INCUDATA Magazine_000576_バリュープロポジションキャンバスとは?使用時の注意点と作り方も解説
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バリュープロポジションキャンバスとは?使用時の注意点と作り方も解説 -

目次

バリュープロポジションキャンバス(VPC)とは、顧客ニーズと製品の提供価値のズレを解消し、一致(フィット)させるためのフレームワークです。 本記事では、インキュデータが推奨するVPCの基本構造(顧客プロフィールとバリューマップ)から、客観的データに基づいた作成手順、競合差別化や新価値発見に向けた具体的な活用上の注意点を専門的な視点で詳しく解説します。

バリュープロポジションキャンバスとは

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バリュープロポジションキャンバス(Value Proposition Canvas, VPC)はビジネスモデルを検討する過程で、より詳細に顧客のニーズと製品の価値を一致させるために用いられるフレームワークです。

バリュープロポジションキャンバスは、顧客プロフィールバリューマップの2つから構成されます。右側には顧客セグメント、左側には顧客への価値提供が配置されます。

右側の顧客セグメントは、下記の3つから成り立っています。

    • Gains:顧客の利得
    • Customer Job(s):顧客が実現したいこと
    • Pains:顧客の悩み・障害・リスク

左側の顧客への価値提供は、下記の3つから成り立っています。

    • Gain Creators:顧客の利得をもたらすもの
    • Pain Relievers:顧客の悩み・障害・リスクを取り除くもの
    • Products & Services:製品&サービス

バリュープロポジションキャンバスでは、右側の顧客セグメントと左側の顧客への価値提供の整合性が取れているかを確認し、顧客のニーズを満たす製品・サービスになっているかを判断することができます。図にして視覚化できるのが特徴です。

バリュープロポジションキャンバスが重要視される理由

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バリュープロポジションキャンバスが重要視される理由には以下の3つがあります。

    • 顧客ニーズとのズレを解消するため
    • 自社の新しい価値を見出すため
    • 競合との差別化を図るため

表1. VPCが重要視される理由と効果

重要視される理由 内容と期待される効果
顧客ニーズとのズレ解消 自社が提供する価値と、顧客の本来のニーズの間の乖離を客観的に把握し、迅速な修正・共有を可能にする。
自社の新しい価値の発見 意図していなかった顧客の評価や、製品が購入される意外な理由など、新しい視点からビジネスの最適化を図れる。
競合との差別化 単なる「違い」ではなく、競合よりも顧客の要望に深く合致した「有意義な差別化」を実現する。

それでは、1つずつ解説します。

顧客ニーズとのズレを解消するため

バリュープロポジションキャンバスが重要視される理由の1つ目は、顧客ニーズとのズレを解消するためです。フレームワークを活用することで、「自社が製品・サービスを通じて提供する価値」と「顧客が本来抱えているニーズ」の間の不一致を見つけやすくなります。

自社にとって独自性やアピールポイントだと考えている製品・サービスの特徴が、顧客からすると価値がない、あるいはマイナス要素と捉えられるケースは少なくありません。しかし、顧客のニーズは顕在化しているとは限らず、ニーズ把握は容易ではありません。自社と顧客の間とで乖離があることに気づくのは難しいものです。

また、改善していくには、乖離がある状態を一部の担当者だけでなく組織全体で共有し対処する必要があるため、ハードルはより高いといえます。

結果的にズレを修正できずに、顧客の要望からさらに乖離してしまうことも珍しくありません。ズレの解消には、バリュープロポジションキャンバスを活用して、改善のポイントを客観的に理解し、製品・サービスに関わる部門に迅速に共有することが大切です。

自社の新しい価値を見出すため

バリュープロポジションキャンバスが重要視される理由の2つ目は、自社の新しい価値を見出すためです。バリュープロポジションキャンバスを活用することで、「社内では注目していなかったことが、実際には顧客に評価されていた」「製品が購入される思いもよらない理由」など、新しい視点に気づくことができます。

例えば、近年、女性から支持を得ているサービスに洋服のサブスクリプション(好みに合わせて毎月レンタル洋服が届くサービス)があります。当初、洋服が好きな人をターゲットにしていましたが、実際には、洋服選びが苦手な人や洋服を買う時間がない人からの申し込みを多数獲得し、大成功を収めました。

自社は意図していなかった価値に目を向けることが、ビジネス成功につながることは少なくありません。バリュープロポジションキャンバスを活用し、顧客が求めていることを的確に把握して、製品やサービスの最適化を実現させられるでしょう。

競合との差別化を図るため

バリュープロポジションキャンバスが重要視される理由の3つ目は、競合他社との差別化を図るためです。近年、消費者の要望が多様化し、体験型サービスが人気を集めていることから、「有意義な差別化」を図る必要性は、ますます高まっています。

オンラインショッピング、小型電子機器などといったトレンド分野では、イノベーションの先駆者であると主張するサービスが次々と現れ、競争は激化しています。このような状況下で、複数の類似サービスの中から自社の製品・サービスを選んでもらうためには、差別化を図ることが不可欠です。

差別化を成功させるには、単に競合から異なっていれば良いわけではなく、競合より消費者の要望により合致していなければなりません。そこで、顧客ニーズと自社サービスの価値を一致させるために、バリュープロポジションキャンバスを活用すると効果的です。

バリュープロポジションキャンバスを使用するときの注意点

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バリュープロポジションキャンバスを使用するときには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは、バリュープロポジションキャンバスを使用するときの注意点として、以下の3つを解説します。

    • 企業の考えを押し付けない
    • 客観的なデータを基にする
    • 常に最新の状態に作り直していく

表2. VPC作成時における3つの注意点

注意点 具体的なアクション・対策
企業の考えを押し付けない 企業視点を捨て、まずは「顧客プロフィール」から作成。自社製品の機能を過剰評価するバイアスを排除する。
客観的なデータを基にする 感覚や仮定を避け、売上データ、アンケート、SNSの口コミ、市場調査などの具体的な情報を根拠とする。
常に最新の状態に作り直していく 市場環境の変化に合わせ、定期的に見直しを実施。常に最新の状態に保つことで競争優位を維持する。

企業の考えを押し付けない

バリュープロポジションキャンバスを使用するときの注意点の1つ目は、企業の考えを押し付けないことです。企業の視点から先に考えてしまうと、自社の製品やサービスを基に顧客をとらえてしまう形になり、顧客の実際のニーズと製品の提供価値が乖離してしまう恐れがあります。

また、企業の視点を先行させると、自社の製品の特性や機能を過剰に評価するバイアスが働いてしまうこともあるでしょう。そのため、まずは顧客の視点に立って顧客プロフィールを作り、実際のニーズを理解した上で、それに対する自社の解決策を考えることが重要です。

具体的には、企業側が製品の特性や機能を先行させて考えることは避け、まず顧客が何を求めているのか、どの様な問題を抱えているのか、問題を解決するためにどの様な成果を期待しているのかを、しっかりと「顧客プロフィール」として作成します。その上で自社側の「バリューマップ」を作りましょう。

客観的なデータを基にする

バリュープロポジションキャンバスを使用するときの注意点の2つ目は、客観的なデータを基にすることです。感覚や仮定に頼らず、客観的なデータや顧客のフィードバックを情報源とすることが大切です。

具体的には、売上データ・顧客アンケート・レビュー・ソーシャルメディアでの口コミ・市場調査などが考えられます。

客観的な情報を分析することにより、顧客の実際のニーズと期待、満足度、その他の重要な指標を把握することができます。客観的なデータに基づくバリュープロポジションは、企業が顧客の真のニーズに対応する製品やサービスの開発・提供に役立ちます。

常に最新の状態に作り直していく

バリュープロポジションキャンバスを使用するときの注意点の3つ目は、常に最新の状態に作り直していくことです。バリュープロポジションは、一度作成したら終わりではありません。

市場は常に動くもので、顧客のニーズや期待も変化していきます。そのため、定期的にバリュープロポジションを見直し、更新していく必要があります。

新しい技術の出現、競争環境の変化、社会的・経済的トレンドの変動など、外部環境の変化を観察し続け、顧客のニーズにどのように影響を与えるかを理解することが重要です。

また、直接的な顧客アンケート・レビュー・評価・市場調査データなどを活用して、顧客のニーズや期待がどのように変化しているかを追跡し、バリュープロポジションをそれに合わせて修正していくことも重要です。

動的な市場環境に対応するためには、柔軟に進化し続けるバリュープロポジションであるべきです。最新の状態に作り直していくことで、企業は顧客のニーズを常に把握しやすくなるため、競争優位を維持できるでしょう。

バリュープロポジションキャンバスの作り方

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バリュープロポジションキャンバスを作るときには、以下の3つの順で進めましょう。

      1. ターゲットを設定する
      2. 顧客ニーズを抽出する
      3. 顧客に提供する価値を定義する

表3. VPCの作成ステップ

ステップ 実施内容のポイント
1. ターゲットを設定する 詳細なペルソナ(価値観やライフスタイルまで)を定義し、ターゲットの抱える具体的な問題を浮き彫りにする。
2. 顧客ニーズを抽出する 調査やインタビューを通じ、顧客が遭遇する問題(ペイン)と望む結果(ゲイン)を鮮明にする。
3. 顧客に提供する価値を定義する 「製品特性」「具体的な利益」「顧客体験」の3観点から、どのように課題を解決するかを言語化する。

それでは、1つずつ解説します。

Step01.ターゲットを設定する

バリュープロポジションキャンバスの作り方の1段階目は、ターゲットの設定です。誰に対して製品・サービスを提供するのかを決めていきます。例えば、「都市部に住むビジネスパーソン」などといった広範囲のターゲット設定も可能です。

しかし、できる限り詳細なペルソナを定義することで、ターゲットが抱える具体的な問題やニーズを理解しやすくなるため、結果として高精度なバリュープロポジションの設計が可能になります。

ペルソナとは、ターゲット対象とする年齢・性別・職業などの基本的な特性に加え、価値観・趣味・バックグラウンド・休みの日の過ごし方・ライフスタイルなど、より具体的な特性を総合的に定義したものを指します。

Step02.顧客ニーズを抽出する

バリュープロポジションキャンバスの作り方の2段階目は、顧客ニーズを抽出することです。このステップでは、顧客が日々遭遇する問題(ペイン)や望んでいる結果(ゲイン)を具体的に洗い出していきます

洗い出した顧客ニーズは、製品・サービスが解決すべき課題となるため、非常に重要なフェーズといえます。顧客ニーズの洗い出しは、直接的な調査やインタビュー、または市場調査やユーザレビューの分析など、さまざまな方法で行うことができます。

顧客ニーズを鮮明に洗い出していくことで、製品やサービスが提供すべき価値を明確に定義できるでしょう。

Step03.顧客に提供する価値を定義する

バリュープロポジションキャンバスの作り方の3段階目は、顧客に提供する価値を定義することです。自社の製品やサービスがどのように顧客のニーズに応え、問題解決するのかを明確にしていきます。

提供する価値は、製品の特性(製品の何が顧客の問題を解決するのか)、利益(顧客が得られる具体的な利益は何か)、そして顧客体験(製品やサービスを利用するときの顧客の経験はどうなるのか)の3つの観点から考えていきます。

提供する価値を具体化することで、顧客に対してその価値を明確に伝えられるようになるでしょう

バリュープロポジションキャンバスに関するよくある質問

Q1: バリュープロポジションキャンバスを導入する最大のメリットは何ですか?

A1: 最大のメリットは、自社が提供したい価値と顧客が求めるニーズの「ズレ」を可視化し、解消できる点にあります。バリュープロポジションキャンバスにより、作り手の思い込みによる製品開発を防ぎ、顧客に深く刺さる市場適合性(PMF)の高いビジネスモデルを構築することが可能になります。

Q2: 作成時に最も注意すべきポイントはどこですか?

A2: 「企業の主観や思い込みを徹底的に排除すること」です。自社の強みから書き始めるのではなく、必ず「顧客プロフィール(ニーズ側)」から作成を開始してください。アンケート結果やSNSの口コミなど、客観的なデータに基づいた記述を徹底することが成功の鍵となります。

Q3: バリュープロポジションキャンバスの更新頻度はどのくらいが適切ですか?

A3: 少なくとも四半期(3ヶ月)に一度、または市場に大きな変化があったタイミングでの見直しを推奨します。技術革新や競合の出現、社会情勢によって顧客ニーズは常に変化するため、フレームワークを常に最新の状態にアップデートし続けることが競争優位性の維持に繋がります。

まとめ

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バリュープロポジションキャンバスは、顧客のニーズや期待に焦点を当て、それに対して自社が提供する価値を明確に整理するためのフレームワークです。使用する際は、対象顧客の本来のニーズを理解することが最重要です。ビジネスの競争力を強化するためにも、データを活用し顧客の本質的なニーズを把握することが大切です。インキュデータは現状の顧客提供価値を整理し、データを活用して新たな価値創造につなげるご支援をしています。ご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

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