマーケティング施策の決定、効果的なone to oneマーケティングにつなげることが可能です。
アップセルやクロスセルのためのアプローチ
データ収集によって顧客理解を深化させることで、より高価な商品の販売(アップセル)や、関連商品の販売(クロスセル)につなげやすくなります。特に顧客と良好な関係を築き、ゼロパーティデータを提供してもらえるほど信頼されれば、推測に頼らず「個客」に向けたアプローチが可能です。
既存顧客に向けたアップセルやクロスセルにフォーカスし、精緻な顧客データに基づき適切な価値提供をすることで、効率的な訴求が狙えます。
CX向上とLTVの最大化
スマホやSNSの浸透により消費者は簡単に商品比較ができるようになりました。また、競合とのシェア争いが過熱している市場は多く、Web上の口コミを重視する消費者も一般化している状況です。この状況下では、競合とのわずかな違いが顧客離れにつながる恐れもあります。
そこで既存顧客のデータをできる限り詳細に収集し、自社ならではの価値提供やカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上を目指すことが大切です。それぞれの顧客接点における小さな課題を解決してCXを向上することで、顧客ロイヤリティの向上、ひいてはLTVの最大化を目指します。
ただし、収集するデータが多様化・複雑化するほどデータ分析はどの切り口で実施すべきか複雑化するため、データドリブンマーケティングに知見のある企業と連携し、自社にとってのアプローチすべきセグメントや方策について精度を高めることが重要です。
収集したデータを埋没させないために|CDPの果たす役割
顧客に関するデータは企業にとって重要な情報資産です。しかし、複数の異なる部門がデータ収集すると、データのサイロ化も懸念されます。こうなると価値あるデータが埋もれかねないため、チャネル・部門横断で統合管理することがポイントです。この目的に効果的な顧客データ基盤、CDPについて解説します。
CDPとは
CDPとは、企業の持つさまざまなデータ(顧客の行動や属性など)を集約し、エンリッチできるプラットフォームのことです。顧客を多角的に理解し、顧客それぞれの特質に応じたサービス展開を支援する役割を果たします。主な機能はオンライン・オフラインのデータ収集機能、メールアドレスやIDとひも付けた顧客データの統合機能、顧客のセグメンテーションや購買予測などの分析機能です。
CDP導入で得られるメリット
CDPは社内に点在する多種多様なデータを一元管理できます。この機能から得られるメリットは、データを複数部門で活用でき、分析の高度化につながることです。例えば、マーケティングデータを開発部門や営業部門と共有し、顧客満足度の高い商品の開発やホットリードとの商談に活用できます。
また、複数部門で収集した顧客データを統合することで、顧客理解の深化につながることもメリットです。例えばWebサイトの訪問履歴や行動履歴、ECサイトの購買履歴、メールの開封履歴などを個別のIDにひも付けて統合できます。これにより顧客接点と購買行動を一望でき、カスタマージャーニーの詳細な分析と、適切なマーケティング施策の設計が可能です。
さらに、CDPはCRMやMAなど、さまざまなツールとシームレスに連携できます。これにより「顧客が今まさにほしい商品情報」の自動配信、つまり適切なターゲティングメールの配信による購買意欲の喚起など、顧客一人一人に対する最適なアプローチが可能です。
データドリブンマーケティングに必須のデータ収集
社会全体のデジタル化が進展する中、顧客ニーズ・購買行動の変化や競合とのシェア争いが加速しています。従来の経験や勘に頼ったマーケティングやマスマーケティングが通用しなくなっており、「個客」にフォーカスしたデータドリブンマーケティングの重要性は高まっている状況です。
さまざまなチャネルを通じたデータ収集は、データドリブンマーケティングの基盤です。収集したデータの活用こそが、自社ならではの顧客にメリットがあるCXの提供を可能にし、ひいてはLTV向上につながります。