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LTVを向上させる7つの施策!LTV向上のメリットと役立つツールも紹介 -

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更新日:2023年6月

LTV(Life Time Value)は、顧客が企業にもたらす総収益を示す重要な指標です。しかし、「その意味は理解しているが、思うように増やせていない」と悩んでいる方もいるでしょう。

そこでこの記事では、LTVを向上させるための施策を取り上げ、詳しく解説します。LTVの向上は、企業の継続的な成長につながるため、自社にとって有効な施策を確認し、積極的に取り組みましょう。また、LTVがもたらす収益以外のメリットや向上に役立つツールも紹介しますので、参考にしてください。

LTVとは?LTV向上が注目される理由

LTVを計測することにより、個別の購買行動を分析するだけでは分からない顧客行動が明らかになります。例えば、1回だけ大きな買い物をするよりも、少額で継続的に買い物をする顧客のほうが企業に大きな収益をもたらす可能性があるといったケースことです。

ここでは、計測や分析をする前提として知っておくべき、LTVの意味や計算方法、LTVが注目される理由について説明します。

LTVの意味

LTV(Life Time Value)は、日本語では顧客生涯価値と訳され、「取引期間(最初の購買~最後の購買)に1人(1社)の顧客から得られる総収益」を指すのが一般的です。例えば、50万円の商品を1回だけ購入した顧客(総購入額50万円)よりも、毎月2万円ずつ3年にわたって購入した顧客(総購入額72万円)のほうがLTVは大きくなります。

このことは、スポット的に大きな買い物をする顧客よりも、1回は少額でも長期にわたり継続的に買い物をしてくれる顧客のほうが、会社により大きな収益をもたらす可能性があることを意味しています。これがLTVが重視される理由です。

LTVの計算方法

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LTVを算出するには、顧客ごとの購入履歴に基づくのが最も正確ですが、現実的には難しいため、顧客全体のLTVを計算して分析するのが一般的です。LTVには、以下のような複数の計算式があります。

① LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間
② LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間-(新規顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
③ LTV=月額(年額)料金×契約期間
④ LTV=(平均購入単価)×(平均購入回数)

基本となるのは①の計算式で、②はそれから顧客に関わるコストを引いたものです。③はサブスクリプションなど定額制サービスでの計算に使われます。④は、「購買頻度」「継続購買期間」を収集していない場合に使われる代替的な計算式です。

いずれにしても、自社で測定可能な指標を使い、かつ分析することで事業にとって意味のある計算方法を使うのがポイントです。

LTVが注目される理由

LTVが注目される主な理由は、新規顧客獲得の難化、サブスクリプションサービスの普及、ビッグデータや機械学習などデータを解析する方法の進化の3つです。

日本の人口減少という背景と消費者ニーズの多様化が広まり、新規顧客の獲得は難化を極めています。そこで、既存顧客の売上の増加を目指すことがより重要だと捉えられるようになりました。

また、動画配信サービスをはじめとするサブスクリプションサービスが普及したことも、既存顧客のLTVを重視する一因となったといえます。

さらに、顧客の特性や行動パターンなどの情報を用いて製品やサービスを改良する「データドリブンマーケティング」や顧客の属性や行動データを管理するCDP(Customer Data Platform)などのデータを取得・解析する方法やツールが進化したことも、LTVが重視される背景の1つです。顧客データの解析が容易に行えるようになった結果、LTVを評価として用いやすくなったといえます。

関連記事:データドリブンの意味を徹底解説!目的・メリット・進め方も詳しく紹介

LTV向上がもたらすメリット

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LTVの向上は、収益を拡大するために行うものですが、企業にとってのメリットはそれだけではありません。ここでは、LTV向上がもたらす以下の4つのメリットを解説します。

    • 営業コストの適正化が実現できる
    • 収益を安定化させられる
    • 顧客との関係を強化できる
    • 企業やブランドの価値が向上する

それでは、1つずつ解説していきます。

営業コストの適正化が実現できる

マーケティングの世界には、既存顧客維持と新規顧客獲得にかかるコストの違いを表す「1:5の法則」があります。これは、新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストの5倍必要となるという意味です。したがって、リピーターを増やしLTVを向上させることは、収益を増やしつつ営業コストを大幅に削減することにつながります。

単にコストを適性化するだけでなく、余った費用を効果の高い施策に重点的に投入するなど、より資金を効率的に使えるようになることもメリットといえるでしょう。

収益を安定化させられる

新規顧客は、特定の商品・サービスだけに関心を持っていることが少なくありません。このため、新規顧客中心の営業は収益の変動が大きくなりがちです。これに対して、リピーターとなっている既存顧客は、定期的な購入が期待できます。少ないコストで売上を拡大できれば、収益は安定化します。

経営の安定化を目指す上では、LTV向上のためにリピーターを増やすことが不可欠といえるでしょう。

顧客との関係を強化できる

LTVが大きい優良顧客であれば、取引履歴をはじめ数多くの顧客データを有しているでしょう。年齢や性別といった基礎データだけでなく、「どのようなタイミングで購入しているか」「何に魅力を感じて自社製品を購入しているのか」「どんな使い方をしているのか」といった部分まで掘り下げて分析すれば、より効果的な働きかけができ、関係性を強化できるでしょう。

また、優良顧客の分析結果に基づいて新規顧客獲得へアプローチすることは、効率的な新規顧客の獲得につながります。

企業やブランドの価値が向上する

LTVを向上させるには、的確な働きかけに加えて、商品・サービスの品質を高めることが欠かせません。こうした取り組みにより顧客満足度がアップすれば信頼や愛着が高まり、企業やブランドの価値向上につながります。

企業やブランドに信頼や愛着を持った顧客は、リピーターとして安定的に購入してくれるだけでなく、口コミや紹介で新規顧客の獲得にもプラスの効果をもたらすことが少なくありません。

LTVを向上させる7つの施策

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LTVを向上させる方法にはさまざまなものがありますが、施策の中心となるのは、さまざまな形での顧客一人一人に向けたきめ細かな働きかけです。的確な働きかけをするためには、顧客データの分析に基づくアプローチが欠かせません。LTVを向上させるには、以下7つの施策があります。

    • 購入単価を引き上げる
    • 購入頻度を高める
    • 長期購入を促す
    • コストを引き下げ、利益率を高める
    • 顧客のロイヤリティを高める
    • 新規顧客を獲得する
    • 解約率を下げる

それでは、1つずつ解説していきます。

購入単価を引き上げる

購入単価を引き上げるには、「アップセル」や「クロスセル」といった販売施策を活用するのが効果的です。

アップセルとは、よりグレードの高い商材の購入・利用を促すことです。金額に見合う、あるいはそれ以上の魅力・価値があることを顧客に納得させられれば、購入単価の引き上げにつながります。

これに対してクロスセルは、関連商品も併せて購入することを勧めるものです。

すでにリピーターとなっている顧客であれば、アップセルとクロスセルの組み合わせも有効でしょう。

購入頻度を高める

顧客の購入頻度を高めることもLTV向上につながります。そのためには、「商材やブランドの印象度を高める」「顧客接点を増やす」「タイミングを合わせた訴求をする」といった工夫が大切です。

例えば、インパクトのある商品パッケージやサービスサイトのデザインは、顧客の印象に残りやすくなります。それにより商品・サービスを想起する回数が増えれば、より頻繁に購入することが期待できます。

また、顧客接点を増やしたり、タイミングを合わせた訴求をしたりするには、メールマガジン送付やアプリによるプッシュ通知を活用するのが効果的です。

長期購入を促す

長期購入を促すポイントは、商材や業態の特性によって異なります。例えば、日用品、消耗品、日常的に使う食品・飲料といった商材は、買い忘れ防止の訴求や無料配送などのインセンティブによって定期購入へ誘導するのが効果的です。

また、飲食店や美容院などの来店型のビジネスではポイントサービスやクーポンの配布、サブスクリプションなどの契約型サービスでは長期契約による割引といった施策が有効でしょう。

いずれの施策でも、アフターフォローやサポートにより顧客接点を継続させることが重要です。その上で、顧客の誕生日や契約期間満了といった効果的なタイミングでメール配信やアプリ通知などを使った働きかけをするとよいでしょう。

コストを引き下げ、利益率を高める

さまざまな営業施策を行うことで購入単価や頻度が増えたり、取引期間が長くなったりしても、顧客の獲得・維持にかかるコストが増えたのでは、LTVの向上に結びつきません。コストを引き下げるには、複数の施策をテストして効果測定を行い、実施する施策に優先順位をつけるといった手法が有効です。

CRM やSFAなどの営業ツールを導入して、日報作成や顧客情報の分析といった施策を実施するためのベースとなる作業を効率化することも、コスト削減につながります。

また、リピーターによる売り上げが安定的に増加すれば、新規顧客獲得に充てていた人員・予算を別の用途に振り向けたり、削減したりすることが可能になります。販売数量の拡大を踏まえて、資材などの調達コストを引き下げることも検討しましょう。

顧客のロイヤリティを高める

継続的に取引を行い、顧客満足度を高めた顧客は、企業やブランドにロイヤリティを持つようになります。ロイヤリティを持った顧客は自社の商品・サービスを優先的に選択する傾向が高いほか、新規顧客の獲得につながる口コミや紹介など、会社に大きなメリットをもたらします。

新規顧客を獲得する

既存顧客とのつながりを維持し、安定した売上を実現する一方で、新たな顧客を継続的に獲得することも重要です。高いLTVを提供する既存の価値ある顧客を深く理解し、属性を把握しておくことをおすすめします。既存顧客を理解することで、新規の顧客獲得を効率的に探し出すことができるでしょう。

解約率を下げる

多くの顧客を集められたとしても解約率が高ければ、LTVの向上は達成できません。顧客が契約解除をしたときに、その理由を深く理解し対策を講じることが重要です。

まず、「顧客がなぜ契約解除に至ったのか」という背景を詳しく調査していきます。顧客の契約解除の理由を理解するためには、定性的・定量的な調査を実施しましょう。まず、契約解除時に実際に顧客に対するインタビューやアンケートを行う方法があります。

そして、蓄積された顧客データから、契約解除に達した顧客の特性を把握することも重要です。また、顧客満足度を高めることで継続使用率を上昇させ、製品・サービスの契約解除率を低減させることが可能になります。

LTVの向上に役立つツール

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CRMやMAなどのツールを導入することにより、顧客情報の管理や情報発信を効率化できます。ツールや効率化によって浮いたリソースを顧客との関係強化に活用すれば、より効果的にLTV向上の施策を実行できるでしょう。LTVの向上に役立つツールには、以下の4つがあります。

    • CRM
    • MA
    • チャットボットなどコミュニケーションツール
    • SNS

それでは、1つずつ解説していきます。

CRM

CRMは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)の頭文字を取ったもので、顧客情報を統合して管理するシステムのことを指します。

元々は顧客の情報や購入履歴など、各種データを収集し解析する管理手法を指していました。しかし、現在では、これらの顧客情報を統合して管理するシステム自体をCRMと称することが一般的となりました。

CRMは、顧客情報を一箇所に集約し、効率的に解析することが可能で、LTVの向上にとって必要不可欠な分析ツールだといえます。CRMを利用して顧客とのコミュニケーションや購買の履歴を分析し、最適なアプローチやおすすめ商品を適切なものにすることでLTV向上につなげることが可能となります。

また、過去の販売データをCRMで分析することにより、顧客の好みや購入パターンを理解し、これを元に新商品や新サービスを開発することができます。さらに、CRMを用いて顧客の個々の状況を明確に把握すれば、適切なタイミングでのアフターケアやサポートの提供が可能です。

複雑なデータもCRMを活用すれば効率的に管理・分析できるため、ECサイトやウェブサービスを運営する企業にとっては、顧客維持コストの低減にも貢献するツールだといえます。

MA

MAは、Marketing Automation(マーケティングオートメーション)のことで、マーケティング活動の自動化やパフォーマンス評価を可能にする仕組みのことを指します。MAを利用すれば、顧客データに基づいて1対1のマーケティング活動を、自動的かつ効率的に展開することができます。

MAは顧客とのつながりを深め、その結果として利益を増やすことを目指す点で、LTV向上と高い相関性を持つツールです。また、顧客データの解析やエンゲージメントを自動化できるため、一部のコスト削減も可能です。

例えば、多様な顧客の興味や状況を追う中で、個々に適したタイミングでアプローチを行うことは、人力で行うにはコストと時間が掛かり過ぎてしまいます。しかし、MAを利用することで、顧客行動に対して即座にメッセージを送信するなどのアクションが容易に行えます。

顧客の行動を起点としてプッシュ型のアピールを行うことができるため、購入頻度の増加や顧客との関係性の強化が見込まれます。さらに、過去のマーケティング活動の管理と分析をすることで、より効果的なマーケティング活動が実施できるでしょう。

チャットボットなどコミュニケーションツール

チャットボットなどのWeb接客ツールは、販売価格や販売頻度を上昇させる「マーケティング目的」と、顧客満足度の向上や顧客対応の効率化を実現する「カスタマーサービス目的」の、主に2つの役割があります。

マーケティング目的では、顧客が自社のWebページを見ているときに、関心がありそうな商品を提案し、購入を促すことができます。一方、カスタマーサービスの観点からは、チャットボットを導入することで、顧客が求める情報や支援を即座に提供することができるため、顧客満足度の向上や解約防止につながります。

SNS

企業のSNSアカウントは、顧客と直接つながることができる重要なチャネルの1つです。企業アカウントの管理には、誠実な対応と不適切な配信の防止に注意を払う必要があります。特に、SNSは消費者に向けてリアルタイムで情報を提供できるのが大きな特徴です。

例えば、ある飲食業のSNSアカウントは、新製品の販売情報をリアルタイムで共有し、顧客からのフィードバックにも積極的に反応しています。これにより、顧客とのエンゲージメントを高め、ブランドの認知度と好感度を向上させています。

このように、商品やサービスの広範な認識と好意度の向上は、LTVにも大きな影響を与えます。SNSを戦略的に活用し、商品の価値を適切に伝えていきましょう。そうすることで、消費者の購買行動を刺激し、長期的に顧客と良好な関係を築くことが可能になります。

LTV向上施策を実施する上での注意点

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LTV向上施策に限ったことではありませんが、低いコストといってもあくまで相対的な比較の問題ですから、個々の施策を実施する際には常に費用対効果を念頭に置いておくことが必要です。

また、効果を検証して変化の予兆をつかみ先手を打つことや、広い視野を持って全体のバランスを考えて取り組むことも大切なポイントです。

費用対効果を考える

LTVが注目されるようになったのは、「1:5の法則」が示すように、既存顧客の維持は新規顧客の獲得と比べ、かかるコストが大幅に低いことが大きな理由です。そのため、LTV向上の施策を実施する際にも、費用対効果を十分に意識することが大切です。

費用対効果を高めるためには、現状を分析して自社におけるLTV向上の課題を把握することが欠かせません。特別な営業施策を実施しなくてもLTVを向上させられることもあるからです。

例えば、ECサイトのリピーターが増えない理由が、手入力の多さなど購入手続きの煩雑さであれば、そのUIを改善することである程度問題が解決する可能性は高いでしょう。

施策の効果を継続的に検証する

LTVを向上させるための取り組みは、継続的に行わなければ十分な成果を得られません。このため、定期的に施策の効果を検証することが必要です。

検証に当たっては、LTVだけでなくさまざまな指標の変化を計測します。市場環境や顧客構成などの変化も踏まえて、必要に応じて取り組む施策を切り替えるといったPDCAのサイクルを実行することが大切です。

新規顧客獲得施策と組み合わせる

LTVの向上は、効率的に収益を拡大するために有効な施策です。しかし、LTVの向上にばかりにリソースを投じて、新規顧客の獲得がおろそかになると、事業が先細りになる可能性が高いでしょう。あくまでも、企業全体の収益を拡大する戦略の一環としてLTV向上に取り組んでいることを忘れてはいけません。

顧客情報の分析に基づき、LTVの高い顧客と類似した属性の層をターゲットとするといった方法で、新規顧客獲得を効率化しつつ、獲得した顧客のLTV向上を図るといったアプローチが大切です。

データやツールを利活用したLTV向上施策はDXの一環

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LTV向上施策において重要なポイントとなる、顧客一人一人に合わせた働きかけを的確かつ効率的に行うためには、顧客データの分析やさまざまな営業ツールの活用が不可欠です。

その取り組みはDXの一環ともいえ、ビジネスモデルの変革にもつながります。逆にいえば、LTVを正確に計測して実効性が高い向上施策を打っていくためには、ビジネスへのデジタル活用についての知見・ノウハウが求められます。

自社に十分なリソースがなければ、外部パートナーの活用を考えましょう。その場合には、LTV向上施策にとどまらず、全社的なDXへの取り組み・ビジネスモデルの変革までを視野に入れて、長期間にわたりサポートしてくれるかをパートナー選びの基準にすることをおすすめします。

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